第20話 狙い
堂本が持っていたカラーボールの数を変更しました。
リュック一杯に詰め込んでいる事にしました。これで巨人は高確率で転んでくれるはずです。
また、火炎瓶はガソリンを用いても爆発はしません。炎上はするが爆発しない事が、日本での火炎瓶の定義となっています。ちょっとは調べたので本当だと思います。不自然に思った方は調べると面白いと思います。
「何だ……?」
「えっ……?」
「はい……?」
自動応答が「転移」と言った瞬間、自分たちが居る場所が変わった。
今はどこにでもあるようなリビングに居る。
テレビの前に机があり、周りをソファーが囲んでいる。
ベランダの方には観葉植物が置いてあり、横を見れば台所と食事をとるためのテーブルとイス。
「室内には入れないんじゃ……?」
そう言うと、左腕の腕時計が喋り始めた。
いつもの無感情ともいえる自動応答の声が、俺達の耳に届いた。
「この音声は『巨人』を一体討伐した方々のみにお聞かせしています」
『黒い人物』を違い、一体という限定的な条件である事が引っかかるが自動応答さんは喋りつづける。
「なお今から話す内容を他言した場合、『選別』に参加する資格が無くなります」
言い方がやや遠回しだが、死亡する事は明白だ。
目線でメイと堂本に確認を取ると、二人とも頷いた。
「あなた方3名にはこの部屋で監禁させて頂きます」
「……監禁だと?」
俺の言葉は無視され、淡々と内容を話していく。
「時間は3時間です。この部屋から出る事は不可能ですが、部屋の中では何をしてもかまいません。残り時間が1分になり次第、こちらから呼びかけます。……それでは今から3時間、ご自由にお過ごしください」
左腕の腕時計がピロンッと音を出すと、ディスプレイに180:00という数字が表示され、1秒毎に数字が減り始めた。
それきり自動応答の声は反応を示さず、無音の空間に3人は取り残されてしまった。
「……どうする?」
「……喉渇いた」
メイはそう言うと冷蔵庫の方に向かい、無事な飲み物を探し始めた。
6時間歩き通した疲労は半端なものではなく、喉もべらぼうに乾いている。
「……何で電気点いてんだ?」
「そう言えばそうっすね」
現実世界では発電所は止まり、電気は来ていなかったはずだ。
思い返せば道路の街灯も点いていたので、鏡面世界ではその限りではない可能性がある。
『選別』のルールに電気の使用は禁じられていない。
「……もしかしたら水道も出るのか?」
『黒い人物』では電気は来たが、水道は無かった。
おかしな話だが、無いと言うなら無いのだろう。文句の一つでも言いたいが、言う相手もいないし改善もされない。
一縷の望みに託し、台所まで行って蛇口を捻ってみた。
「おお……!」
ちょろちょろと水が流れ出ており、値千金のお宝に見える。
これにいち早く反応したのはメイだ。
「お風呂だ!」
メイはリビングを飛び出してしまい、そのままお風呂を探し当てて体の汚れを洗い流そうとした。
しかし少しするとリビングに暗い顔で戻ってきて、水の飲み始めてしまった。
「……どうしたんだよ?」
「……お湯は出なかった」
「……水風呂で良いだろ。今夏なんだから」
「……シャワー浴びてくる」
リビングを出て次こそは風呂場に入って行った。
水が床に落ちる音がリビングまで届いて、シャワーを浴びているようだ。
「……アニキ、着替え持ってます?」
「……そうだな。ちょっとこの家調べるか」
俺も堂本も返り血に加え、服が若干焼けてしまい少し着ているのが心許ない。
俺達もリビングを出て、各部屋を調べていった。
30分は経ち全員水シャワーを浴びると、リビングに集合した。
この家にあった服に着替えてさっぱりしている。
コの字型に組まれているソファーに座って、向かい合わせで作戦会議に移っていく。
余談だがトイレも水が流れており、ウンコ問題は解決されている。
期待していた変態紳士諸君は済まない。排泄プレイは無い。
「思ったより親切なルールだったね。もう一体巨人が来たときは死ぬかと思ったけど」
「あれはヤバかったっす」
突然立ち止まる事を許されず、家の中にも入れないルールを押しつけといてこの豪華待遇。
