桃太郎の犬猿雉
桃太郎のお供である犬猿雉って実際に鬼を倒すことができるのだろうか?なんてことを考えて書いた作品です。例によって下調べは全く無しですがどうか目を瞑ってください。
春の陽光で周りの空気が暖かなものとなり、そよ風がカーテンをふわりと浮かせ頬を心地よく撫でる。そんな春の教室に小柄でまるで貼り付けたような笑みを浮かべている軽薄そうな女とアイマスクで目を覆いながらも鼻粱の通った鼻やスタイルから美人感が伺える長い髪の女すぅすぅと気持ちよさそうに寝ていて、そんな二人が机を挟み向かい合って座っていた。そして女がその軽薄そうな口を開く。
「ねぇ、眠り姫そろそろ起きなよ。10分だけって言ってからおよそ3倍の時間が経ってるよ。」
すると眠り姫と呼ばれた女がアイマスクを外し、普段の仏頂面をやや崩し少しばかり苛立った表情で言った
「その…眠り姫っていうの…やめろって…言ってるだろ…静香」
そして静香と呼ばれた女は口を僅かばかり釣り上げるとイヤミっぽい口調で
「いいじゃない、別にみんな言ってるし似合ってるんだからさぁ」
そう言われると眠り姫は先程より更に苛立った表情で「あとで覚えてろよな」と小声でいうと、もとの仏頂面に戻った。
「ん、なんか言ったぁ?」
「いや、なにも。それでワザワザ…私の昼寝を…邪魔したんだ、大事な話でも…あるんだろ」
「今日は桃太郎にしようと思うの」
「」
「いやさ、桃太郎ってよくよく考えるとおかしなところがあるじゃない?あると思うでしょ?」
「……それは…あれか…桃から人が…生まれてるのが…おかしいという…ことか?」
「いや、そこは別にいいのよ」
「そこはいいのか!?」
「う、うんいきなり大きな声出さないでよ、心臓が止まるかと思ったわ」
「…………すまん」
「私がおかしいと思った所はね…」
そう言うと山田は勿体ぶるように沈黙し息を止めて苦しくなりかけたところで深呼吸をすると大きな声で
「お供が犬猿雉って頼りないと思わない!?」
「…まぁたしかにな…あと深呼吸……意味あったか?」
「だって桃太郎の居た時代ならもっと強い動物いたと思うでしょ!?」
「じゃあお前…ならだれを…お供にするんだ?」
「私ならそうねぇ、馬熊鷲かなー」
「……それは確かに…強そうだな」
「馬で颯爽と地上を駆け巡り!鷲で敵を視察!そして熊で鬼を叩き殺す!これなら鬼に勝つってのも納得出来と思うのよね」
そう言うと静香はいかにもなドヤ顔を披露したが眠り姫は少しの間、思案顔になると再び口を開いて静香に尋ねる。
「しかしだな…桃太郎が犬猿雉を…選んだのにも……理由があると思うんだ」
静香はそれを聞くと真剣な目で続きを促した。
「よく思い出してみろ……あの時の犬猿雉は…自分からきびだんごを……くれと促していただろ?」
静香はそれに無言で頷く。
「…そうなるとだな、あの犬猿雉…は実は他の動物達とは……違って言葉を話せる……特殊な動物だったという…ことではないか?」
眠り姫の論を聞き静香は目を皿のようにして驚愕した。
「なるほどねぇつまり桃太郎は一度、熊や馬にきびだんごを与えて仲間にしようと試みたが、そこで言語が通じないことに気付き一人で倒しに行こうとしたが運のいいことに人の言葉を話せる動物に出会い鬼を倒したと………………桃太郎って結構アホの子だったかーでもさぁこれ言葉、話せる動物って妖怪とかじゃないの?」
「……………………カワイイから」
「え?」
「カワイイから…喋っても不思議じゃない……」
このまま二人の間で無言が続くかと思われたがそれを防ぐかのように学校のチャイムが響き出した。
「帰ろっか」
「…あぁ」
「途中、どっかでなんか食べる?」
「…着くまでにしりとりで……負けた方のおごり…な」
そう聞くと静香は目を弓なりにしならせて「そうこなくっちゃ」と言い。
眠り姫はその眠そうな目の奥に闘志の炎を灯しつつ椅子からさっさと立ち上がり扉へと向かう。
そして静香はその背中を急いで追いかけつつ明日はどんな話でもをしようと考えるのだった…
「……静香、あのリアクションは…オーバーすぎる」
「そうかなぁ」
おわり