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迷宮都市のギルド

冒険をするための防具と武器を身に着けると、シャルを背負いギルドにclosedと書かれた板をぶら下げて、迷宮都市への道を走り抜けていく。週二回もやっていれば手慣れた作業だ。

ダンジョンに潜って鍛えた【速度+】のスキルおかけで1時間ぐらいでつくことができる。昔は半日ぐらいかかっていたのだが3年も続ければどんな奴でも強くなれるもんだ。


「やっぱり早い、楽しい」

「でも、翼を取り戻したお前の方が早いだろ?」

「そう思うならもっとお金ちょうだい」

「あはは、うん。がんばるよ」


 竜人族であるシャルには翼がない。聞いた話では若い竜人族の翼は秘薬材料になるとかで弱い子供の竜人を狙った乱獲の被害にあったとか。そのせいで村を追い出され困っているところを保護してギルドの受付をやってもらっているわけだ。いつか彼女の翼を治すという条件で。

といっても今のところ手がかり一つない。というか冒険者が来ないから情報が収集できない。シャルの冒険好きはもしかしたら情報収集や翼を治す秘薬探しを楽しくやろうというところからなのかもしれない。


いつも通り検問を抜け中央の迷宮を目指す。

迷宮都市に入った俺たちを待ち受けているのは人の山。右も左も人。


「いつもここは賑やかだよな。いっそマスターやめてこっちで生計立てた方がいいんじゃないか」

「それはダメ、ギルドは全部の街と村にないと」


 ギルドの役割はシャルのような被害を未然に防ぐ警備や村の防衛も兼ねているため、どんだけ人が来なくてもギルド事態をこっちの都合でやめることはできない。別の奴にマスターを押し付けることができれば話は別だが。

 

「冗談だよ。冒険はたまにやるから楽しいんだもんな」

「うん」


人で賑わうメインストリートをくぐるように抜けて迷宮都市ギルドへ足を踏み入れる。


 メインストリート同様たくさんの冒険者で溢れかえっているところを見るとなんだか悲しい気持ちになって来る。

 

 迷宮都市のギルドは普通のギルドと違い受付からして規模がでかい。

迷宮の管理を目的に作られたギルドというだけあって迷宮の入り口をギルドのロビーが完全に覆ってしまっている。そこに10か所ほどの受付がある。一般のギルドが2~3個所しかないことからもその大きさがわかるだろう。

その10か所の中から並ぶのはもちろん美人な受付嬢のいるところだ。


「それにしても魔王も馬鹿だよな」

「それは同感」


 本来人間を倒すために作ったはずの迷宮を人間の稼ぎ場に使ってると知れたら魔王はどんな顔をするのか見て見たいもん

だが残念ながら魔王現在休眠状態なんだとか。まぁこんな大きな迷宮を作れば眠くもなるか。


 人が多いここのギルドは待ち時間も長い。 (美人のところに並んだってことも原因ではあるが)暇を潰せる娯楽があまりないこの国ではこうして雑談をして待つ以外は人間観察ぐらいしない。観察でもしようかと並んでいる列からそっと首だけだして周りをも回すと、面白そうな光景が映りこんだ。

それは隣の列の受付の青い髪お兄さんと、金髪の少女の会話だ。


「どうして、潜らせてくれないんですか!!」

「ですから規則でして……」


机を思い切り叩きつけて詰め寄る少女に受付のお兄さんは引き攣った笑みを浮かべながら対応する。

 金髪少女はどうやら17歳未満は一人で潜れないルールのおかげで迷宮に潜れないみたいだ。基本冒険者になるのに年齢制限はないが、魔王が作った迷宮だけあってできてもうすぐ100年になるが最深部到達したものはいない。すべてが解明されていないので安全のためにパーティーを組んで潜ることを推奨していたのだが、あまりの守られないのでそんなルールが出来てしまった。といってもまだ広く知られていないので、たまにこんな押し問答を見ることができる。受付のお兄さんには気の毒だと思うが暇つぶしにはちょうどいい。


「私はCランクの冒険者よ? 実力不足だって言いたいわけ?」

「いえ、そういうわけではなく……、当ギルドのルールでして……」


 Cランクか……。若いのにすごいな。

この世界冒険者はランク制度によって分かれていてF~Aの6段階。Aランクになると貴族になることができるらしくて冒険者の大半はランクを上げるために難しい依頼や討伐をこなすため人が多い王都や、迷宮都市に集中する。混んでいるのはそういう背景もある。ちなみに俺とシャルはDランク。全然難しい討伐はしていないからあがりも悪い。


「どうしたら潜れるわけ?」

「パーティーを組んでいただいて……」


お兄さんが説明を始めると途端に小刻みに震えだした。不思議に思っていると突然、


「私がパーティーを組んでもらえない悲しい人だと思ってるんでしょ!! もういいわよバカ―――っ!!」


目に涙を零しながら走り去っていった。たぶん今の娘ボッチだったんだろうな。


悲しいものを見る目で出口の方に走っていく金髪少女を目で追っていると袖がくいっと引かれた。


「ん?」

「順番だいぶ抜かされている」


急いで並びなおして迷宮も潜れたのは昼頃だった。

次は日付が変わってから投稿します。

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