一攫千金のために
休憩を終えた俺たちは、奴隷を買う資金のために迷宮の5階層にいるとあるモンスターの捜索をさがしていた。効率を上げて稼ぐために、奴隷を買う。ついでにランクを上げて稼げるだけ稼ぐ。作戦とすら呼べない行き当たりばったりの作戦。失敗したらきっと刑務所行きかななんて少しネガティブになっていると、自慢の鼻でそのモンスターをさがしていたシャルが急に止まってこちらを振り返って来た。
「マスター本当に奴隷買ってもエッチなことしない?」
「今までそんなこと欠片もなかっただろ? それだけ実績あれば少し信用してくれてもいいだろ?」
「それは私のおっぱいが小さいから欲情? しなかっただけかもしれない。男はみんな欲にまみれているから」
一度欲にまみれた男性冒険者にひどい目に合わされているシャルの発言には謎の説得力があり、なんだか否定しきれないような気さえしてくる。がここは安心させるためにもはっきり言っておいたほうがいいだろ。
「村のギルドとシャルの羽が最優先だから、それが解決するまではそういうことはしないって決めてるんだ」
「マスターは変なことろで真面目。でも約束は守る人だから信じる」
花が咲いたように可憐な笑顔はずっと守ってあげたいと思える。
ダンジョンのように狭い通路が複雑に入り組んでいる5階層は、Dランクの冒険者潜れる階層の中で唯一ユニークモンスターが出る。それを倒すことができれば金が入るし、運が良ければCランクに昇格できるかもしれない。
ユニークモンスター。それは特定の階層のにしか出ないモンスターで、大きな特徴はその強さと落とすアイテムにある。
この世界のモンスターは殺しても灰になったりはしない代わりにゲームのようにアイテムを落とさないがこのユニークモンスター別だ。さらにその階層で一体しか出ないという不思議な特性もある。出会えたらラッキー程度のモンスター。
5階層のユニークモンスター、ギフトスライムは見た目は黄緑色のスライムで普通のスライム達とほとんど変わらない。違うのはサンタクロースがぶっているような赤いとんがり帽子被っていることと、打撃が効きづらく魔法が効かない。加えてすばしっこいことで有名だ。チートが魔法の俺的に相性最悪なモンスターのため、今まで避けてきたのだ。
「マスター、マスター。この先にいる」
さっきの会話のあとからシャルは俺のシャツの袖をつかんで移動していた。その袖をくいくいと控えめに引きながら小さな声でつぶやくように俺に知らせてくれた。
この先には6階へと続く大部屋がある。
あの休憩のあとから休みなしに歩いてきた俺たち。鍛えられているとはいえそこそこ足にも疲労がたまっている。それがやっと終わりになるそう思うと、少しだけ気が楽だ。
駆け出したくなる衝動をぐっとこらえてシャルに問を投げかける。こういう時、駆け出していくやつは真っ先に死ぬというのが俺の持論だ。
「ほかに冒険者やモンスターは?」
「いない。たぶん食べられたんだと思う」
「この先だったよな?」
迷宮内では原則早い者勝ちのルールがある。もしも横取り呼ばわりでもされたら迷惑料を取られるかねない。が今回はその心配はないみたいだ。
一応大部屋の入り口前の死角からそっと中を覗く。衝撃的な光景に少しだけこえが漏れる。
黄緑でサンタにような帽子をかぶったスライムが、金髪の少女を飲み込んでいるのだから。少し透けたギフトスライムの体から少女の鎧を溶かしているのか小さい泡のようなものが出ている。これはまずい。
「シャルあのスライムの中に少女がいるぞ」
「それは大変助けてあげないと」
「シャル」
「うん、マスターなら」
合図とともに俺たちは駆け出した。
ブックマークありがとうございます。
今日はたぶんこれが最後の更新かな。
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