いなくなったハムスター探しに、協力することにした。
もうすぐ、4月です。初心者マークが走る季節です。
少し、早めに家を出ないと遅刻しますね。
「ええっ! 神官登録が延期になった?」
宿に戻った一行に、残念な情報がもたらされた。受付横のボードに、『御触れ書き』が貼られている。
「ハムスター獣人、行方不明事件の対応の為。その他の業務に携わる人員を削減……とか、書いてあるね。へえ……まさしく、総出で当たるってことか?」
「ちゃんと、保護されているんですねえ。意外です。ほったらかしみたいに見えますけど」
「しかし、これだけ大勢のハム獣人がいて、よく行方不明とか分かったな?」
「確かにな。一人二人じゃあ、絶対、気が付かねえ」
「そこそこの、人数がいなくなっているってこと?」
そんなことを、話しているすぐそばを、テテテとハム獣人が歩いていく。
「……」
「聞いてみればいいですよ。……ねえねえ、君」
ハム獣人にジワジワ近づくコピペ。何か感じたのか、ジリジリ下がるハム獣人。
「君たちのいなくなった仲間がどこにいるかしりませんか~」
コートのポケットから、ヒマワリの種せんべいを取り出す。ハム獣人の目の前で、
「ほらほら」
と、振る。ハム獣人、目も手もそれに合わせて行ったり来たり。
「ちゅ! ちゅ!」
「これが欲しかったら、居場所を教えるんですよ~」
「楽しんでるな」
「悪党だな」
護衛連中が、ひそひそ言っているが、コピペはいっこうに堪えない。ハム獣人の愛らしさにメロメロだ。
ようやく、コピペからヒマワリの種せんべいをもらったハム獣人は、
「ちゅ!」
と、片手を威勢よくあげ、先に立って歩き始めた。ダさんとミケさんは、
「あてにならんと思うが……」
と、全くハム獣人を信用していない。
それでも、一縷の望み。コピペと共に、二人はしぶしぶ、ジュさんだけはケラケラ笑ってついていった。
「ほら、やっぱりな」
付いた先は、昼間来ていた、ハムズ市民公園。
もう、日が暮れかかっており、屋台などは店じまいを始めている。
「ちゅ?」
ハム獣人の期待した目に負けて、またもや、ヒマワリの種せんべいを買う羽目に。
「あほだ」
「あほがいる」
護衛二人になじられても、ハム獣人がポリポリとせんべいを食べているのを見つめ、コピペは上機嫌。ニコニコしている。神官ジュがふざけて、祈りの言葉をもじって唱える。
「おお。神よ、神よ~。何故神は、ハム獣人をつくりたもうたか~」
「そんなの、可愛いからに決まってます!」
きりっと振り返って言い切る、コピペ。
ミケさんがボソッと、
「あほ神」
と、呟いた。
4人が、
「明日は、神殿じゃあなくて、レンタル店に延長料金を払いに行かないと」
などと、いいながら、公園を後にする。
ヒマワリの種せんべい屋さんも、のぼりをたたんで店じまいを始める。
通りの両脇のガス灯がぽつぽつと灯をともし、たまに通りかかる、カップル。そして、何処にでもいるハム獣人。
「ちゅ……」
名残惜し気に、うろうろしていたが、手に持ったせんべいの欠片を、ほおぶくろに仕舞って、ひと気がなくなった公園を、後にする。
そのハム獣人の後ろから、黒い人影が、ゆっくりと近づいていく。
「ぢぃぃぃー!!」
ハム獣人の叫び声が、静かな公園に響き、そして静かになった。
はむすたーは、可愛らしく、よく懐き、経済的で、鳴き声もほとんどなく、ゲージで飼え、一日くらいの外出でもぜんぜんオッケーで、最高のペットなのですが、命の短いのが最大にして最悪な欠点なのです。