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人類よ、貴様らは増えすぎた  作者: tempester08
第一のゲーム『黒い人物』
3/32

第3話 力

今日は2話投稿します。

第3話 力

第4話 意味


ご注意ください。

 午前5時。

 夏らしくすでに外は明るい。しかし、よく外を見れば左右逆転している。

 鏡面世界。

 夢であって欲しかったが、黒をすでに3体倒し楽観的な考えをあらかた捨てた。


 日本刀を腰に差し、サバイバルナイフも吊るす。

 左手にボウガンを持ち、矢を入れたリュックを背負って家を出ようとしていた。

 

 そして窓は破壊され、扉も無くなった室内で俺のスマホが鳴った。

 ポケットの中で振動し騒がしくいスマホを不気味に思ってしまう。

 

 「……圏外だったはずだ。それに電気製品は使用不可……」


 スマートフォンとしての機能は確かに死んでいた。それは確認してある。

 小さな明かりや時間を確認する程度としては使えたからポケットに入れておいたが……。


 その前に俺にかけてくる奴は誰だ?知り合いなんて居ない。一応、自衛隊時代の仲間がいるがこの状況で?


 だが、うるさい音がずっと鳴っている。

 黒が音に反応してここに来たら困る。出るしかないか……。


 スマホを手に取って通話ボタンをタッチして、耳に当てた。


 「……誰だ?」


 「この音声は自動応答となっています。『黒い人物』を3体以上撃破した方のみにコンタクトを取っています」


 機械的な女性の声が聞こえてきた。

 留守番電話サービスを彷彿とさせる。


 「お名前を」


 自動応答の音声が自己紹介を求めてきた。言っていいのか?

 損があるか?得は?……踏み込むか。


 「柊照光だ」

 

 「柊照光様ですね?よろしければ返答を」


 「ああ」


 「テレビをご覧ください」


 突如意味不明な事を言い出したと思ったら、テレビが点いた。

 ひとりでに点くテレビなんて見たくない。

 

 「な!?」


 また使えた?さっきは使えなかったのに。

 ……いや。そう言えば、電子機器は一部を除いて使用できる。

 一応はルール通りなのか?


 「画面の内の一つのみを選べます。制限時間は30秒」


 始め、の声で画面の右上に30の数字が出現して、一秒ごとに減り始めた。


 「……選ぶ?この中から?」


 この時、俺はルールの一つを思い出した。


 6.『選別』中は『選別』中に手に入れた力を使用することができる。


 これだ。条件を満たした。黒を3体倒す。これで力が手に入る条件だ。


 画面には複数の文字が出ている。

 文字だけが映し出され、異物感が半端ない。


『刃』

『棒』

『服』

『靴』

『目』

『耳』

『鼻』

『地図』(精度不明の探知機)


 「これが力……」


 音声の言葉に従えば、この中から1つだけ選べる。

 どれだ。どれが最善だ!?

 ここで俺の運命が左右される。おそらく1回だけだ。これは。


 残り20秒。


 どうする。

 『刃』にするか?見るからに強そうだ。刃だ。刃物。剣。刀。これを持ったらどうなる?

 強くなる?何が?不明だ。切れ味が上がる?それとも刃物の扱いに長ける?ダメだ。


 残り15秒。


 これは『棒』『服』『靴』にも言える。

 分からない。判断できない。これを取ったらどうなるんだ?説明不足だ。

 

 残り10秒。


 『地図』。これはどうだ。精度不明の探知機?何を探知する。黒だろ?だよな?

 でも精度不明。有ってもどうなんだ?使えるのか?

 頼りすぎたら痛い目を見るんじゃ?


 残り5秒。


 残りは五感。安全だ。これは強化だろ。五感の強化。これなら……。攻撃力は変わらない……。

 

 クソ……。


 スマホを耳に当てる。


 「俺は――――」





 力を得た後、その確認をして外に出た。

 力はちゃんと機能しているし、選択は間違ってはいないと思う。

 それ以前に間違いというモノが無い筈だ。そのための力。

 個人個人で適正が変わる。俺はこれが良いと思った。……良い筈だ。


 もう、最初の黒と接触してから10時間くらい経ている。


 世界では何人が死んだんだ?