というより、『選別』の理念に遠ざかってないか。
「おかしくないか?人口を半分にするなら、転移なんて言うシステムはむしろ邪魔だろ。俺達が完全に有利だ」
「完全って事は無いでしょ。この腕時計のせいでどんな目に会ったか」
メイは忌々しげに腕時計を睨みつけ、軽く叩いている。
「でも確かに俺達をあそこで逃がさなかったら、かなりの確率で死んでたんじゃないっすか?有利過ぎるとは言いませんが、親切過ぎません?」
「……むぅ。まぁ、そうかも……」
メイは顎に手を当てて、唸って何かを考えている。
「問題は多いな。俺達がせっかく一体倒したのに、すぐさま巨人が補充された事だ。今も新藤たちは3体の巨人を相手にしている」
「あいつ死んだんじゃないっすか?」
「可能性はあるな」
圧倒的な防御力を持っているが、巨人を突破する力は無い。
あの後の立ちまわり次第だ。無駄に足が速いみたいだから、逃げれば何とかなるかもしれない。
あいつが居れば新藤に巨人が集中している間に、俺達が殺せばいい。
それだけの可能性が新藤にはあった。むしろそれが本来の『服』の使い方だろう。
「ちょい待ち。分かったかも」
何か悩んでいたメイが神妙な面持ちで発現する。
お茶らけてはおらず、真面目な雰囲気だ。
「何が分かった」
「私たちが転移させられた理由」
「マジっすか」
メイはテーブルに置かれていたコップを取って、水を少し飲んだ後自分の考えを語り始めた。
「私達に巨人が殲滅させられるのを恐れたんだよ。きっと」
「何でそうなる?」
巨人は殺しはしたが、辛勝に近い。
何かが狂った瞬間誰か死んでいてもおかしくなかったはずだ。俺達を恐れる要素はそこまでないと思う。
「実際は私達は苦戦したよ。でもこの世界のどこかには力を持って圧倒的に巨人に勝つ人が居るかもしれない」
かなり想像しにくいが、圧倒的とはいかずとも勝てる奴位なら居るだろう。
堂本でさえ巨人の腕を一本切り落としている。剣の達人が『刃』を持っていたら、巨人を殺すのも簡単かもしれない。
「そうなった時、その人たちはどう行動するかな?」
俺と堂本はしばし考え、そんな強かったらどうするか想像してみた。
巨人を瞬殺できて、尚且つ巨人は一定時間ごとに出てくる。数が揃うと面倒だ。
「……安全を確保するため巨人を皆殺しにする?」
恐る恐るメイに答えを言ってみる。
堂本もメイを見てどうなのか気になっている。
「たぶんね。そうなると困るのは国連だ。人口を半分にするつもりなのに、そいつらのせいで妨害されてしまう」
「確かに……」
そいつに邪魔されれば進行が滞り、最悪『巨人』が全滅する可能性すらある。
メイはまだ続きを述べるため、口を動かし続けた。
「……だから殲滅させないように、3時間監禁したんだ」
「……つまりどういうことっすか?」
「簡単だよ」
メイはまた水を飲んで、それから考えを発表した。
テーブルにコップを置く音が嫌に響く。
「―――力が無い人を殺すためだよ」
その言葉を聞いて、自分で考えをまとめる為少し黙りこむ。
水を飲んだりして、落ち着いたときに確認を取った。
「つまり『巨人』は今まで運で生き残った奴らを効率的に処理したいと?」
「そうじゃない?殲滅できる可能性がある人達を監禁して、その間にあの人達みたいに弱い人を殺す。そりゃ、力があっても勝てないかもしれないけど、力が無ければ絶対死ぬ。これだけは確定だよ」
「……確かにそうっすね」
巨人を倒せる可能性がある俺達を排除して、その間に力の無い人間たちを巨人が狩っていく。
3時間あればかなり殺せるのではないだろうか?『耳』があったからこそ、この6時間はある程度危険を回避できていた。あの巨体だから歩くだけでも大きな音が出ていると思ったが、予想に反してそういう事は無かった。巨人は裸足だったし、歩いている間はかなり慎重に歩いているように感じた。足音を悟られないように、俺達を探して居た筈だ。今は俺が監禁され、あの連中に『目』『耳』『鼻』『地図』を持っている奴はいない。動き続けなくてはならず、そしてどこに巨人が居るかもわからない。6時間歩きさらに俺達が戻るまでの3時間、一回も巨人から見つからずに逃げ切る事が出来るだろうか?
