公爵令嬢レイーシャの決意
「すまない。レイーシャ。君との婚約を解消させて欲しい。」
時折隣の女性に視線を向けながら、そんなことを言ったのは私の婚約者である第二王子だった。
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私、レイーシャは名門の公爵家に生を受けた。
銀色の髪に群青のような瞳で公爵夫人は自分と同じ色彩だと喜び、一方で公爵は私に関心を持たなかった。
おそらく、自分の色彩を引き継がなかったからだ。
だからだろう、父は己の妻に全ての世話を任せた。
幼い頃の私は肉親であると言う父の関心を引きたくて、努力を重ねた。
その結果、撒き散らされていた私の悪評も払拭していき、14歳になったある日、自国の王子と婚約することとなった。
あとで聞いた話だが、父が王家に婚約を打診したのだという。
うれしかった。
完全な政略結婚で、父が娘の幸せを願ってのものではないとわかっていても。
そう思わずにはいられなかった。
だから、舞踏会の終盤にいきなり婚約の解消を申し出されて、思わず立ちすくんでしまった。
王族からの提案はただの提案ではない。
実質的な命令である。
私は恐怖した。
この婚約がなくなれば、父からの関心は確実に消えることだろう。
いや、消えるだけならまだいい。
私の存在さえ許されなくなるかもしれない。
そう思うと、王子からの命令に何も答えられなかった。
怪訝そうに王子が私を見つめ、もう一度告げるために躊躇いがちに口を開いた瞬間、後ろから優雅でありながら、強い声が響いた。
「婚約を破棄したいとは一体どういうことでしょうか。第二王子殿下。」と。
振り向いたら、予想通りの人がいた。
誰よりも優しく、誰よりも優雅で、なんでも知っていて、私が、一番尊敬できる人。
「お義母さま!」
思わず安心した声音が漏れて、
今までの絶望が嘘みたいに晴れていく。
あぁ、お義母さまが来てくださった。
助けに来てくださった。
そして、自分と同じ色彩を持つ公爵夫人が第二王子を言い負かしているのを見ながら、
私は
本当に凛としていてカッコいい。
一つ一つの言葉選びは美しくしく、優しいのに、きっちりと締め上げて、絡め取っていくの素敵すぎる。普段の穏やかな姿も素敵だけど、つのるお義母さまも素敵!こんなお義母さまを間近で見れるなんて!王子殿下ありがとうございます。舞踏会に来た時は王子の隣にいらっしゃる正妻にまた嫌がらせされるのだろうと思って少し憂鬱だったのにこんなお義母さまを見られたので嫌な舞踏会に来た甲斐があった。キャァーーーー!お義母さまファイト。キャァーーーー!
と興奮していて、正気に戻ったのは舞踏会を後にした帰りの馬車の中だった。
どうやらお義母さまは相手の瑕疵にして婚約破棄を行なったそうだ。
婚約解消でなく婚約破棄!もちろんおまえ(王子)の瑕疵な!いいよな!当たり前だよな!アアァン?
というようなことを言ったらしい。
本当に頼もしいお義母様である。もう本当に素敵。
さらに、王家に借しをつくれたので、公爵との離縁も申請し、受理された。
前々から離縁を狙っていたらしく、公爵が王の外交に同行しているのでちょうど良かったらしい。
様々な事業を立ち上げていて、資金は潤沢。
立ち上げた事業の中には海外で展開しているものもあるらしく、今後はその国に渡るらしい。
私も一緒に来ないかと言われたので、即答した。
即答したのは、お義母さまのかっこいい勇姿をみて興奮していたのももちろんあるが、父への失望も大きかった。
私に関する悪評はどうやら父が撒き散らしていたらしい。
なぜ、そんなことをしたのかはわからない。
でも、もうどうでもいいのだ。
公爵令嬢の身分なんていらないし、父の関心なんてもう言うまでもない。
幼い頃から常に寄り添い、時には諭してくれたお義母さまがいる。
お義母さまがいるから、身分なんてなくてもきっとやっていける。
だから、幼い思いと決別した。
きっともう戻れないし、戻りたいとも思わないだろう。
そんな決意を祝福するように馬車の窓から月の光が私たちを照らした。