 まだ終わっていないなら50億人は死んでいない。


 それよりも。


 「……取り敢えず、学校に行ってみるか?」


 ここから一番近い場所で第一高等学校があったはずだ。

 体育館もあるし避難とかできそうだ。馬鹿の俺がこういう発想をするなら、他の人だってこうなるだろ?

 真っ先に思うよな?学校行くよ。


 「歩いて30分くらいか……」


 通常の場合はな。

 今は黒が跋扈してる。戦闘は避け、遠回りでも1歩1歩近づいていこう。


 「北だよな」


 まぁ、逆になってるんだけど。鏡だし。





 「クソ!!」


 すでに3時間以上移動をしている。

 だというのに一向に学校が見えない。


 「多すぎる!どうなってるんだ!?」


 黒の数が想像以上に多い。全く進めない。

 家の中に勝手に入ったり、塀の後ろに隠れたりと頑張って隠れている。


 「何故だ!?人にも全く会わない!!」


 どういう事だ?

 もうかなりの数の家に勝手に入っているが、誰もいやしない。


 外を慎重に移動しても、居るのは黒のみ。

 

 「……そんな馬鹿な。……まさか」


 いや、違うだろ。皆避難しただけだ。

 俺はアホだから遅れている。

 そうに違いない。

 現に国連の奴の言葉を無視して、ジャン○を読みに行った馬鹿だ。

 俺以外の日本人は賢い。世界でもそういう評価だったはずだ。


 全員が思慮深く、冷静沈着。

 家族にそういう人物がいて、引っ張って行ったに違いない。


 家がぐちゃぐちゃになっていたのは俺の見間違いだ。

 赤く染まっていたが、そんなものは見ていない。知らない。ペンキだ。そういう内装だ。


 「が、学校に行こう。そうすれば―――!」


 その時、ジャリッと音がして反射的に身が竦む。


 ……黒!!


 居る。来てる。気付いてよかった。

 まだ独り言は聞かれていない。


 今は塀の後ろに隠れ、黒は道をゆっくり歩いている。

 見逃せばそのまま離れていくだろう。


 でも……。このままじゃかなり時間がかかる。

 1匹でも減らせば、俺の行軍が楽になるかも……。


 それに、ゲーム満了条件に黒の全滅がある。コイツを倒せばそれに1歩近づく。


 殺すか。


 俺は入り口前まで静かに移動していく。

 俺の進行方向と黒の方向は一緒だ。待機場所は黒の死角だ。


 俺の横を通り過ぎそのまま直進していった。


 いいぞ。

 俺は腰に差していた日本刀を静かに、慌てず、ゆっくり抜いていく。


 緊張の一瞬だ。スーと刀と鞘が触れる音がする。

 気づかないでくれ―――!


 黒は何事もなくゆっくりと歩いていく。気づかれなかった。


 ……よし。


 ここからは一撃だ。覚悟を決めろ。殺人じゃない。人の形をしているだけ。


 ゆっくりと顔を出し近くに黒が居ないか確認した。

 クリア。


 前方数mの位置に黒が居る。

 一気呵成に!


 「――――――フッ!」


 スタートダッシュを決め、黒に向かって走り始めた。

 

 こっち向くな。頼む。そのまま。

 死ね!!