ある程度の考えの末、たどり着いた結論を口に出した。
「……あいつらはもうダメだな」
俺の言葉にメイも堂本も驚いておらず、近い考えになったのだろう。
「……新藤さんが守ってれば話は変わるかもね」
「あいつも生きてるんすかねぇ……」
堂本の声はどことなく力の無い物だった。
話がひと段落したところで、疑問に思っていた事を堂本に尋ねた。
「お前、何でローション持ってきたの?どういう思考回路だよ」
命を懸けたゲームをするのに、ローションを持ってこようという考えが訳分からん。
メイも同じく思っていたのか、少し興味ありげな顔をして堂本を見つめた。
堂本がふざけて持ってきたのかと思えば、割と真面目な理由があったようだ。
「『黒い人物』の時に追いかけられた事あったじゃないっすか」
ちょっと記憶を整理すると、あまりよくない思い出が発掘された。
「あったな。十字路で挟まれたやつ」
十字路の4方向を完璧に抑えられ、逃げる事を余儀なくされた事があった。
4体を撃破した後も、新たに2体発生してそれなりに修羅場であった。
「あの時あいつら転んだら逃げれるのに、って思ったんで。昨日はずっと中身詰め替える作業してたッす」
あんな状況になっても逃げれるように、ローションを持って来た訳か。
俺もメイも納得してソファーに深く体を沈め、一息つく。
腕時計を見れば、監禁時間はまだまだある。
「堂本、まだローションあるのか?」
「もう無いっすよ。こんなに早く使うなんて思ってなかったっす。それに『巨人』だなんて知らなかったですし」
「だよなぁ」
あの時は必死こいて全部のカラーボールを放り投げていたはずだ。
リュックをひっくり返す勢いで投げていたので、期待はしていなかった。
しかし、ローションでコケさせるのは割合使える手だ。
火炎瓶ももう無いが、ローションだけでもあれば有利に事が運ぶ可能性が高い。
するとメイが代案を提供してくれた。
「別に油で良いでしょ。何でローション?」
「……そうだね」
「……そうっすね」
堂本は目から鱗みたいな表情になっていて、まったく思いついていなかったみたいだ。
あえてローションにしたんじゃなくて、ローションしかなかったのかよ。
台所に行って油を探すと、新品が一本と使い古しが一本残っていた。
新しいのは1Lで、古いのは500mL位入っていた。
2人が待つソファーへと戻り、戦果を見せた。
「あとは火炎瓶の代わりが欲しいね」
「ガソリンも瓶も無いんだよな……」
火炎瓶が3本しかなかったのは重いと言うのもあるが、単純に瓶の本数が少ないというのもあった。スーパーに行って中身を捨てればいいが、悪い気がする。さっきも言ったが普通に重いので、俺が2本持ってメイが1本という事で落ち着いていた。
新しく油でも作れるのかと思ったが、この家に瓶が無い。それ以前に火炎瓶を作る事すらできなかった。
「スプレーとかあれば良いんじゃないっすか?」
「「スプレー??」」
俺とメイが素っ頓狂な声を上げた。
「火にスプレーぶっかけると火炎放射みたいになりません?あんな感じで」
「……それだな。火気厳禁のスプレーを探すか」
「いいね、それやろうよ」
3人で手分けして家の中を捜索した。
この家はおそらくマンションで、2階程度の位置に居る。それでも割合部屋の数が多く、リビングを除くと他に4つも部屋があった。4人家族のようで、それぞれに生活感が溢れ綺麗に整っていた。俺が入った部屋は男の私室だった。勉強机に、ちょっとしたベット。几帳面にそろえられており、およそ男の部屋とは思えないほど整頓された部屋だった。白黒で統一された家具によって、シックな印象を受ける。箪笥を開ければたくさんの洋服に、部活で使うようなスポーツ用の衣服もある。さらに物色していると、整髪剤や消臭剤などのスプレーを見つけてリビングに戻った。
