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悪役令嬢は出ない…でも悪役女神は出るかもしれない!

 グリーダとルルは、デデに連れられ、テンプレ部屋の奥…『デュラルディーンの部屋』にやって来た。

 広い部屋に、大きなモニターがあり、ソファー等の家具もあるので仕事場というよりはマンションの一室に近い。


『あまり色々触んなよ。グリーダ、そこ開けんな』


「なんか色々ありますねぇ…この本棚…恋愛小説多め。ねぇルルちゃん、神様ってお買い物はどうしているんです? 知らない人の為に教えてあげましょうよ」

「通貨は神の格…神格で取引するぞ。このタブレットで注文すれば、転送アプリで届くし」


 ルルがグリーダに天異界専用タブレット…通称『天パッド』を見せる。神に金貨等のお金は無意味で、神格を取引するのが一般的。他には稀少価値の高い物で取引する。

 使い方は簡単。指を置き、神格を流して支払うだけ。


 神格とは、神種と呼ばれる者達が共通して持っている物。

 持てば持つ程、上位の存在に成れる。その分出費も多くなるが…

 因みに神格が無くなると、神種から外れる。人型の神なら人間に…獣型の神なら獣に…という具合。


 グリーダのように、神種では無いが神格を持っている例外も存在する。


「へぇー。ルルちゃんの神格ってどれくらい?」

「神格を教えるのは違反になるから秘密だ。まぁ…一応見習い神種も入れると、天異界全体の平均値は二万程だがな」

「そうなんですか。じゃあ色々買えますね」



 ご機嫌な様子のグリーダに、ルルが何か買う? と『天パッド』を見せながら聞いてくる。

 グリーダが覗き込むと、恐ろしい量の商品が並んでいた。


「むー…これは悩みますねぇ…デデちゃん、何か欲しい物あります? 匿って…間違えた、少し居させて貰うお礼に何かプレゼントしたいんですよ」

『…グリーダ…実は良い奴なのか?』

「私は常識人なので、お友達の為ならこれくらいしますよ?」


 一応礼儀はしっかりするグリーダに、少しだけ見直したデデが『天パッド』を眺め…うーん…と悩んでいる。


「何で悩んでいるんです? お酒、ですかぁ」


 神格が一~十の缶ビールの項目を眺めるデデ。グリーダとルルの目が合った…ストレス溜まってんかな? というアイコンタクトを交わす。


『うーん…』

「ルルちゃん、一番高いお酒ってなんです?」

「えーっと…最高金賞神酒『神ころがしZ』だなー。神格は五百万…クソ高いなぁ」

「じゃあそれで、ほいっとな」


 グリーダがルルの『天パッド』に指を当て、神格を流して『神ころがしZ』を購入。

 目の前に転送陣が描かれ、ポンッと細長い箱が現れた。

 凄く高そうな木の箱に、『神ころがしZ』と書かれている。

 それを悩んでいるデデに手渡した。


『ん? なんだこれ? ……ふ…ふ…ふおぉぉぉぉぉぉお! 神ころがしZじゃないかぁぁああ!』

「あげますよ。私はお酒飲まないんで」

『ありがとう…ありがとうグリーダ…』


「グリーダはお酒嫌いなのか?」

「あんまり酔わないんですよ。味は解るんですがね…」


『神ころがしZ』を抱き締めて叫んでいるデデを放置して、モニターの電源を付けてみると、先程転生していった紀野幸太郎(きのこうたろう)の様子が映し出される。


「キノコ太郎さんは無事転生出来たみたいですね。ちゃんと特典もありますし…」

「…そう…だな…くっ」

「ルルちゃん、どうしました? まさかキノコ太郎さんのキノコを見て笑おうとしているんじゃないですよね?」

「だって…キノコ…光ってる…くっ…駄目だ…」


 転生して、赤ん坊のキノコ太郎。そして、右脇からニョキッと生えた白く輝いているキノコ。グリーダの菌術と、ルルの光魔法が融合していた。

 キノコ太郎の顔が引きつっている気がするが、気のせいなのでボーッとモニターを眺める。


「これ早送り出来ないんですかね?」

「こことは時間軸が違うから、天パッドと連動すれば無駄な部分を省いて観れるぞ」

「じゃあそれでいきましょう。修行編とかキノコ出しているだけですし」

「脇ノコの修行って凄い気になるけど…」


 少しだけ早送りすると、キノコ太郎が魔物の集団と闘っている。

