ミケさん、ドワーフのあとをつけていくことにする。
4月は始まりの季節ですね。
あわただしいですね。
ミケさんは、マドンナ商店の裏口から入っていった二人の男を目で追っていた。
「あいつら、ドワーフじゃあないか? 珍しいな」
「ただの背の低い太ったおじさんじゃないのか?」
ドワーフを見たことがない、ダさんが言うと、ジュさんとコピペが、首を横に振る。
「チンチラ町にいたころ、ワイバーンや土竜に騎乗するドワーフを見たことがなかったか? あれが、ドワーフだ」
「この町で、ドワーフ種を始めて見ましたね」
コピペは、腕の中でパニックになっているハム獣人をヨシヨシとなでた。ハム獣人はジタバタしていたが、気持ちよくなったのか、だらーんと力を抜いた。
「おお。可愛いですね。可愛いですね」
ダメ人間、一丁上がりである。
「『ヒマワリの種せんべい』売ってください」
と、ロバの背に荷物を積みなおしている、せんべい屋さんに声をかける。
「あほだ」
「あほがいる」
と、ダさんとジュさん。
ミケさんは、
「今のドワーフ、何か気になる。しばらく、別行動してもいいか」
別行動となった。
ここで、ジュさんからクレームが出た。
「昨日といい、今日といい、健康的すぎる!」
は?
もともと冒険者のダさんと、にわか冒険者なコピペは、ジュがなぜ怒っているか、わからない。
「せっかく、冒険者に変装しているのに、昨日は公園、今日は人探し。これじゃ、神官の格好でもできるじゃん!」
「若者言葉、やめなさいってば」
「冒険者組合に行って、依頼でも受けるか?」
「真面目なの? 真面目さんなの? 違う。遊びたいの。お姉さんとお話ししたいの。分かる?朝までとは言わないよ? もちろん、朝までオッケーよ?」
「お話なら、私たちとすればいいじゃないですか」
コピペは、中身がおばさんなだけに、おじさんの気持ちは分からない。
「おとこばっかで、うだうだ喋って何が楽しいか~!」
「あー。お姉さんとお話ししたいんだな?」
ダさんがコホンと咳をして、話を遮る。目の前の、『マドンナ商店』の看板を指さす。
「表向きは、家事専門の器具と、女性の人材派遣となっているが、それは冒険者組合でも似たようなことをやっているからな。実際には……あー、お話相手だ」
「ダさん。あんた、いつの間にそんな情報を」
ジュさんのダさんを見る目が、尊敬のまなざしに変わる。
「行ってきます!」
ぴしっと片手を上げ、回れ右して歩き出そうとするジュさん。の、ままクルリンと360度回って、コピペに向き直り、
「おこづかい、ください」
「懸賞金はミケさんに預けてあります」
「みけさ~ん」
あっという間に去ってしまった。
「ダさんも遊んできますか?」
「いや、いい。あいつの面倒はミケがみるだろう。俺は、お前についていく」
「護衛なしでも大丈夫ですよ。なんか、精霊魔法も、使えたし」
「あれは、驚いたな」
「まだまだ、なぞの多い魔法ですねえ」
私事でも、考えることが多くて、もやもやしています。
気持ちを強く持たないと、ぺしゃん、といってしまいそうです。