きのこが現れるがラスボスはコピペさんだった。ハムスターがんばる。
はむすたーあるある。
お店からハムスターを連れて帰るとき、「私が持つ!」と言ってきかない子に、まかせる。
ハムスター入りの箱を、大事に抱える。中から、がりがり。
箱だけでなく、セーターのお腹周りもボロボロ。
自分たちがいるすぐその横の家で悲鳴が上がった。
ダの行動は早かった。戸に鍵がかかっているとみると、すぐに窓を探し、それも開かないことをまず確認。
コピペが精霊魔法で、中を探知するより、ダが戸の鍵を壊して、中に飛び込むほうが早かった。
「なんだ!?」
ダの声に、コピペも続いて飛び込む。
「はむ……じゃない?!」
大きさはハムスター獣人ほど。
しかし、エルフの上にのしかかっているソレは、……『きのこ』だった。
「何の冗談……」
思わずコピペが『どっきり』と書いた看板を探しても無理からぬことだろう。
そんなネタなど知らないダは、走り寄って『きのこ』を蹴り上げた。
『きのこ』は、胞子をまき散らしながら、飛ばされ、下敷きになっていたエルフはせき込んだ。
出遅れた形になったコピペ。
その後ろから、ドタドタドタと、慌ただしい足音。
「なんだ、なんだ」
「どうした、どうした」
ドワーフ二人が、コピペを押しのけるように、部屋の中へ侵入。
「げ」
「どっから、出た」
一人が部屋に走りこもうとするのを、もう一人が腰に食らいついて止めた。ひょうしに、二人ともひっくり返った。
「入んな! 胞子にやられる!」
「…そうだった。すまん」
言っている間に、ミケも到着。コピペは膠着。
そして、目の前のダは、妙な動きをしながら、同じ場所をくるくる回っている。
「なんだ、これは! 体が勝手に動く!」
仰向けに倒れたままのエルフも、
「あわわわ……」
手足をバタバタとさせ、赤ん坊のような有様。まともではない。
「なにこれ? 混乱魔法?」
「みたいなものかな? あの胞子が原因みたいだが」
『きのこ』は、出てきた板の割れ目に戻ると、バリンとその板を割ってさらに穴を広げた。
『きのこ』が、現れた!
『きのこ』は、二匹になった!
『きのこ』は、短い手をシュッシュッと振って、ファイティングポーズ。
「このやろう!」
かっとなったドワーフ、仲間が止める間もなく、飛び込む。
ボフン! 胞子攻撃。
「ひー!」
ドワーフ、『きのこ』にではなく、そこにいたダに、飛び蹴りをくらわし、Uターンして、扉の所にいたミケに飛び蹴りしようとして避けられ、そのまま、外へ。
「しっかりしろ!」
仲間のドワーフに羽交い絞めにされる。
「ダさん! これを!」
『回復の泉の水』の入った竹の水筒を取り出し、コピペがダに駆け寄る。
ミケがとっさに止めようとするが間に合わない。
ボフン! 胞子攻撃。
「あ~~~ほ~~~!!!」
ミケ、スラム街のやじ馬たちに向かって、全力で叫ぶ!
「全員、直ちに全力退避~~!!!」
遠巻きに何事かと見ていた、やじ馬たち、わっと蜘蛛の子を散らすように、逃げる。
反応が早い。
どど~ん!!!
地響きがした、一瞬のち、小屋の屋根が、ふっとんだ。
砂埃が収まったのち、ミケが目にしたのは、テンションがマックスになった精霊たちの中で、
テンションがおかしくなって、笑い続けているコピペ。
精霊魔法、暴発である。
思いがけない、ラスボス登場に、ミケには打つ手なし。
どど~ん!
次は竜舎の屋根がふっとぶ。
ワイバーンは、何事かと、固まっている。
どど~ん!
なんの関係もない家の屋根も吹っ飛ぶ。
「はいはい、ちょっと、失礼しますよ~」
場違いな、のんびりした声がした。
ミケが振り返ってみると、そこには、
『ヒマワリの種せんべい屋さん』がいた。
その後ろには、大勢のハムスター獣人たち。
せんべい屋さんは、のぼり旗から器用に竿だけ外すと、旗をマフラーのように、顔下半分にクルクル巻き付ける。即席のマスク。
ハム獣人の数人が、隣の小屋から手馴れた手つきでワイバーンを出す。
ハム獣人たち10人一組で、ダやコピペを抑え込みにかかる。あっと言う間に、ハム団子。
ハムスター獣人にモフモフ攻撃されたコピペ、癒され、落ち着く。精霊も落ち着く。
部屋の端に転がされた、竹の水筒を、拾い上げ、回復の水を一口ずつ、飲ませる。
ハム獣人に引っ張られてきたワイバーン、目の前でファイティングポーズしている『きのこ』を、なんと丸のみに!
もう一匹が慌てて、床の割れ目に戻ろうとするのを、せんべい屋さん、むんずとつかんで、ワイバーンの口へポイ。
ワイバーン、腹が膨れたのか、嫌そうな顔をしながらも、もぐもぐ噛んだ。
「まだ、いますかね?」
穴をのぞき込む、せんべい屋さん。
「ちゅ、ちゅ」
何か伝える、ハム獣人。
「はあ、そんなに繁殖してしまったんですか。焼くしかないですね」
「ちゅ……」
ハムスター獣人はしょんぼりしているように見える。
「お客様」
せんべい屋さんはコピペに話しかける。
コピペは、ハム獣人にもみくちゃにされて、ヘラヘラしていたが、気が付いて
「私?」
「この中は、ハムスター獣人が掘った、穴が深く続いています。火炎魔法で中を焼き払えますか?」
「……一応、お聞きしても? 中に何が?」
「キノコ型の魔物が、スタンピードを起こしかけてます」
「すぐやります。徹底的にやります」
精霊ちゃんたち、いきますよ?
深く長いイメージで炎のヘビをゴーっと、洞窟内に這わせる。
やりすぎず、足らなすぎず、いいあんばい。キノコの焼けるいい匂いがたちのぼる。
主人公のくせに、ようやく、いい所を見せることができたコピペであった。
次がようやく最終回です。