≪うおぉぉぉお! 轟け! 俺のキノコ! シャイニングキノコミサイル!≫

 どーん。右脇から光るキノコを放ち、魔物を仕留めていた。


「シャイニングキノコミサイルって何ですか? 結構強いですよ」

「光属性のキノコだから…あっ、もしかしてこの世界って…光魔法が使える人間は勇者になるかも…」


「勇者…まぁ、私達の力を貰っているから勇者ぐらいなりそうですよね」

「キノコ勇者…勇者キノコ…勇者セイントキノコ太郎…くっ、駄目だ…ツボッた…」

「何自爆しているんですかね? うーん…ちょっと強すぎかなぁ…やっぱりライバルって必要ですよね」


 うーむ、と一考したグリーダが、『デデの部屋』を出ていく。そして、数分で戻って来た。

 その顔にはやり切った表情が伺える。


「…グリーダ…何していた?」

「ふふふー、秘密ですよぉ。そういえば、今普通の物語っぽくなっているんで、ここで何か面白い事しましょうよ。『天の声』さんも普通に仕事していますし…」


「無理矢理コメディーに持って行こうとしなくて良いんじゃないか? グリーダの変顔見ているだけで充分面白いぞ」


「文字だけなんで、見ている人は解らないんですよ。…デデちゃん、どうしました?」


 我に返ったデデが、嬉しそうにモジモジしながらグリーダの元へ。『神ころがしZ』といえば、酒好き神種達の夢だ。神ころがしシリーズ最高傑作と言われている。

 最高位の神種でも、簡単には飲めない。普通の『神ころがし』でも十万はする。平均値の神が節約してせっせか働いて百年以上頑張れば普通の神ころがしを買えない事も無いが…


『グリーダ…ねぇ…本当に、貰って良いの?』

「デデちゃん急に可愛いくなりましたね。これがツンデレですか…いや、デデちゃん素になると割りとクソなんで、()()()()ですね。…一人占めして良いんですよ。

 ……おっ? なんかお客さん来たから背景になりますねー…変身!」


 ポンッ。グリーダは背景に同化。部屋の中はルルとデデになったが、ソファーに座るルルの後ろに、グリーダがピッタリくっ付いている。


「グリーダ、熱いから離れて」

(私は今背景なんでお気になさらず…ルルちゃんの髪、良い匂いしますね)

「嗅ぐなし…ちょっ! 鼻の中に私の髪の毛入ってるし!」


 グリーダとルルがイチャイチャしている間に、ピンポーン! 来客を告げるインターホン。


 デデがルルに『神ころがし』を預けて出ると、部屋にズカズカと女神らしき女性が入って来た。

 女神は金や宝石の装飾品を身に付け、キラキラのエフェクトがうんざりしながら忙しそうに飛び交っている。

 ピンク色の髪をかき上げる…少したれ目で泣きぼくろ…色気ある女神。うん、ナイスバデーだ。

 デデは嫌そうに顔をしかめ、女神を睨む。

 そんな女神は口元を歪ませ、馬鹿にしたように笑っていた。


『ふふっ、デュラル…相変わらず地味な部屋に住んでいるわねぇ…地味な貴女にお似合いよぉ! オーッホッホッホ! オーッホッホッホ!』



 グ、ル ((面白そうな奴キター!!))


 天 面白そうな奴が来た。


 グ (天の声さん、さっきナレーションの癖に主観入れましたね)

 ル (そうだな…『うん、ナイスバデーだ』って、マジでおっさん発言)


 天 ちょっとくらい良いだろ。三人称って疲れるんだぞ。一人称の二倍労力がいるんだから。


 グ (それは『天の声』さんがいつも寝不足だからじゃないですか。 早朝三時に起きて深夜の一時に寝るとかキモすぎですよ。 あっ、じゃあ交代でやりましょうよ。 天の声さん用の身体ありますし)


 ル (えっ、『天の声』さんって身体無いの?)


 グ (ナレーションだと身体が邪魔だから、自宅にあるらしいですよ)


 天 じゃあ疲れたらよろしく。


 グ、ル ((はーい!))



人物紹介。


【紀野幸太郎】

通称キノコ太郎。

序列百位の世界に転生していった男。

特典は脇ノコ、光魔法、爆裂魔法。


【竹野浩司】

通称タケノコ王子。

グリーダが転生させたが、その様子を全面カットされた可哀想な男。

特典はワケノコ、闇魔法、金属魔法。




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