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ギャルゲーの主人公に転生したので悪役令嬢の補佐してみた  作者: tanahiro2010


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最終決戦 終


 黒い魔力が、さらに膨れ上がった。


 僕は、全身に創造神の力を巡らせる。これが、最後だ。彼らに――全力で、攻撃させる。そして、僕は――それを受ける。防がない。避けない。ただ、受け入れる。


 それが――僕の望む終わり方だから。


「来てくれ――」


 僕は言った。


「全力で。本気で」


 アリシアが、涙を流しながら杖を構える。エリカが、剣を握りしめる。セレスティアが、魔法書を開く。リディアが、風を纏う。ダミアンが、雷を放つ。シルヴィアが、花の精霊を呼ぶ。オズワルドが、大地を揺らす。


 みんなが――僕に向かって、構えた。


「結城さん――」


 アリシアが震える声で呼びかける。


「本当に――これでいいのですか」


「ああ」


 僕は答える。


「これが――僕の選んだ道だ」


 その言葉に、アリシアの目から涙が溢れた。でも――彼女は、杖を下ろさなかった。


「分かりました――」


 アリシアが言う。


「ならば――わたくしが、あなたを終わらせます」


 その声が、決意に満ちていた。苦しみに満ちていた。でも――揺るがなかった。


「ありがとう」


 僕は、小さく笑った。


「アリシア――君に倒されるなら、本望だ」


 その言葉が、最後の言葉になるかもしれない。でも――僕は、それでよかった。


「行きます――!」


 アリシアが叫んだ。


 光が放たれる。眩しい光。アリシアの想いが込められた、光の精霊ルミナスの力。それが、まっすぐに僕に向かってくる。


 同時に――他のみんなも、攻撃を放った。


 エリカの炎。セレスティアの氷。リディアの風。ダミアンの雷。シルヴィアの花。オズワルドの大地。


 すべての攻撃が――僕に向かって、迫ってくる。


 僕は――黒い障壁を、解いた。


 防御を、捨てた。


 ただ――そこに立っていた。


「これで――いい」


 僕は呟いた。


 光が、僕を包み込む。炎が、僕を焼く。氷が、僕を刺す。風が、僕を切り裂く。雷が、僕を貫く。花が、僕を縛る。大地が、僕を砕く。


 痛い――


 すごく、痛い。


 体が悲鳴を上げている。魔力が乱れている。創造神の力が、制御できなくなっている。でも――


「これが――」


 僕は呟いた。


「これが、僕の望んだ――終わりだ」


 意識が、遠のいていく。視界が、霞んでいく。体が、動かなくなっていく。


 そして――僕は、倒れた。


 地面に。冷たい地面に。もう、立ち上がることはできなかった。


   *


 視界が、ぼやけている。


 でも――聞こえる。誰かの声が。泣いている声が。


「結城さん――!」


 アリシアの声だ。彼女が、僕のそばに駆け寄ってくる。杖を投げ捨てて、膝をついて。


「どうして――どうして――!」


 彼女が叫んでいる。涙を流しながら。僕の体を抱き起こしながら。


「蒼――!」


 エリカの声も聞こえる。


「蒼さん――!」


 セレスティアの声も。


「結城さん――!」


 リディアの声も。


 みんなが、僕の周りに集まってくる。みんなが、泣いている。僕のために。僕を殺した――いや、僕を救おうとして、結果的に僕を倒した自分たちを責めながら。


「ごめん――」


 僕は、かすれた声で言った。


「これが――僕の、選んだ――」


 言葉が、続かない。血が、口から溢れる。体が、どんどん冷たくなっていく。


「話さないでください――!」


 アリシアが叫ぶ。


「助けます――今すぐ、治療を――!」


「無理だよ――」


 僕は、小さく笑った。


「もう――終わりなんだ」


 創造神の力が、暴走している。僕の体を、内側から蝕んでいる。もう、助からない。これは――僕が望んだことだ。


「結城さん――」


 アリシアが、僕の手を握る。温かい手。震えている手。


「どうして――どうして、こんなことを――」


「君たちに――」


 僕は言った。


「倒されたかったんだ」


 その言葉に、アリシアの顔が歪む。


「そんな――」


「悪役として――」


 僕は続ける。


「君たちのような――善人に、倒されて――」


 息が、苦しい。


「それが――僕の、望んだ――結末――」


 アリシアが、首を横に振る。涙が、僕の顔に落ちてくる。


「違います――そんなの、間違ってます――!」


「でも――」


 僕は、小さく笑った。


「もう――遅いよ」


 体が、光り始めた。


 創造神の力が――僕を、消そうとしている。契約者である僕が死ねば、その力も消える。そういう――契約だった。


「待って――!」


 アリシアが叫ぶ。


「まだ――まだ、話したいことが――!」


「ごめん――」


 僕は、もう一度謝った。


「アリシア――君を、苦しめて――」


「違います――!」


 アリシアが泣き叫ぶ。


「あなたは――わたくしを、苦しめてなんか――!」


 でも、僕の体は――もう、半分消えかけていた。


 光の粒子になって、消えていく。これが――本当の、終わりだ。


「みんな――」


 僕は、最後の力を振り絞って言った。


「ありがとう――」


 エリカが、泣きながら叫ぶ。


「ふざけんな――! あんた、死ぬな――!」


 セレスティアも、涙を流している。


「蒼さん――お願い――!」


 リディアも、王女らしくない顔で泣いている。


「結城さん――行かないで――!」


 ダミアンが、拳を地面に叩きつける。


「結城――お前――!」


 シルヴィアが、膝をついている。


「結城さん――」


 オズワルドが、杖を握りしめている。


「結城蒼――」


 みんなが、僕を呼んでいる。でも――もう、届かない。


「ごめん――」


 僕は、もう一度謝った。


「これが――僕の――」


 言葉が、途切れる。


 視界が、真っ白になる。


 もう、何も見えない。何も聞こえない。


 ただ――温かさだけが、残っていた。


 アリシアの手の温もり。みんなの声の温もり。それが――最後に感じたもの。


「ありがとう――」


 僕は、心の中で呟いた。


「さようなら――」


 そして――僕の意識は、闇に沈んだ。


   *


 森に、静寂が戻った。


 そこには――もう、結城蒼の姿はなかった。


 ただ、アリシアが膝をついて、何もない空間を抱きしめていた。涙を流しながら。止まらない涙を流しながら。


「結城さん――」


 彼女が、名前を呼ぶ。でも、もう答えはない。


「結城さん――!」


 もう一度、叫ぶ。でも、やはり答えはない。


 彼は――消えた。


 光の粒子となって、消えてしまった。


「嘘――」


 アリシアが呟く。


「嘘だと――言ってください――」


 でも、現実は変わらない。


 結城蒼は――死んだ。


 自ら望んで、死を選んだ。


「わたくしは――」


 アリシアが、震える声で言う。


「わたくしは――彼を、救えなかった――」


 その言葉が、森に響く。


 エリカが、地面に座り込んでいる。剣を握りしめたまま、動かない。


 セレスティアが、魔法書を抱きしめて泣いている。


 リディアが、空を見上げている。涙を流しながら。


 ダミアンが、拳を震わせている。


 シルヴィアが、花の精霊に話しかけている。「彼を――連れ戻して」と。


 オズワルドが、杖を支えに立っている。ただ、静かに。


 みんなが――絶望に沈んでいた。


 救おうとした少年は、救われることを拒んだ。


 愛そうとした少年は、愛されることを信じなかった。


 そして――死んだ。


 自ら望んで、消えていった。


 残されたのは――彼を救えなかった者たちの、後悔だけだった。


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