コピペさん、スラム街で飼われているワイバーンを見つける。
4月に入って、色々あって、なんか大変です。
別行動となった、ダとコピペは道なりに歩き、牧場を抜け、町はずれのスラム街の入り口までたどり着いた。
「ここからは、あまり治安が良くない。引き返そう」
ダが言う。
「そういうところを探さないと、何しに来てるかわかりませんよ」
コピペはダの過保護ぶりに呆れる。
自分だって、精霊魔法を使えるれっきとした大人だ。戦闘にはからっきし自信がないが、逃げ足ならまかせとけ、である。
ダの制止を振り切り、さっさと先に立って歩きだす。
案の定、ガラの悪いのが、からんできたが、
「この先に用事があるんだ。通せ」
と、ダが睨みつけると、やれやれと肩をすくめて、引き下がった。
「あら、拍子抜けですね」
「自分と相手の力量の差を、ちゃんと分かっている奴のほうが、危ないんだぞ? それに、帰り道で待ち伏せされると、思っておいたほうがいいぞ」
「いきはよいよい、帰りはこわい、ですね」
物陰からのいやな視線がいくつかあるな、とダは剣の柄に手を添え、気を抜かない。
「精霊魔法、いつでも発動できるように、準備だけはしとけよ」
「相手から認識されにくくするやつ、かけときましょう」
ならば、先にやっとけ、である。ダは今更、コピペに文句は言わない。
あほだが、能力は申し分ない。変な奴だが悪いやつでもない。それが、コピペさんだと、知っているのだ。
「ん?」
コピペが立ち止まった。
「どうした?」
「精霊が何かを伝えたがっているような」
見回すと、他の家より一回り大きい廃屋がひとつ。家畜小屋かと思い近づいてみる。
「牛かな」
木目の間から中を覗いてみる。
「げ」
ワニの頭のようなものと、がっつり、目が合った。目を離し、頭をかく。
「なんだ」
「ワイバーンです。おそらく」
「……」
ワイバーンを、飼っているなど、ドワーフ坑道のドワーフ達しか、いないはず。
二人は、商店街の中であったドワーフ達を思い出していた。
「あんまり、環境の良くない場所で飼っているのですね。何人で世話しているのでしょうか」
「小型とはいえ竜だからな、世話もエサも大変そうだな」
「持て余した挙句、スラム街。ありそうですね」
「窓もない小屋で飼っているのは、スラム街の人間に害されないようにか」
「逆も、あるかも。うっかり、人を噛んだりしないように」
「人…」
「……」
しばし、黙り、お互い妙な空気になった。
「なにか、いやな想像、しました」
「俺もだ。考えたくはないんだが、まさか……」
気が付かなかったことにして通り過ぎてしまいたい気分になったが、認識阻害魔法を強化してその場にとどまることにした。
どのみち、他に手がかりもないのである。無駄足に終わった所で、今更感がある。と、いうか、無駄足に終わってほしい。
コピペは、犯人に迫った刑事の気分だった。被害者に無事でいてほしいという気持ちと、事件の真相を知りたい気持ち。
ダは、冒険者として場数を踏んでいるのか、平然と観察を続けている。
はむすたー、あるある。
冷蔵庫の裏に逃げ込んだ、はむすたー。
Gをくわえて、得意げに、戻る。
もう、もっちーくんを、さわれないよぅ~。(ノД`)・゜・。
でも、次の日には、忘れて、すりすり。