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魔法の話

 石造りの人工物ように舗装されたフロア内にシャルの鼻歌が響き渡る。

 迷宮はまだどれくらいあるのか判明していないが、異常姿態でも起こらない限り1~5階はゲームでいえばチュートリアルみたいなもので打撃が効かないスライムと殺すのにちょっと覚悟がいるゴブリンぐらいしかいない。

  それがわかり切っているので、まったりした雰囲気が流れている。鼻歌を辞めさせていないのはそれが理由だ。

 

「なんかご機嫌だな」

「こっちにたくさんもんすたーがいるから」


 犬のように鼻を鳴らしながらシャルは嬉しそうにそう言って少し歩くペースを速めた。

竜人族のシャルの鼻は索敵スキルを持っていない俺たちの貴重な情報だ。

 

 シャルのが指さした方に進むと、5匹ほどのゴブリンの群れが輪になって座り込んでいた。ゴブリンといってもラノベに出てくるような醜悪な見た目をしているわけではない。角の生えた3歳児言えば伝わるだろうか。刃物を向けるのも躊躇うほど愛らしい見た目をしている。時に小さい子特有のクリッとした子犬のように大きい目は保護欲を掻き立てる。

 

 3年たった今でも殺すのが心苦しい。しかも売れるのは内臓。殺すだけでなく捌かなければお金にならない。ギルドの捌いてもらうという方法もあるのだが手数料が発生する。今は少しでも出費は抑えなければならないので自分でやるしかない。

ゴブリン達は休憩中なのか鳴き声出しながらコミュニケーションを取っているようでなんだか楽しそうだ

きっとここが迷宮の5階でなければ平和な子供集会に見えるのだろう思うと、ますます殺すのがつらい。


「見つけた」

「ああ、シャルやるか?」

「マスターの魔法が見たい」

「うぐっ」


 そんなまっすぐな期待に満ちた視線を送らないでほしい。マスターたるもの部下の前でかっこ悪いところは見せられたないだろう。

  その視線に思わず後ずさりをすると、シャルが近づく。それを2、3回繰り返してついに観念した俺は魔法を唱えることになった。

 

 この世界の魔法は、基本属性である火、水、風、土、光、闇のほかに異属性という種類がある。俺が今から放つのはそんな異属性の魔法だ。簡単いえば異世界人のみが使える限定魔法の事で俺が持っているいくつかの魔法もとんでもない威力だ。

残念ながらほかの異世界人とのかかわりがないので、ほかの異属性魔法がどんなものかはわからない。 

 生活や戦闘で使うことを目的として発展したこの世界の魔法はRPGもびっくりの手軽さで素質さえあれば誰でも簡単に出せてしまう。つまり魔法陣とか詠唱なんて作業が不要ということ。


覚えている中から一番遠距離であっさり殺せるものを選んで唱える。


「【天使のエンジェルウィング】」


 ゴブリンの群れ方に手をかざし魔法を唱えると、手から閃光が走った。

それは目にもとまらぬ速さで手の先にいたゴブリンすべての首を切り落とし、役目は終わったとばかりに光の粒になって消えていく。天使と名のついた魔法なのに攻撃魔法というところが少し文句を言いたいところだが、強いのでよしとしている。


 噴水のようにゴブリンたちの血が勢いよくその場に飛び散る。あまりの速さで首が落ちた後もゴブリンの体が動いていてめちゃくちゃホラーだ。しかも血の噴水を出しながらだ。

 数秒間動き続けたゴブリンの体は糸が切れた人形のようにバタバタ音を立てて倒れていく。


「おぉ、マスターの魔法はいつ見ても奇跡みたいでかっこいい」

「そうか? んじゃこの調子で内臓取るか」


 シャルに魔法を褒められて照れたのを隠しながらナイフで内臓を慣れた手つきで捌いて行いく。手に生暖かい血が付いたり少し動いている臓器を見るのはやはり慣れていても目をそむけたくなる。ほんと魔石をドロップするラノベの主人公たちがうらやましい。心臓と肝臓を取り出すと残りは放置する。ゴブリンの中で高いのはその二つの臓器だ。

 

 何とか解体作業を終えて、内臓を【フリーズ】を使って凍らせる。便利な収納がないのでリュックにこれらの詰めて次の獲物を探しに行く。

 今日も安全な狩りは始まったばかりだ。

感想やアドバイスお待ちしています。

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