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見つ……ケタ。

のんびり更新です。よろしくお願いします。

 


「すばらし~き~このひ~に~…」


 深い森の中…満天の星の下で、焚き火の近くに座りイカを焼く少女。

 彼女の名前はグリーダ。黒髪黒目、妖精の様に儚い美しさを持ち、黒いローブに黒い帽子…いわゆる魔女の格好をしている。


「あなた~わ~わたし~の~あたま~をつかんでぇ…」


 とある世界のとある場所で生まれ、とある目的の為に次元を渡り、様々な世界を旅している。

 女の子の一人旅…そう聞いて危険に思うかもしれない。だが、彼女の場合危険とは無縁なのだ。

 それは何故かというと、とてもシンプルな答え。


「…デェッドエェーンド!」


 強すぎる。今彼女が居るこの世界では、彼女に勝てる者は居ない。この世界を管理する神でさえ、彼女には勝てないから遠くから見る事しか出来ずにいる状況だ。

 しかしそんな無類の強さを誇る彼女には、欠点がある。


「次元を~越えて~…勇気を~くだ~さ~い! あなた~の腕のなか~で~!」


 至極マイペースであるという事。

 この性格で色々な損をしている事に彼女は気付いていない。

 こうやって危険な魔物の蔓延る場所で歌っていても、近寄ろうとする魔物は居らず、ビクビクと脅威が過ぎ去るのを隠れて待っている様な状況下…


「ファァイナルエェーンド! ……ん? 次元の歪み?」


 ふと空間に異変を感じたグリーダが、辺りをキョロキョロと見渡す。何処かの次元とこの世界の次元が繋がる感覚がある。こういう場合は大抵、自分と同じ次元を旅する者が現れるのだが…


「…んー? あっ、イカ焼けた。イカイカ~イカイカ~」



 とりあえず焼けたイカを食べていると、グリーダの真上に次元の渦が出来はじめる。夢中でイカを食べるグリーダは気付かない。

 そして、渦の中からシュタッと誰かが降りて来た。


「――ぴぎゃ!」

「ふぅ、無事到着したな……ん?」


 イカを食べるグリーダを踏みつける女性。


 彼女の名前はルル。銀色の髪に銀色の瞳。白いローブに黒い槍を背負っている。彼女は、新しい月が降りてきた様に美しく、月光に照らされてキラキラと輝いている。どの角度から見ても美しく格好良い女神の姿。

 ルルは、とある世界を管理していた女神だが、とある目的の為に次元を渡り、神相手に武器を売りながら様々な世界を旅している。因みに陰で『ポンコツ』と言われている。


「ちょっと…どいてくれませんか?」

「あっ! すまない! 人が居るとは思わなかっ……た…」

「まったくもう…次元を渡る時は座標上に障害物が無いか調査してからですよ? イカが土だらけになっちゃったじゃないですか。まぁ食べられるから良いですけど……ん? なんですか?」


