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人類よ、貴様らは増えすぎた  作者: tempester08
第一のゲーム『黒い人物』
9/32

第9話 堂本耀

今日は3話投稿します。


第8話 雑炊

第9話 堂本耀

第10話 強個体


ご注意を

 俺はその日大友のアニキと一緒にアニキの家で呑んでいた。

 良い酒が手に入ったと言って、俺も一緒に誘ってくれて、楽しい酒だった。


 つまみをたくさん買って家に行き、テレビをつけながらアニキが昔の武勇伝を話す。


 やれこんな事があったとか、あの女との一夜は最高だったとか。

 まだ下っ端の俺からしたら夢のような話が満載だ。

 アニキは喋りが得意で、何でもない話でも面白おかしく話してくれる。

 

 飽きも来ず、おいしい酒を堪能しながらほろ酔い状態になった時だった。


 「皆さん、初めまして!おはようございます、こんにちは、そしてこんばんは。

 この映像及び音声は全世界同時に流れています」


 何だこのへんな奴は?


 アニキも勝手にテレビが変わって驚いていた。

 けど、アニキが無視しろと言ったのでそうしてまた酒を注がれたので、一気飲みして場を盛り上げた。


 俺も酒を注いだ時だ。


 「それでは『選別』開始!!」


 画面の野郎が大声出しやがったと思ったら、変な野郎が5人もいつのまにか部屋の中に居た。


 アニキが罵声を上げた時に突然襲われた。

 アニキも強いからそう簡単に負けるなんて思わなかった。

 でもあいつらも相当強かった。

 一対一だったら絶対勝ってた。


 でも五体一だった。

 俺も戦おうとしたらアニキが逃げろと言った。

 否定をしたが、強く言われれば立場上従うしかなかった。

 それに俺は馬鹿で、命令を受けないと動けなかった。

 逃げろと言われれば逃げるしかできない。

 後ろ髪をひかれる思いで玄関を飛び出して自分の家に逃げ帰った。

 戦おうとはしたけど、俺が勝てるかは疑問だった。


 組長からはかなり鍛えられてるつもりだが、アニキが勝てない奴に俺が勝てるかなんて思わなかった。


 ボロアパートの2階の部屋に入ろうとした時、いきなり俺が開けるはずだったドアが開いた。


 「―――!」

 「ごっ!」


 突然の腹への肘打ちにかなり動揺した。

 力が強いし、組長並みだった。


 けど、見ればそいつはさっきの奴だ。

 アニキの仇だと思えば戦う覚悟はできていた。


 そいつに組み付いて床を転げまわり、階段から落ちた。

 体だけは頑丈だと褒められた俺だ。

 これだけはどんな奴にも譲るつもりはない。

 

 1階まで落ちたら俺が上になっていて、チャンスだと思った。

 そこからはあまり覚えてないが、タコ殴りにしたはずだ。


 俺の下に居たのに、いつの間にか消えていた。

 勝った実感は無かったが、とりあえず逃げろという指示だから家の中に入って鍵を掛けた。

 

 本当は途中道に迷ったりして訳が分からなかった。

 いつもの道を逆行かないと着かなかった。意味がわかんねェ。


 それでこれからどうしようかと思った時、誰も俺に命令をしてくれる人が居ない事に気付いた。

 これはマズイ。

 考えるのは苦手だ。

 皆にもお前は考えるんじゃなくて、体を動かした方が良いと言われた。

 適材適所だと褒められた?


