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神官だけど冒険者に変装してみた。ハムスターに公園につれていってもらった。

変装を楽しむのは、ファンタジーの王道だと思います。


 -・・・-・・・-・・・-



 大きな都市にはつきもののスラム街は、開けた商店街の片隅に隣り合うようにひっそりと存在している。小さなものが数か所あるが、町の中心部に近いものは、実はそれほど治安は悪くない。


 元犯罪者や、冒険者崩れなど素行に問題の多い者たちは、町の外に追いやられ、そこにそれなりの規模のスラム街を形成していた。

 町の人たちは、よく知っていて、そこには誰も近づいたりしない。できるだけ関わらないように、している。


 そんな中、毛色の変わった三人組の悪党がいた。


「悪党だなんて失礼な。事業主と呼びたまえ」


 彼らが聞いたら、きっとこう答えていただろう。


 実際に彼らは会社を経営していた。その名前は『ドワーフ運輸、ハムズ王都支部』。チンチラ町の本家本元のドワーフ運輸が聞いたら、


「そんなのうちと、なんの関係もない」


と、怒り出すだろう。

 小型飛行場の代わりに、ただの空き地。竜舎の代わりに、ボロい空き家。そして、いつも腹を空かせている、運輸用の小型竜ワイバーン一匹を飼っていた。


 名目上は、人や物を乗せて運ぶ、輸送会社。ドワーフ二人がワイバーンを飼いならし、一人のエルフが精霊魔法を使って、離れた人と連絡を取る役割だ。


 チンチラ町で、ワイバーンを使った運送会社が、成功を収めて居る大きな要因の一つは、ドワーフ地下街の周辺に存在する巨大魔素だまりだ。竜の生命活動を維持するのに、一定以上の魔素が必要だが、これを、魔物で補おうとすると、その個体の能力で狩ることのできる大きさの物を十日で一匹以上必要とする。魔素の少ない普通の獣だと、一日一匹必要だ。


 当然、ハムズ王都のように巨大な都市ともなると、好き勝手にどこでも狩りをしてよし、ということにはならない。補えない肉を食料品店などで格安に仕入れたとしても、みるみるうちに赤字となり、彼らが犯罪に走るのは必然であった。



―・・・-・・・-・・・-



「ミケさん、これどうですか? ちゃんと冒険者にみえますか?」


 コピペは両手を広げ、ゆっくりと一周して見せた。


「いいところの坊ちゃんが無理して冒険者を目指しています、ってとこだな」

「ひどいですねえ」


 ミケの辛辣なコメントにも、コピペはいっこうに堪えた様子はなく、上機嫌な様子だった。


 彼らは、王都でもひそかな人気スポット、『変身グッズ・レンタル店』に来ていた。『いろんな貴方を発見しよう!』が、キャッチフレーズのこの店は、違う髪形を試してみたい、一日だけ貴族の紳士・淑女になってデートを楽しむなど、若い人を中心に流行のひとつとなっていた。


 事の始まりは、ジュの、


「本神殿のおひざ元では、遊びたくても遊びにくい」


 の一言だった。聞いた宿の女将がいい店があると教えてくれたのだ。


 道案内のやり方がまたしゃれていた。

 うろうろしているハム獣人をつかまえて、その目の前で赤い『松ぼっくり』を振って見せたのだ。


「ちゅ!」


 ハム獣人は、わかった! と言うように、短い手をピシっと上げて、いい返事をしていた。そのハム獣人の後をついて歩いていくと、迷わずちゃんと『変身グッズ・レンタル店』に着いたというわけだ。店の看板の飾りには『赤い松ぼっくり』が付いていた。


 ハム獣人は店のお姉さんから、ヒマワリの種をもらって、パリポリと食べている。


 なるほどな。少しは役に立つこともあるんだ。

 感心した一同である。



 即席、冒険者パーティー四人組で町へ繰り出す。神官のシンボル白髪長髪は、コピペが黒の短髪、ジュが茶色の短髪になって、気分まですっかり、冒険者だ。


「日が暮れるまで、遊びましょうね」


 と、コピペが言うと、ジュが


「日が暮れてからが、本番じゃあねえの?」


 と、不謹慎なことを言う。護衛の、ミケ・ダは


「行っても、酒だけな」

「ピンクはいかんぞ」


 まるで保護者のようなことを言う。


 武器屋に行きたい。保存食の買い足しに行きたい。護衛達から、要望が出たが、


「それは、明日、我々が神官登録に行っている間に済ませてください。せっかく、この格好なのですから、いつもはいかない所へ行ってみましょう」


との、コピペの意見が通った。



 道行く人に聞き、まず、ハムズ市民公園というところへ行ってみることになった。

 ハムズ市民公園、という言葉に、周囲にいたハムスター獣人が反応を示し、数人立ち止まって、じーっとコピペ達に注目している。


「もしかして、連れて行ってくれるんですか?」


 冗談で言ってみたのだが、ハム獣人は


「ちゅ!」


 と、片手を上げ、まかせとけ、のいい返事。信用して付いていってみることに。



「あれ、和風?」


 広い芝生の公園で、家族連れやカップルたちが、くつろいで楽しんでいた。


 道幅は広く、馬車を止める場所もある。小さな神殿出張所があって、簡単な手続きを代行している。松の木陰の下にベンチも設置されている。


 飲み物や軽食を提供してくれる屋台があちらこちらに出ているが、それらに混じって、変わったのぼり旗を立てた売子がいる。『ハムズ名物、ヒマワリの種せんべい』 旗には、そう書いてあった。


「なんか、妙に既視感のある景色……」


 コピペはジト目で、隣のハムスター獣人たちを見る。


「ちゅ?」


 期待した目で、じーっとコピペを見つめ返す。

 目がキラキラ……。


「うがー」


 コピペの負けである。

 コピペはヒマワリの種せんべいを買って、ハム獣人たちに振る舞うのであった。



ヤバいです。ノリとスピードだけが、命だったのに、早くもガス欠です。

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