 落ちて土だらけになったイカを頬張り、ジャリジャリ音を立てながら食べるグリーダは、茫然と見詰めて来るルルを見て首を傾げる。


「…見つ…けた」

「えっ? 『蜜ケタ』を食べたいんですか? 実は持っているんですよ。ケタ虫の蜜漬け…はい、あーん」


 グリーダがルルの口元にケタケタと蠢く『蜜ケタ』を近付ける。

 えっ、これ何? という顔で匂いを嗅いで…「――くっさぁっ!」


 ペチン……ルルがあまりの臭さに『蜜ケタ』を叩き落とす。グリーダは無言でケタケタと蠢く『蜜ケタ』を拾うと、クンクンと匂いを嗅いで口に入れる。


「臭くないですよ? ゲロと納豆を合わせた匂いだから大丈夫じゃないですかね?」

「まじゲボ臭いし! しかもその虫、ケタゲラ猛毒虫じゃないか!」

「おや博識ですねぇ。食べると5秒で呼吸困難になってケタケタ言いながら死ぬんですけど、癖になる味なんですよ」

「食べるなし! なんで食べて生きてんの!」

「これくらいじゃ死にませんケタ」

「ケタって言ってる!」

「竹屋の竹薮に竹立てかケタのは竹立てかケタかったから竹立てかケタ」

「本物のケタはどれだ!」

「ふふふー、まだまだですね…あっ、ケタ」

「わざとなの!?」

「わざとじゃなイカ」

「イカじゃないし! ケタにしろし!」

「しろしって…どこの方言ですか? まぁ…楽しい時間をありがとうございました」


 イカを食べ終わったグリーダは焚き火を消し、ルルに背を向けて歩き出す。



「ど、何処へ行くんだ?」

「何処へって、あっちの方です」

「まっ、待ってくれないか!」

「わんすもあ」

「…まっ、待ってくれなイカ」

「ぐれいと! なんです?寂しいんですか?」

「寂しくは無いが…頼みがあるんだ…」


 グリーダは目を細めてルルを見据える。いきなり現れて頼み事をする場合、大抵は面倒事。聞いてしまい、後戻り出来なくなる事もある。まして次元を越えて来る様な存在…面倒以外の何者でも無い。


「…すみませんが、頼みは聞けません」

「…お願いだ…君にしか頼めないんだ…」

「…そう言われましても…私は、もう行かなければなりません」

「なら! 私も共に行かせて欲しい!」

「そんな事言われましてもねぇ…うーん…覚悟が、要りますよ?」

「覚悟など、既に持っている」

「…そうですか」


 グリーダは腕を組んで考える様に夜空を見上げる。


「…私は、流れの神…ルルという者だ」

「…ルル? あぁ、まさか伝説の武器屋さんに会えるなんて嬉しいですねぇ。まぁ、アイツらのせいで行き詰まっていた所ですし、聞くだけ聞きましょうか。

 私の名前はグリーダと言います。そして…」


 グリーダが左手を上に向ける。


 ブォン!――ドーム状の結界が出現。

 直後…

 轟音と共に結界がビリビリと揺れる程の激しい魔法攻撃に襲われる。

 一つ一つの攻撃が、この世界の者では無いと思わせる程の超エネルギー。

 だが、全ての攻撃はグリーダの結界に阻まれた。


「なにが起きた!」


 何事かとルルが辺りを見渡すと、白い制服を着た…百名を超える一個中隊がそこに居た。見覚えのある制服…次元パトロール隊の面々。


『目標撃破失敗! 直ちに主砲を展開せよ!』

『はっ! 主砲準備!』


「…は?」

「私…『天異界・第S級指名手配犯』なんですけれど…それでも一緒に来ます?」

「S! 何したの!? 極悪人でもそうそうなれないし…って嬉しそうな顔しない! 褒めて無いし!」

「別に普通の日常を送っていただけですよ? で、どうします?」

「あ、あぁ…それでも…私の決意は揺るがない」


 グリーダが右手をルルに差し出すと、ルルは迷い無く…その手を取る。

 ビチャッとイカ汁が付いた握手を交わし、グリーダがニコリと次元パトロールの面々に指を向ける。


「ふふふー、これでお友達ですね。じゃあ、あいつらぶっ殺しますかぁ」

「いや、それはやめて。私も指名手配犯になってしまうと色々な方に顔向け出来ない」


 グリーダとルル…アレな二人が手を組んだ歴史的瞬間だった。


「お願いって何ですか?」

「…とある呪いを解いて欲しくて」

「そうですか……うーん…私は今、完全な存在では無いので…目的を達成したら出来ると思いますよ?」

「そっ、そうか…良かった…目的とは? 私も手伝うぞ」

「それは……神のお友達を沢山作る事です!」

 ビシィ!――キメ顔で言うが、何言ってんだコイツという目を向けられるだけだった。


「じゃあ適当な場所に逃げましょう。ランダムテレポートー!」

「えっ!? 何してんのぉ!?」



 彼女達の、はた迷惑な冒険が始まる…かもしれない。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「あっ、ちなみに今ナレーションを担当しているのは『天の声』さんです」

「ん? そうなのか。『天の声』さん、よろしくお願いします」


 天 ルルちゃん、よろしく。


「えっ? 私の時と態度違いません?」


 天 ……


「おい、無視すんなや」


人物紹介。


【グリーダ】

とある世界で生まれた魔女の格好をした女の子。目的を達成する為に次元を渡り、様々な世界でお友達を作ろうと頑張っているが、何故か指名手配犯になってしまった。


【ルル】

とある世界を管理していた女神。次元の旅に出るきっかけになった呪いを解く為に、特異点と呼ばれる存在を探していた。

幻の神武器師の弟子として、天異界で名前だけ有名神。


【天の声】

ナレーションのおっさん。

グリーダの友達。


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