コピペさん、ハムスターの不審な行動を見る。
寝過ごしました。
ドワーフ二人は『マドンナ商店』から、預かった荷物を抱え、帰りを急いでいた。急いでいても、自分たちの飯と安酒を買うのを忘れたりはしなかった。
その後をミケがつけていた。彼は、猫型獣人の身軽さで、一定の距離を保ちつつも、けっして彼らの視界に入ることはない。
ジュのことは放っておくことにした。連れて出たらやかましいだろうし、尾行どころではなくなりそうだ。
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留守番をしているエルフは、最近言うことを聞かなくなってきている精霊たちと、心を通わせようと、試行錯誤していた。
エルフの集落に仲間たちと一緒にいたころは、こういうことがあったら、仲間の誰かが、どうにかしてくれたものだ。
このエルフは今、孤独である。
仲間であるドワーフ達はたいがい二人でつるんで行動している。
精霊は楽しいことがないと動かない。
彼は悪循環に陥っていた。
ガタガタガタ……。
ふいに、部屋のすみの床が動き、彼はびっくりして、立ち上がった。
ひぃ……と、声にならない息が漏れる。精霊魔法を打とうと、手をかざすが、精霊は反応しない。
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ガサガサガサ……。
竜舎のすぐわきの、わらの山が、揺れた。わらの山は、一部を崩しながら、細かく揺れ続け、そして、 ぬっと何かが顔を出した。
あっ……と、声が出そうになるのをこらえた。
コピペとダの、目に映ったのは、わらの中から這い出てきた、ハムスター獣人。
毛皮が汚れている。
ハム獣人はいつものおっとりした様子からは全く想像もできない素早さで、プルプルっと体の汚れを払い落とし、ダッシュで走り始めた。
「え」
まったく、近寄ることもできない速さ。
スラム街の人々が、気が付くも、反応できない速さだった。
呆気にとられているその間に、別のハム獣人が、ぬっと出て、ダッシュ。
また、ぬっと出て、ダッシュ。
「え」
「え」
なにが、起こっているのか、理解が追いつかない。
「ぎゅあぁぁぁ~!! 助けてくれ~!! あぁぁ」
突如、男の叫び声が、まさにコピペとジュがもたれて隠れている、その家の中から上がり、二人は飛び上がらんばかりに驚いた。
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ドワーフ二人が帰りを急いでいる、その真正面から、ハム獣人がすごいスピードで突っ込んできた。
「うおっとと」
大事な荷物を抱えているので、とっさによけようと体をひねった。
「いや、いかん!」
「逃げた!」
「つかまえろ!」
「手がふさがっとる!」
ドワーフ二人は、わたわたと足をもつれさせ、酔っ払いのような動きだ。
ハム獣人はそのまま、ミケの横をかすめ、あっという間に去っていった。
今、ハム獣人を見て、『逃げた』『つかまえろ』と、言ったな?
次々突っ込んでくるハム獣人、わたわたするドワーフ。
猫型獣人であるミケには、三匹目のハム獣人を捕まえることは可能。しかし、怪しいドワーフに逃げられる可能性は大きい。
足手まといのジュでも連れてきたほうがよかったか。
後悔しても遅い。
ドワーフ達は、スラム街のほうへ慌てて走り出している。ミケはその後を追った。
はむすたー、あるある。
今度こそ、健康的に育てるため、「えさの量は適正に」、を家族会議で決める。
ヒマワリの種をこっそりとやる奴がいる。×4。
「何で、太りすぎたんだろうね?」