 黒が振り向く直前に刀を心臓部分に突き入れた。


 「―――!」


 突然攻撃を受けた黒は肘打ちをしてきて何発も腹に当たる。

 絶対離さない気合で刀を握り、黒を真っ二つにするかのごとく真下に振りぬいた。


 斬られた黒はしばらくジタバタしていたが、やはり黒い液体になって崩れた。


 「……やった」


 これで4体目。何かボーナスが有るかなんて聞いてないが、それでも人類の貢献にはなっている。


 周りを見渡しても誰もいないし、とても静かだ。

 鏡面世界独特なのか?『選別』が終わったらどうなるんだ……。


 それより、時間もすでに9時だ。

 3時間連続の移動に、黒に対する警戒でかなり疲れた。


 また勝手に家に入らせて貰って休憩しよう。


 近くの家の敷地内に入り玄関扉を開けようとするが、やはり開かない。

 裏に回ると庭が見えて、ガラス扉が全開になっている。

 カーテンがさらさらと揺れて、何でもない光景でも非日常に見えた。


 靴を履いたまま家に上がらせて貰い、ガラス扉に鍵を掛けカーテンを閉めた。

 それでも日中という事もあり、部屋の中は明るい。


 サバイバルナイフを抜いて、一応安全確認をするため家の中を捜索した。

 1階は何もなく、油断なく2階への階段を上る。


 扉が中途半端に空いた部屋を見つけ、ゴクリと喉を鳴らしてゆっくりと近づく。

 扉に手をかけ徐々に視界に部屋の中を収めていく。



 地獄。



 扉を閉めて、一階へ降りた。

 侵入した場所に戻り、柔らかいソファーに身を委ねた。

 顔は自然と下を向いてしまい、気分が鬱っぽくなってしまう。


 「またか……」


 これだ。これなんだ。

 どの家もだれか死んでる。それも無残に。

 黒は武器を使ってないから、殴るしかない。

 その殴るがあの惨劇だ。


 体は無事だけど、顔が酷い。

 真っ赤になり、頭から何か飛び出ている。

 真っ白だったはずの部屋は真っ赤になり、カーテンが閉じられた部屋は異様な雰囲気になる。

 いや、あたりまえだ。人が死んでる。


 それに、夏場でクーラーも効かない。

 あっという間に死体が腐って、部屋の中は腐臭でいっぱいだ。


 1か所しか見てないが、他の部屋も同じだ。経験上そうだった。

 一人死んでいれば、全員死んでいる。


 「何だこれは……」


 頭では否定しようとしているが、現実が突きつけてくる。

 日本人はかなりの数が死亡している。


 日本人が弱いのか?黄色人種だから力は弱い。

 白人や黒人に比べればかなり劣る。自衛隊に居る時もこの身をもって体感した。


 それに、先進国としては戦い慣れしていない。

 まず、時代的に武術をやらない。そんなもんやる位なら勉強しろみたいなもんだ。

 武器に関してはかなり過敏な国だ。

 そもそも包丁以外の刃物を持ったことが無い人の方が多い。

 銃火器なんてもっての外。

 だめだ。弱すぎる。絶対的に経験が無い。憲法第9条は素晴らしいと思うが、仇になった。

 なぜこんなものを今の首相は同意したんだ。

 絶対今後の日本は窮地に立たされる。人口が激減し、生産力が落ちて列強から外れてしまう。

 技術大国日本の強みが無くなってしまう。技術を持つ人材がどんどん死んで行く。


 「……日本は終わりだ」


 暗澹たる今後の未来が見えてしまい、さらに落ち込んでいく。


 このゲームで有利なのは、アメリカやヨーロッパじゃないのか?

 それと紛争地域で戦っている強い兵士がたくさんいる国。


 貧困国はさらに貧困にあえぎ、強い国はより強くなる。


 各国の考えが見えてくる。

 人口が減れば食い扶持が減って飢えを満たせる。その上で、できるだけ被害を減らせれば世界でより強大な発言権を得る事が出来るかもしれない。


 人の多さは国の強さ。

 弱小国は一発逆転が可能だし、それでなくても食糧事情をある程度改善できる。

 より強い国はもっと強くなる。


 ……日本は?

 強い国ではあったが、国民は弱い。

 人が減れば食い物は皆に行き渡るかも……。

 それなら……。


 「……やっぱり分かんないわ」


 この想像すら合ってるか分からない。


 こんな事は考えていても仕方がない。休めるときに休まないと身が持たない。


 「……仮眠取るか」


 その前に台所で食べられそうな物を腹に詰め込んで、保存の効きそうな物もリュックに入れておいた。


 ソファーに戻り、目を閉じる。本格的に寝ようとはせず、目だけ瞑る感じで疲れを取って行った。

技名を叫ぶな、という指摘を頂きました。

まぁ、確かにそう思います。


お二人の方に指摘を受けたので、意見に従い修正したいと思います。

修正したので確認してください。

【】の中は心の声です。


また、冒頭で時間の巻き戻しを数時間前としましたが、予定が狂ってきたので、時間を巻き戻すと具体的な時間の明言を避けさせてもらいました。


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