雪の涙
泣かないで?
泣いてないよ
じゃあそんな悲しそうな顔をしないで
してないよ
してる
してない
ねぇ、雪?
なに?
好きだよ
私は大嫌い
どうして?
さぁ?
雪の笑った顔が好き
秋晴の泣いた顔が好き
ねぇ
うん
別れたくないよ
私は別れたい
嫌だ
秋晴、さようならだよ
俺たちはいつだって
話が合わなくて
それでも好き合ってた
はずなのに
彼女は別れたいと言って
大粒の涙をこぼした
その涙のわけを俺は
勘違いしていた
彼女は死んでしまう前に
俺を傷つけたくなくて
俺と別れたかったのだと
突然連絡が来て
彼女の母親から
亡くなったという話のあとに
教えてもらった
その先はよく覚えていない
電話を切ると足に力が入らなくなった
その場に崩れ落ちて
流れ落ちる涙を
拭うことすらできなかった
それから何年か経って
俺は恋人ができました
雪のように儚くて
でもとても強い子
まるで、
儚い笑顔を見せる君のような子
好きだよ
雪
今だって
(笑った顔の方が好きだよ、秋晴)