 そうだ。指示が無いと困る。

 大友のアニキは逃げる事しか言わなかった。


 ……組長の所に行こう。 

 組長が一番偉い。いつも稽古をつけてくれるし、自宅も知ってる。

 結構近い。

 でも今は無理だ。結構体痛い。

 今日の所は寝よう。




 次の日。テレビを点けようとしてもだめで、スマホは圏外。

 組長にそっちに行く旨を伝えようとしたが、突然行くことになる。

 怒られるな。


 とりあえず、スマホと財布を持って組長の家まで行った。

 家はすげぇでけぇんだ。

 日本庭園みたいなところに、純和風の木造の平屋がある。

 最先端の機械なんて殆ど無くて、昔ながらの家と言う感じだ。

 道場もあってここで稽古をしている。

 なんたらとかいう武術だったが、俺には才能が無かったらしい。

 それでも剣道の方はマシだったみたいで、剣道を教えて貰っている。

 組長はめっちゃ強い。

 誰も勝った所を見た事が無い。



 それなのに……。


 「なんで……」


 組長が死んでいた。

 組長だけじゃない。

 番場のアニキ。東郷のアニキ。前島のアニキ。清水のアニキ。武田のアニキ。

 それだけじゃない。

 俺と同じ下っ端もみんな死んでた。

 辺りは血の海と、真っ黒な水がたまっている。


 「何だよ、これ……」


 その時だ。

 後ろに誰かいた。


 振り返れば、昨日の奴が居た。


 「てめぇがやったのか……!」


 そこら中に落ちてる木刀を手に取って黒い奴に打ちかかった。


 「めぇぇぇぇんん!!!」


 一発だった。黒い奴は抵抗むなしく俺の剣で死んだ。

 それだけで水たまりになった。


 「こいつじゃない……」


 組長たちがこんな雑魚にやられるわけがない。

 屋敷に人の気配はない。

 くそ。敵討ちもできないのか。情けねェ。


 皆をこんな状態にもできず、懇意にしている葬儀屋に連絡したがその前に電話が通じない。

 固定電話もダメ。パソコンもダメ。テレビもラジオも。ドライヤーも。何もかも。


 「どうなってんだよ……」


 車を動かそうとしたがこれもダメ。

 隣の家に行って電話を貸して貰おうとしたが居ない。

 その隣、隣、隣、隣、隣、……………………。




 「何で誰も居ないんだ……」


 50件以上を回った所で諦めた。

 何が起きてるか分からないが、一人取り残された事だけは分かる。


 周りを見ればいつもと景色が違う。

 全部逆だ。なんでだ。どうなってるんだ。

 アニキ。教えてくれ。俺はわかんねェ。


 ポツポツと雨が降り始めて、皆の事を思い出して墓を作る事にした。

 

 いつも鍛えているおかげと、雨が降ったおかげで人数分の墓穴はすぐにできた。


 一人ひとり丁重に穴の中に入れて、埋める。

 何回も。

 何人も。


 目は涙でいっぱいになり、前が見えない。

 俺達は社会のはみ出し者だけど、ここまでされる覚えはない。

 存在が邪魔だと言われれば終わりかもしれないが、そこまで悪い事はやっていない。


 「何でだよぉ……」


 全員を埋め終わり、屋敷の中で体を拭いて縁側に座る。


 手にはいつも組長が大事そうにしていた短刀。

 業物だかで一回も触らせて貰えなかった。形見として持ってきた。


 カッパを着て屋敷を出ようとした時、後ろに気配がたくさんあった。


 黒い奴が10人。


 「そういう事か……」


 馬鹿の俺でも分かったぜ。

 数で押したんだな。お前ら一人なら俺だって倒せるけど、たくさん来たら困る。

 幾ら組長でも同じだ。


 だから部屋の中に黒い水がたくさんあったんだ。


 短刀を鞘から引き抜いて、相手に向き直る。


 「やってやらあああっぁあぁぁ!!!」




 住宅街を疾走し、目的の人物を見つけた。

 黒数体に囲まれ、地面に押し倒されている。


 「……あいつ!!」


 その言葉を皮切りにメイが俺を置き去りにして爆走して行った。

 とてもじゃないが追いつけない。

 100mを9秒台で走ってるんじゃ?


 「メイ!待て!」

 

 俺の言葉を無視してどんどん先に進んでいく。

 一秒ごとに何メートルも離されていく。

 これじゃ遠距離攻撃の無い俺ではサポートできない。


 「……クソ!!」


 一層脚に力を入れて一瞬でも早くあの場に。


 

 ボウガンを抱えたメイはすでに屋敷内で抑え込まれている男のすぐそばまで来ていた。

 走りながらは撃てないと思い、『靴』での攻撃しかない。

 凄まじい恐怖。

 自分を襲った相手に今度は自分が反撃する。

 

 柊がやっていた跳び蹴りをやろうと最後に思いっきり地面を踏みきって体を前方に射出。


 「ハアアァア!!」


 可愛い声の掛け声とは裏腹に激烈な破壊が巻き起こる。

 乗りかかっていた黒の肩口に脚が当たったと思えば、肩が爆散して黒が崩壊。


 「「……え?」」


 二人同時の困惑に一瞬硬直する。


 「メイ!!」


 後ろの声でハッとして周りを見た。

 8体。

 自分では勝てない。


 「早く起き上がってよ!何ぼさっとしてんのさ!」


 「は、はい!」


 命令に近い物を出され、ドスをもった男が起き上がる。

 走ってきた黒にボウガンを心臓部分に射撃して、命中。崩壊。

 リロードする時間は無い。

 残り7体。


 男の手を取り逃げようとしたが、男はドスを握りしめ黒に突撃してしまった。


 「な、何やってんの!?」


 「すんません!!仇を取らないと!!」


 「どうすんの!?」


 取り敢えずボウガンに矢を装填する。

 男が突撃したおかげで、7体が全部集中して行ってしまった。


 その間に男が接触した黒が液体に変わり倒したことを確認した。

 しかし多勢に無勢。

 あっという間に囲まれてしまい、防戦一方。

 今だ生きているのが不思議なくらいの攻撃を受けている。


 ボウガンを構え、動きが大人しい黒にヘッドショット。液体に変化。

 残り5体。


 「このバカが!勝手に動くな!」


 後ろから援護が来て自分のした事を思い出した。

 矢を再装填しながら謝った。





 メイと男が奮闘している場所にようやく到着して、刀と抜刀する。

 敷地面積が広いおかげで、刀を振り回せる。

 黒は5体。過去最大数の相手だ。

 しかし5対3。行けるか?


