第一章1 召喚されたと思ったら拷問されました
ありがとうございましましましましす
「八雲 遊八! 貴様には神の命により、神罰を受けてもらう!」
「はあ!?」
俺は理不尽にも、異世界で拷問を受けることになってしまったのである……。
「くっこの離しやがれ! なんかの間違いなんだよ! 第一、俺が召喚されてから一時間も経ってねえじゃねえか! 勝手に召喚しといてこれか? 貴様らが崇める神もずいぶん身勝手だな!」
俺は召喚された時に、冠を被ったジジイにこう言われた……。
「よくぞまいった! これも神の命によるもの……光栄に思え!」と、本当に意味が分からなかった。
その後はステータスを測定するとかなんとか言われて、ゲームの世界みたいだなーなんて思ってたりしてたんだ……そしたら数分後にはというか……今は地下の牢屋みたいな所に閉じ込められた所だ。
「黙れ! 神がお決めになられたことは絶対だ! それと神に対する侮辱は何があっても許さん! 覚悟しておけ!」
俺を牢屋に閉じ込めた兵士が俺の目の前から離れた後、ゾロゾロと顔を隠した男たちを引き連れた白髪の神父が、俺の牢屋の前にやってきた。
「神の命に意を唱え、あまつさえ侮辱するのは此奴ですかな?」
「俺は何もしていない、だから神からの神罰とやらを受けさせられるいわれがない」
「おお! なんと哀れなことか! 神からの裁きを! 神からの罰を! 神からの啓示を! それを否定するというのですか!」
「だから俺は裁かれるようなことを何もしてないんだよ!」
「名乗り遅れました……私はジュール・プリュドムというものです、これから長い付き合いになるので以後お見知り置きを」
……理解した、こいつは人の話を聞かない。
「さて本題に入るのですが……そんな怪訝な顔しないでくださいな、神罰についての話ですよ」
「神罰ってなんだよ」
俺は神罰について聞くことにした……。
「な〜に簡単なことですよ……私が信仰する八神教の八つの神にちなんで、八日間で八つの拷問を受けてもらうだけですよ」
「は?」
アー? ご〜もん? てアレか……なんかの門か? それとも金か? ……そんな訳あるか!
「まてまてまてまてまてまてまてまってくれ、八神教ってなんだよ! 拷問てなんだよ! なんで急に呼び出されたと思ったら……っそんな!」
「黙れ! ジュール様が話しておられる途中である! 無礼であろう!」
顔を隠した男が俺に怒鳴った……拷問官という奴だろうか……
「あなたがお黙りなさい! 遊八君と話しているのは私です! 貴方ではないのです、私が話しているのです」
「は! 失礼しました!」
「では話の続きをしましょうか……遊八君?」
息を飲み、唾も飲む、そして……雰囲気が飲み込まれた。
「ソウ……神の神の神の神の神の神の神の神からの裁きを! 罰を! 啓示を! 開始いたしましょう」
「ッ……」
恐怖で喉がひきつる。
そこからは地獄だった……。
なんとなくわかっていたが、この世界には魔法があるらしい……普通なら喜ぶのだろう、何たって魔法だ、あの魔法だ……空を引き裂き海を割り、竜巻を起こし地を揺らす魔法だ。
俺には最悪だった、何故なら体を癒す魔法があったからだ……これのせいで何をされても俺は一瞬で体の傷が消える。欠損をしても一瞬でだ……だから次から述べることを永遠に繰り返された。
なお詳細は伏せさせてもらう……とてもショッキングだからだ
一日目———爪を剥がされた……竹が怖い
二日目ーーー歯を抜かれた……3232323232323232
三日目ーーー腹を裂かれた
四日目ーーー目に……棒を刺された
五日目ーーー親指人差し指中指薬指小指……プチプチ
六日目ーーー水攻め……ゴボゴボ
七日目ーーー牛……この世界にもあったんだ……見たくなかったし体験したくなかったなぁ……熱い。