扉を抜けてリビングに入ると先に二人も戻っていて、テーブルの上に缶がごろごろ転がっていた。
「結構あったな」
「女の子の部屋のが凄かったよ。髪整える奴でびっしり」
「かなり使えそうだな。10本はありそうだ」
「火炎放射し放題っすね」
堂本もちゃっかりライターを何処からか持って来ており、手の中で弄っていた。
しかし俺の考えでは、火炎放射では効果が薄いと思う。
「これは爆弾として使う」
「どうやって?」
「刃物で穴を開ければガスが勝手に出るだろ。あらかじめ設置しておいたこいつらを火で爆破する」
「ライター放り投げても火は点かないんじゃない?」
堂本に振り返って確認を取った。
「ライター持ってるならどこかにタバコあったろ?」
「あーと、ありましたよ。カートンで」
メイに向き直って作戦を伝えた。
「タバコの表面温度は相当高い。着火したタバコをガスが充満した所に投げ込んで、巨人ごと爆破する」
「なーる」
インスタントのパスタの素があったので、麺をゆでて皆で食べ始めた。カセットコンロのガス缶も回収して、爆弾として使わせてもらう事にした。
すでに午前2時。監禁から一時間が経過し、あと2時間でデスゲームに放り出されてしまう。
麺を咀嚼しながら俺の問題点を指摘した。
「ナイフじゃ巨人相手だときついんだけど……」
「私は靴だけど……」
「ボウガン撃てよ」
「あと20本しかないけど良いの?」
「……節約で」
流石に動きながら、巨人の頭に矢を命中させろというのは酷だ。
むきになって乱発されて矢が無くなる方が困る。
転移条件が何なのか知らないが、多分矢はすぐには回収できない。撃ち尽くしたらメイは『靴』しかなくなる。それだけは避けたい。けち臭いと思うかもしれないが、矢が補充できない以上あまり贅沢は言えない。
ご飯を全部食べてベランダに向かう。
開かないかもと思ったが、ガラス窓はちゃんと開きベランダに出る事が出来た。
ただ、ベランダより外に手を出そうとしても、透明な壁に阻まれてしまい敷地内からは出れなかった。
伸縮可能な洗濯竿を手に取って、リビングに戻った。
2人は何事か振り返ったが、そのまま台所に向かって包丁を1本持ってきた。
リュックに入っていた工具とワイヤーを取り出して準備完了。
「何やってんの?」
「即席の槍を作るんだよ」
サバイバルナイフ1本と包丁1本を洗濯竿に括り付けていく。
絶対解けないように何重にも結んで、完全に固定した事を確認して新しい武器が完成した。
2本の刃が側面から伸びた変な形だが、片方だけだと何か嫌だったので2本使った。
洗濯竿をできるだけ縮めてると、だいたい2m無い程度。俺の身長と同じくらいになった。
「これならやれそうだ」
部屋の中で流石に振り回す事は出来ないが、手首でカクカク動かし重さを確認していく。槍は使った事は無いが遠くからチクチクやるだけでも良い筈だ。ナイフと包丁の刃の長さはだいたい15cmくらい。刃が全部入り込めば巨人と言えどもかなりのダメージとなるはずだ。巨人に捕まれる可能性も高いが、その時は放棄してもう一本のナイフを使うしかない。力比べで勝てるような相手じゃない。奪われるようなら奪わせればいい。一番いけないのは武器に固執するあまり、その場に立ち止り腕時計が鳴ってしまう事だろう。
作戦としては正面は避け、側面から突いていく。単純だがこれが一番のはずだ。
「私も欲しいけど、邪魔になるかな」
「やめとけ。ボウガンだけでもかさんでるのに」
「そうだね。ボウガンで良いよ」
