第一章5 憤怒に遭ったと思ったら作戦会議を始めました
七つの大罪っていいよね
「神の友の情報を得られる場かな」
そう言うノーチに俺はこう思った。
「いやアバウトー!」
「こう思ったって思ってんのに口に出てんじゃん」
そう言ってノーチは俺の隣にきた、マルさんも近づいてこようとしたが見えない壁に跳ね飛ばされた。
「え? 大丈夫ですか?」
手を差し出す。
「いえ、ありがとうございます。そして今までの非礼を詫びさせてください。」
「えっ急、まだ何も証拠提示できてないと思うんだけど」
「いえ、その装置からグングン頭の中に知らぬ記憶が入って来るのです、おそらく先祖たちの記憶と推測しますが、そこであなたと姿、雰囲気、口調、仕草が同じあなたに向かい神の友と尊敬してるのです」
「記憶ってすげー」
「ご都合主義極まれりね!」
「ノーチうるさい」
「傍点の振るところも意味わかんないしさ」
「意味がわかんないよ」
とりあえずシルエットの家というか市庁舎(シルエットが勝手に家にしてる)に帰るために戻り方を考えることになった。
「まー思いつくのはこの、お前の過去をしめせって問いに答えることかな」
「じゃー私テキトーに一個答えよーっと」
「え、やめてよ」
「もう打っちゃった」
「何してんの?」
「あ、間違えたみたい、しかも回数制限でもう答えらんないみたい」
「何してんの!?」
唐突に視界が変わり気づけば階段に戻されていた。
「へへ、やっちゃった」
「本当に何してくれてんの? とりあえず戻ろう」
とりあえず前向きにこけてみたが顔面を階段にぶつけ痛い思いをしただけだった。というわけでノーパソのあった場所へ戻るための条件を絞ることにした。
「どうやったら戻れるのでしょうか、あそこに行ける条件が今だはっきりとしていませんからね」
「俺はこけたらあそこに行けたんだけど、そっちはどうだったんだ?」
「喧嘩しててもみ合いになって後ろ向きに倒れましたね」
「ああ、そういえば俺も後ろ向きだったな」
「「……それだ!」」
おそらく後ろ向きに倒れるのが条件なのだろう。ということで試してみようということになった、ノーチで。
「おら! ササっとやりやがれ!」
「やあよ! 違ったら後頭部ぶつけんじゃん! 痛いじゃん!」
「誰のせいで階段に戻されたと思ってんだ!」
「いやそもそも遊八が先に結構間違ってたんでしょ! 私一回しか間違ってないから!」
「うるせえ! てかそもそもお前なんて打ち込んだんだよ!」
「美少女剣士」
「バカか?」
「み、醜すぎる」
こんな風なやり取りをしていると大きな揺れが起こった。
「な、なんだ一体!」
「人間! 貴様かあ!」
「え? マルさん? あなた俺のこと信用したんですよね?」
「ふふ、冗談ですよ」
「つーまーんーなーいー」
「しばきますよ、透明人間」
「一応上の様子を見に来ますか?結構大きな揺れでしたし確認しに行った方がいいかもしれませんし」
「そうしましょうか、村長とエイ、ビイ、シイ、デイも心配ですしね」
あ、シルエットのこと忘れてた。
ということで、というか、元々俺たちはシルエットの家に戻る方法を考えていたのだからこれでいいのだということに気が付いた。
「遊八ってバカだよね」
「殴ってもいい?」
「だめー」
軽口を叩きながら階段を上っていると叫び声が聞こえてきた。
「ノーチ、叫び声がおもらししてるぞ」
「いや今回私じゃないので関係ないのですが」
「今のはエイの声!いったい何が!?」
階段を駆け上り切り目に入ってきたものは……燃え盛る都市と宙に浮かぶ象一頭分の大きさはあるだろう黒い右手だった!
