カンの良い女主人、推理する。ドワーフ慌てる。
はむすたーを病院に連れて行った、あるあるを一つ。
「ハム子ちゃんはお元気ですか?」(以前のカルテを見ながら)
「残念ながら、亡くなりました……」(寿命、考えなさいってば)
「おまたせしました。主人が参りますわ」
呼んでおいて、けっこう待たされたものだ。しかし、貴重な顧客だ。文句など言えるはずもない。ド ワーフ二人は、いやいや、と表向きは愛想よく対応する。
ほどなくして、マドンナ商店の女主人が、部屋に入ってきた。黒い服のメイドが、後から、カートにお茶のセットを乗せて入ってくる。
「いいわ、下がってちょうだい」
女主人は優雅なしぐさで、メイドに退出するよう促した。メイドは姿勢よく一礼して、部屋を出た。
女主人は、若いとは言えない年齢だが、妙に色気のある手つきで、お茶をカップにそそいで、二人に勧める。
「要件は二つよ」
いきなり、話が始まった。ドワーフ二人は、緊張して背筋をのばす。
「一つはお仕事の話よ」
手紙と、洋服のデザイン画・開店資金の一部・洋服の生地を、ハツカ村まで運んでほしいというものだ。ハツカ村は、ハムズ王都の東町から50キロほどしか離れていない村で、道中の危険も少ないほうだが、道は勾配がきつく、時間も労力もかかる。
それを、ワイバーンを使って、半日で終わらせてほしいというものだった。料金は、銀貨10枚だという。
いくら何でも銀貨10枚と言うのはあんまりだ。せめて、半金貨ほしいところである。
「日雇いのもんでもそれくらい稼いでいまさあ。小型竜を使っての商売なんですぜ? 最低でも50銀貨。頼んます」
粘るが、そこは女性とはいえ経営者。やんわりと、しかしはっきりと、がっちりと経費節約。言葉のやり取りがあったのち、どうにか勝ち取ったのは、銀貨25枚。
「小型とはいえ竜です。餌代だって馬鹿にならねえ」
ぼやきたくもなるというものだ。
「それよ」
女主人は、かぶせるように言う。
「二つ目の話は、そのエサの話よ? 悪いうわさが流れているわ。あなたたち、竜のえさに何をあたえているの?」
「え」
「う」
ドワーフ二人、言いよどむ。
「以前は、食料品を扱っている店を廻って、残飯でも痛みかけた肉でも、もらっているというのは聞いてたわ。最近、行かなくなったのよね?」
「え」
「うう」
ドワーフ二人、顔色が悪くなる。
「最近、国で保護されているハムスター獣人が、行方不明になっているそうじゃない」
「おう」
「ううう」
二人の顔に、汗がジワジワ浮かぶ。
「ワイバーンに何を与えているのか、教えてもらえるかしら?」
「おお」
「うううう」
汗が、滝のようだ。
「き、き」
「きのこだ」
「何ですって?」
「きのこだ」
「キノコを与えている」
「……説明してもらえるかしら?」
女主人は、腕組をして、二人を睨んだ。いい加減なことをいわないで、その目はそう言っている。
「う、うそじゃねえ」
「ワイバーンを飼いならすには、そのフンを土壌にして、キノコを育ててやらんにゃならんのだ。それがないと、言うことを聞かねえ」
「好物のおやつ、みたいなもんだ。もともと、ドワーフ坑道で、栽培していた」
二人は交互に必死で説明している。
女主人は、嘘は言ってないけど、本当のことは隠しているって、感じかしらね? と推測する。
「いいこと?」
ここは、しっかりクギをさしておかないと。
「少しの法の抜け道くらいなら、見逃すわ。でも、重罪犯罪なら無理よ。取引から手を引かせてもらうわ」
「だ、だ、大丈夫だ。心配するようなことはねぇ」
「迷惑はかけねぇ。約束する」
コクコクコク……首を縦に振ったり横に振ったり忙しい。
配達を頼まれた荷物と共に、二人は解放され、屋敷の裏口から出てきた。
気分的にぐったり疲れていた。
「怪しまれだした。潮時かもしれねぇ」
「潮時って言っても、今更どうやって手を引くよ?」
「わからねぇ……」
話、書くのがうまい人に見られると、
「やめて~~~、見ないで~~!」
って、思うけど、でもちょぴっとだけ、ちょぴっとだけ、
「みて?」
って、思う。考えるくらいなら、もう少し作品自体、頑張るべきなのに……
(;・∀・)