八日目ーーー二つ気づいたことがある。
俺はこの七日間拷問を受けた、そしていま八日目で気づいたことがある……もう一人この地下にいる、多分子供だ。
そしてもう一つ、奴らが信仰する八神教……それは……
「やあやあ遊八君! どうだったこの七日間は? 楽しかったかい?」
「よくもまあのうのうと言えたな! テメエの質問には答えてやるよ」
「最悪だ!」と言ったはずだった、その声は悲鳴にかき消された。さっき言った子供だ……。
「何故だ!? 今日、今! 起こるはずは……まさか!」
「おい! なんだよこの悲鳴は! お前ら子供にまで拷問してんのか!? というか昨日までここで聞こえる悲鳴は俺のだけだったろ!」
「お黙りなさい……これはこれは一大事だ」
以前、悲鳴やまず……鼓膜が破れそうだ……。
「遊八君? 君はここに呼び出されてから一回でも自分のステータスを見たことがありますか?」
「は!? 急に何を言ってんだ! そんなことよりこの悲鳴を止めてくれ! 頭がどうにかなりそうだ!」
「この悲鳴を止めるためにも必要なことなのですよ」
「信じられるか! 第一何だよステータスって!」
気分が悪い、頭も痛い……。
「それを教えて欲しいならば私の言うとおりにしてください、方法はわかるでしょう?」
「知らねえよ! 第一……ッヴ」
ヤバイ……吐きそうだ……アア、わかった……これは八つ目の拷問なんだ、こいつらは俺の苦しむ姿を見て楽しんでるって訳か。
「全く、世話がかかりますね……心の中でステータスと念じてください」
呆れた顔で言ってくる……俺はこの七日間何も教えられず拷問を受けてただけなんだよ……クソが! 絶対に殺してやる!
「ステータス!」
目の前に半透明の黒い板が現れ、俺は称号という所に目が行った……何が<神の友>だ……ふざけてる。
「別に声に出す必要はないんですよ」
「どうでもいいだろそんなこと……なんだよこれ」
「神からの……恩恵ですかね……。称号という欄がありますね? なんて書いてありますか?」
「神の友だとよ、こんな拷問を受けさせて何が友だ」
「やはりですか……分かりました、異常事態ですからね、一日早いですが貴方を解放してあげましょう、条件付きですが」
「は? この悲鳴は拷問なんだろ?」
「違いますよ? よかったですね、今日のは昨日よりもずっとキツイやつでしたから」
「っ……で、条件って何だよ……」
「その前にこの悲鳴の元凶と対面と行きましょうか……」
牢屋から出され悲鳴の鳴る方へ連れて行かれた。
「さて着きましたよ」
「何だよコレは!?」
そこにいたのは……四肢を鎖で繋がれた、傷だらけの女の子だった。
「コレを見てどう思うかな?遊八君」
「……可哀想だと……思うさ」
「ならよかった……私には何も見えないので何も感じないのですよ、ただ悲鳴が聞こえるだけ……やはり貴方は選ばれたのですね」
「見えてない……だと!? そんな馬鹿げた……第一あの傷はどう説明済んだよ! お前らが拷問した訳じゃないのか!?」
「違いますよ、我々はコレの声を聞くことは出来ても、触ることや見ることは出来ないのですよ」
「だったらどうやって鎖に繋いだんだ!」
「私たちは何もしてないのですよ、気がついたらここにあったのです」
「そうかよ……」
「そして、ここからが本題なのですが。あっ条件の話ですよ」
忘れていた、何も説明されていない事を。
「で、なんだよ」
「積極的ですね、まぁ拷問よりはいいでしょうからねえ」
「……早くしろよ」
「コレをここから解放し、私の信仰する八神教の神々を殺して欲しいのですよ」
「は?」
こうして俺の……いや、俺たちの世界を壊すための冒険が幕を開けたのだった。
感謝感激雨あられ。