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海の焦げた跡

あなたを誇りに思う

作者: 海之本

近頃、あなたのことをよく思い出します。

あの頃の私は、小さくて弱くて何も知らなかった。

それでも分かりました。

あなたは真っ直ぐで、本当の意味で強い人なんだと。

あなたの努力が私の模範で、追い続けた眩しい程の笑顔に、少しは大人になれた今でさえ憧れています。

私が羨望の眼差しで見上げていたことを、きっとあなたは分かっていたことでしょう。

それでもその穏やかさは変わらず、気取らずに私の前で歩み続けていた。

だから、あなたを追い掛けて必死になっても、後悔はしませんでした。

あれから月日が経った今でさえ、あなたの成していたものは、私を強く、熱く、奮い立たせます。

誰かに焦れても、あなたを思い出す時は特別な思いが溢れ、尊敬の念がはっきりと言葉になるのです。

あなた無くしては、今日までの私を語ることはできません。

あなたの一言が決断を押し、あなたほどに恋しく想った人はいない。

たくさんの思い出の中に埋まってしまったけれど、あの頃の気持ちを考えるだけで、今も泣いてしまいそうです。

一緒に見た星のように、輝くものばかりを求めたりはしないと・・・

青く澄んだ海のようになりたいと・・・

あなたの唄声は、優しい風のように温かく、心地よく、波音のような安らぎを与えてくれました。

声を上げて言います。

あなたが大好きだった。

好きで好きで堪らなく、何度も泣いて、晴れた昼下がりには多くの詩を綴った。

今も鮮明に覚えています。

あなたが笑った時、メガネの奥で細くなる目が好きだったことも。

あなたがその優しい声で、私の名前を呼んでくれたことも。

家族を思い、友を思い、直向きにその大きな心で包もうとその腕を広げ続けていたことも。

あなたを好きだった幼い自分も・・・

覚えてる。

あの頃のあなたと同じ歳になり、上手くはいかなかったことも、見えていなかったことの多さも今では分かります。

だけど、あなた無しでは語れないことがあります。

ずっと私の一部で、深く、深く、あまりにも奥深い所にまであなたはいた。

昼下がり、柔らかな風に吹かれながら青空と温もりの狭間で書いたこと。

理想や夢だとしても、あの時の私はあなたでいっぱいでした。

今だからこそ、声を上げて言います。

あなたを好きになった自分が誇らしい。

私はあなたを忘れたりはしないでしょう。

これから出会いごとに、あなたは登場する。きっと。

どれだけ時間が流れようとも、どれだけたくさんの思い出がこの身に溢れようとも。

だから、だから、

あなたが幸せそうに笑っていると、この目の奥が熱くなるのです。

子供をその腕に抱え、眼鏡の奥、優しい眼差しで笑いかけているのを見ると、この胸は温かくなって、だけど、少し苦しくなる。

あなたが愛するもの全ては、やっぱりいつでも素晴らしいから。

あなたは昔よりもっと大きな海原のようにその心を広げて、穏やかにその目を細めて笑っているから。

あなたにやっと大人扱いされるようになって、あなたの力になれる存在になれて、あなたに感謝までされるようになって。

だけどそれでも私は、今も変わらずにあなたを尊敬しているから。

このちっぽけな人生、あなたは静かに呑み込む海のような人。

だから、だから、私は声を張り上げて言います。

私の大切な人。またあなたに会えて、私は幸せです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 切ないような胸が熱くなるような。 綺麗で悲しい想いが見られた気がする。 [一言] ども。ただ一途にその人への想いを胸に抱いたまま、気持ちが伝わらないままにその人が別の方を向いてしまうとい…
[良い点] 胸がときめく様ないい恋愛ですね。 こんな恋を私もしてみたかったです。 文章もとても綺麗で惹き込まれました。 ご執筆ありがとううございました。
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