 まずはあの男だ。袋叩きにあっている。

 走りながら両手で刀を下段に構える。


 「シッ!!」


 男の後ろを取っている黒を後ろから刀を振り上げて、斜めに伐採。

 黒い液体を撒き散らして崩壊。

 男の襟首を掴んで下がらせる。


 「ぐぇ!」


 「早くこっち来い!」


 了承など取らず窒息もお構いなしに黒から離れる。

 黒も追って来ようとしたが、メイの牽制射撃で動きが止まった。

 矢は残り23本だな。まだ行ける。


 「あ、あんた達……」

 

 強く引きすぎてしまい、ドスを取り落としたみたいだ。

 これは俺が悪い。それでも仕方ないだろ。


 「剣道の動きをしてるな。これを使え」


 愛刀を手渡しナイフを引き抜く。


 「ぽ、ポン刀!?い、いいんすか?」


 「死にたくないなら使え」


 「う、ウッス!」


 残りの黒は3体。

 後ろは振り返らずメイに指示を出す。


 「メイ、無理して撃つ事は無い。チャンスを狙って撃て」


 「了解!」


 横目に男を見て質問をする。


 「力はあるか?」


 「な、何のことすか?」


 「分からないならいい」


 割と強いみたいだったが、まだ力無し。

 

 「名前は?」


 「堂本っす」


 「堂本は1体やれ。俺が2体やる」


 「ウッス!」


 迷い無い返答で意気込みが伝わってくる。

 堂本は刀を構え、一番右端に居る黒に突撃した。

 堂本の邪魔をさせないように壁となりながら俺も真ん中の黒に突撃していく。


 「―――!」

 「―――!」


 狙い通り2体とも釣れたが、2体同時は流石に厳しい。

 右手に持っていたナイフを左端の黒に投擲して、時間差を作り出す。

 

 この一瞬を無駄にする訳にはいかず、最後の1本であるナイフを手に取る。

 右腕を振りかぶる黒と同じくナイフを走りながら大きく構える。


 「―――!」

 「シッ!」


 俺のナイフと黒の拳が交錯して、どちらも顔面を捉えた。

 軍配は俺だ。

 黒は液体へと変化して、崩れ去る。


 しかし拳のダメージは如何ともし難く、握っていたナイフは落としてしまった。


 残る一体も拳を打ち付けてくる。

 怒涛の連撃に反撃の隙が無い。


 黒が横を向いた瞬間、距離を取られ目の前を左から矢が通り過ぎた。

 援護が来たか。もう少しで死んでたぞ。大丈夫なの?俺に当たらない?


 「チッ!」


 本人としては俺に当てるつもりは微塵もないし、そんな恐怖を感じている様子も全くない。

 『靴』のスピードでさっさと離れて、リロードしている。


 しかし仕切り直しになった。

 次はこっちからだ。


 無手のまま黒に突撃。

 ここで初めての行動を見る。


 黒が大きく跳躍し脚をこれでもかと掲げて、踵落しを落す。

 今まで適当なパンチ・キック位しか出さなかった黒だったが、工夫がみられる。


 脳天一直線の脚を両腕で受け止める。


 「―――!」

 「グッ!!」


 攻撃力はやっぱり高い。

 それでも無理と言うわけでもない。


 着地ざまにすぐに二の手を繰り出してきた。

 右ハイキックを俺も右ハイキックで迎え撃つ。

 相打ち。脚が吹き飛ばされる反動を使い古武術を行使。


 【柊流古武術『旋刃』】!


 その場で一回転して、俺の右回し蹴りが黒の頭部を襲うが右腕でガード。


 「―――!」


 苦悶のハスキー声が上がる。


 そのまま右脚を地面につけて、すぐさま跳躍。

 空中で体を捻り、左脚が黒を襲う。


 【柊流古武術『大崩』】!

 

 打ち下ろしの左脚は威力の逃げ場が無く、最大の破壊力を発揮。

 黒の右腕をへし折り、頭部を守る物が無くなった。

 

 ボウガンの射撃音が俺の耳朶に触れる。

 黒の頭に矢が突き刺さり一撃死の条件を満たした。


 堂本も同時に倒して、戦闘が終結した。

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