「あれは大罪生物!なぜここに!」
「大罪生物!?なんだそれ?」
「フッフッフ、無知な遊八君にこのノーチ様が教えてあげよう」
「遊八様、私はエイのことを探しに行ってまいります、またあとでお会いしましょう」
「ああ、わかった。で?ノーチ、大罪生物ってなんだ?」
「大罪生物とは八つの神に仕える人間の大罪を冠した生物だ」
「七つの大罪?」
「そう、火の神・フレアに仕える憤怒、あの右手がそう」
「へー他のは?てかどこにでもいるな、大罪を冠する奴らって」
「話すね、水の神・ウォータに仕える左足の怠惰、氷の神・アイスに仕える右足の強欲、土の神・ランドに仕える胴体の色欲、樹の神・ウッドに仕える頭部の暴食、雷の神・ライトに仕える左手の傲慢、光の神***に仕える心臓の嫉妬がいるの」
「光の神の名前が聞き取れなかったんだけど」
「耳わっる」
「蹴るよ?」
「***だって」
「やっぱり聞こえない」
「んー、ロックがかかってるのかもね、今考えても仕方ないと思うよ」
「それもそうだな、ていうかさっきの話だと闇の神だけはぶられてるよな」
「残念ながら闇の神は人望がなかったんだ」
「うわ、かわいそー」
「やあ遊八、寝ぼけているのか知らないが村が崩壊して右手が浮いてるように見えるんだが見間違いだよな?」
急に後ろから話しかけられた、五人のシルエットたちだ。
「純然たる現実だよ」
「はー最悪だ、どうする?」
「なんか冷静過ぎない?」
「ノーチ、冷静にもなるさ。だって起きたらこんな惨状だからな、寝耳に水どころか硫酸顔にかけられた気分さ」
「顔に硫酸かけられたら生きてられないと思うんだけどな」
「とりあえず逃げよう、近くに避難所があるそこに逃げ込もう」
そうして逃げる方針が決まったところで火の玉が飛んできた。どうやら憤怒がやったようだ、大きなクレーターができている。
「よし! 走ろう!」
「そうだな!」
シルエットの見事な相槌。俺たちは火の玉を躱しながら何とか避難所まで逃げることができた。なぜか憤怒は追いかけるのを途中でやめたようだ。
「村長! 無事だったんですね! エイたちは見つけることができたのですが村長だけは見つけることができなくて、心配しておりました」
「そうか、お前が私に睡眠薬を仕込んだんだからそりゃあ心配になるだろうな」
「……あの薬は結構強力なはずなんですけど起きるの早くないですか?」
「私薬の効果五分の一だから」
「そうですか、しかし魔よけの矢がやつにも効いてよかったです、そうでなければ今頃はここも……」
「魔よけの矢?」
「八つしかない貴重な魔を払う聖なる矢ですよ、それを媒介とし結界を避難所の付近に貼っているのです」
あーなんかわかった。うん、記憶もなんか蘇ってきた。その矢、対大罪生物最終兵器だ、なんで一本多いのかは思い出せないけども。
「……作戦会議しない?あいつ倒すための」
「倒すんですか!? あいつを!?」
そういうのはマルさん。
「もちろん勝算はある、そのためにはシルエットとマルさんの力が要ります」
「私の力はいらないのか?」
「ノーチ、お前は前提条件だから」
「そーなのかー」
「そうだ」
「ではとりあえずこの村の地図を取ってきますね、作戦のためにいるでしょうから」
「ああ、お願いしますマルさん」
そして大きな机の上に地図を広げ作戦会議を始めた。
「まずこの四棟のビルが隅にある十字路に誘い込みます」
「どうやって誘い込むんですか?」
「俺とノーチがオトリになりますが、それだけじゃおそらく誘い込めないと思うのでシルエットに魔よけの矢を使って後ろから追っかけてもらいます」
「うーん、それはいいのだが……この矢を動かしたらこの避難所が危なくないか?」
「ああ、だからここが危険になったらマルさんとアルファベッターズに先導してもらって、避難してる人たちと一緒に別のところに避難してもらいます」
「アルファベッターズとは何ですか?」
「エイビイシイデイのことですね」
「わかりました、この私マル、精魂込めて避難させていただきます」
「僕も」「私も」「ワシも」「俺も」
「お願いします」
そして作戦の説明の続きだ。
「そして誘い込んだら俺に矢を渡してもらって矢の存在を俺の能力の応用で別空間に仕舞い込んで存在を隠す」
「混乱させる訳ですね、しかしそんなことできるんですか?」
近くにあった椅子を仕舞ってから出した、マルさんは納得していた。
「まあ、そしてこの四棟のビルには他の四人のシルエットたちに潜んでいてもらって」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
マルさんが割って入る。
「あの、今よくわからないことが聞こえてきたんですが」
「なんですか?」
「その、他の四人の村長って何のことですか?」
「え? 見えてないの? そこに四人並んでるんだけど」
「え? 見えてなかったのか? 他の私を」
「え? 本当にそこにいるんですか?」
「いるよ、滅茶苦茶いるよ、左から順にモザイク、ファントム、シャドー、カバーていうんだが」
名前つけてたのか。
「そうなんですね、知らなかったです……もしかして薬の効き目が五分の一なのもそのためですか?」
「たぶんそうだな」
「作戦に戻ろう」
「そうだな」
説明に戻る。
「誘い込んだら俺が能力でデカイ碇を上から落として下敷きにするから、四人でそこに矢を撃ち込みまくってもらう、そしてそれに紛れさせ魔除けの矢をシルエット、お前に撃ち込んでもらう」
「わかった」
他の四人も頷いていた。
「何か質問は?」
「じゃあ一つだけ」
シルエットが手を挙げた。
「何で私にはタメ語なのにマルには敬語なんだ?」
「お前に敬語使ったら負けかなって」
「そうか、まあ納得がいかないがいいだろう」
「いいのか」
「さあ、これより憤怒撃退作戦を実行する!」
「それ私が言うセリフじゃないか?」
シルエットが何か言ってるが知ったことか。開戦だ!
若干ねだばれなのかー?