堂本にもこの槍を持たせたが、『刃』の範疇では無かった。先端に着いたナイフや包丁の切れ味は変わらず、槍の重さも感覚的に日本刀より重いらしい。理由は分からないが、本来刃を持つものでないと『刃』が発動してくれていない。もしかしたら『棒』だったら変わった可能性もあるが、確かめる方法は無い。
全員風呂に入り、ご飯も食べて残り監禁時間は2時間無い程度。やる事も無いとは言わないが、一番やるべき事は休息のはずだ。夜とは言え、日本の夏の屋外を6時間歩いた事を考慮すれば、休まざるを得ない。それに、また外に出れば寝る事は叶わず、動き続ける事になる。少しでも疲れを取り、次の行動を起こすため、各自適当な部屋に入り寝る事にした。
さっき入った男の部屋で寝る事1時間半程度。午前3時半。
部屋の中は明かりが無く、外もまだ暗いため闇が支配している。そろそろ時間になるとメイが部屋の中に入り、お母さんかと思うほどのお節介さを見せて、リビングに戻った。
全員で柔軟体操をしながら、体調を戻していく。1時間半とは言え歩きまくった疲れはかなりとる事が出来た。乳酸が溜まったはずの筋肉を揉み解したり、伸ばしたりしてコンディションを戻していく。リュックにはスプレーと、水道水を入れた500mLペットボトルを2,3本入れている。準備していた水は全て飲んでしまい、かなり困っていた。転移条件を満たせば水が手に入るのはとても重要だ。
「取り敢えずは様子を見て、巨人から離れるぞ」
「うん」
「ウッス」
全員で前屈運動をしながら、間延びした声で確認を取っていく。
「俺達が行く頃には全部で4体の巨人が居るはずだ。どれかを倒して転移条件を満たそう」
積極的に仕掛けては行くが、開始早々狩りに行く必要は無い。『巨人』はおそらく24時間以内に終わる。もう少し経てばゲーム開始から9時間が経過する。転移条件を満たすタイミングが重要になる。巨人を倒すのは簡単じゃ事が無い。戦う回数を少なくして、最大の利益を得たい。
「3時間近くは様子を見るか?」
「いや、追加される前には倒した方が良いんじゃない。さっきみたいに近くに降ってこられたら対応に困るよ。頃合いを見て浮いた一体を倒していこう」
「そうするか」
つまり巨人を倒すのは午前7時前。欲を言うなら午前6時~6時半の間で殺したい。
「手順はさっきとほとんど同じで行くぞ。転ばせて燃やす」
「オッケー」
「了解っす」
1.5Lのサラダ油を道路に撒いて巨人を転倒させる。スプレー缶はその前に設置しておいてガスを充満させておく。あとはカッコよくタバコを放り投げれば転移条件を満たせるよね?条件知らんけど。
「全員何らかの攻撃を加えるか。条件が分からん以上、さっきと同じような行動をした方が良い。一人だけ取り残されたら、それこそ死ぬからな」
細々とした確認を取りながら、それから30分近く時間が経つと腕時計から音声が流れた。
「転移、1分前です。準備してください」
全員武器とリュックを背負い、完全武装をしていく。
行きたくなくてもトイレで汚物をひねり出しておいたので、当分はウンコ問題に悩まなくても良い。
「作戦が失敗しても焦んなよ。ちゃんと対応すれば、勝機はあるからな」
「そっちこそ」
2人して野球帽を被って、黒沢夫婦お二人の加護を貰う。暗い時に帽子を被るのは変な感じだが、視界が狭まってその分集中しているような感じがする。
堂本もこの家から頂戴したタオルを巻いて、もうガテン系の職人にしか見えない。
1分が経過して再び激戦の地へと戻るゴングが鳴った。
「それでは転移します」
声と同時に3人の姿は部屋から消え去り、主のいなくなった部屋は勝手に暗くなった。
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