どうして、私たちが!?
「コラ!お前達、うるさい!」
騒いでいたみなみらの所に運悪く入って来たのは、呼び出し人の御堂筋であった。
(げっ!御堂筋先生や)
みなみは急に現実に引き戻される。
またもや、心臓が騒ぎ始めた。
「全くーー、最近の中学生といったら、音楽室で普通に騒ぎよる」
御堂筋は愚痴を零すと、一人の少女が居ないことに気がついたようであった。
「安孫子は何処だ?」
(あ、安孫子さんーー)
「知らないです」
奏と瑠以子がきっぱりと言う。
「彼奴ーーまた約束をちょろまかしやがって」
御堂筋が溜め息を吐いた。
というところに、梨々香はやって来た。
「すんませーん。ちょい、用事があったもんで」
梨々香は少しも反省の態度を表さない。
(噂の安孫子さんや)
時計の針は、四時十八分を指していた。
「安孫子!お前、遅れているんだぞ。謝れ」
「謝れ、ってせんせー。たったの三分じゃん」
教師と話す態度とは思えない。
「全くーー」
御堂筋はまた溜め息を吐いた。
「まあいい、用件を話す」
みなみは全身の筋肉が引き締まるのを感じた。
(お説教やったら、どうしよう)
しかし、その心配はいらなかった。
「突然だが、今日集めたこの五名には、バンドを組んで貰う」
(は?)
みなみは口をあんぐりと開ける。
(ばばばばば、バンドぉ!?)
「理由は全員が大阪市営地下鉄の御堂筋線にある駅名が名字になっているからだ」
(どんな理由やねんっ)
「我々教員団は思い付いた。知名度が低い我が校のPRとして、バンドを組めばいいのだと。まぁ、心配なんぞ要らない。我が校の最寄り駅の路線周辺にて活動するだけだからな」
(私がバンド?無理無理無理無理!)
みなみは今直ぐそう叫びたい気分であった。
「まぁ、用件はそれだけだ。単なる部活として、楽しんで貰えれば良い。学校のPR活動にもなって、一石二鳥だしな」
「今の部活はどうするんですか?」
奏が言う。
「まぁ、辞めて貰うしか無いな」
(えええええええええええええええええええー!)
や、辞めるだと?みなみは耳を疑った。
みなみは女子バレー部に所属しており、結構部活を楽しんでいた。最上級生として、やっとレギュラーになったばっかりなのに……。
みなみはこれまでの地道な努力が全て無駄に思えて来た。
「まぁ、つまりお前らには学校のPR活動を行って貰うということだ。責任は重いぞ。明日までに、担当パートを決めて、バンド名を決めること。顧問は取りあえず先生がやろう。それでは、解散する」
御堂筋はそれだけいうと、第二音楽室を後にした。
(絶対、無理)
みなみは固くそう思った。