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ギャルゲーの主人公に転生したので悪役令嬢の補佐してみた  作者: tanahiro2010


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最終決戦 中


 静寂が、森を支配していた。


 アリシアが膝をついている。エリカ、セレスティア、リディア、ダミアン、シルヴィア、オズワルド――みんな、倒れている。誰も動けない。誰も立てない。ただ、荒い息遣いだけが聞こえていた。


 僕は――その光景を見ていた。


 倒れた仲間たち。傷ついた友人たち。僕のために戦ってくれた人たち。それを見て――胸が、痛かった。心が、軋んだ。これは、罪悪感? それとも――


「これで、いい――」


 僕は呟いた。声が震えている。なぜだろう。心を閉ざしたはずなのに。もう何も感じないようにしたはずなのに。


 みんなを傷つけた。みんなを苦しめた。世界を脅かす存在になった。悪役として――これで、十分な罪を犯した。あとは――誰かに倒されて、死ぬだけだ。


「そうだ――これが、僕の望んだものだ」


 僕は自分に言い聞かせる。意味のある死。美しい終わり。悪役として断罪され、誰かの手によって終わらせてもらう。それが――僕の唯一の願いだったはずだ。


 でも――その言葉が、空虚に響く。


 本当に、これでよかったのか? みんなを傷つけて、倒されて、死んで――それで、本当に満足できるのか?


「結城さん――」


 アリシアの声が聞こえた。彼女が、震えながら立ち上がろうとしている。杖を支えに、必死に。体は限界を超えているはずなのに。それでも――立とうとしている。


「アリシア――」


 僕は、彼女を見た。


「もう、やめてくれ」


「やめません――」


 アリシアが答える。その声は弱々しかったが――決意だけは、揺るがなかった。


「わたくしは――諦めません」


 彼女が、ついに立ち上がった。ふらふらと。今にも倒れそうなほど不安定に。でも――彼女は立っていた。


「どうして――」


 僕は問う。


「どうして、そこまでするんだい」


「あなたを――」


 アリシアが震える声で言う。


「あなたを、救いたいからです」


 その言葉が、胸に刺さる。痛い。苦しい。なぜ、そこまでして――


「蒼――」


 その時、別の声が聞こえた。エリカだ。彼女も、立ち上がろうとしている。血を流しながら、痛みに耐えながら。


「あんた――まだ、分かんないの?」


 エリカが剣を杖代わりに、体を起こす。


「あたしたち――あんたを、見捨てないって言ってるのよ」


「エリカ――」


 僕は、彼女を見た。どうして。どうして、まだ立ち上がろうとするんだ。


「蒼さん――」


 セレスティアの声も聞こえた。彼女も、震えながら立ち上がる。眼鏡が割れている。傷だらけだ。それでも――


「わたしは――あなたに、救われました」


 セレスティアが涙を流しながら言う。


「だから今度は――わたしが、あなたを救います」


「セレスティア――」


 僕の声が震える。やめてくれ。そんな目で見ないでくれ。そんな言葉を言わないでくれ。


「結城さん――」


 リディアも立ち上がった。王女としての誇り高い姿勢で。傷ついても、疲れ果てても――その目には、強い意志が宿っていた。


「わたくしは――あなたを諦めません」


 リディアが言う。


「あなたは、特別な人です。わたくしにとって――世界にとって」


「リディア――」


 僕は、もう何も言えなかった。みんなが、立ち上がっていく。ダミアンも。シルヴィアも。オズワルドも。傷ついた体で、限界を超えた体で――それでも、立ち上がっていく。


「どうして――」


 僕は呟いた。


「どうして、みんな――」


「決まってるだろう」


 ダミアンが答える。


「お前を――仲間だと思ってるからだ」


 その言葉に、僕の心が――大きく揺れた。


   *


 仲間――


 その言葉が、心に響く。僕には、そんな資格があるのか? 誰かの仲間になれるのか? 誰かに必要とされるのか?


「違う――」


 僕は首を横に振った。


「僕は――そんな価値のある人間じゃない」


「誰が決めたの?」


 エリカが問う。


「それ、あんたが勝手に決めてるだけでしょ」


「僕は――」


「あなたは、わたしたちを救いました」


 セレスティアが続ける。


「それは事実です。否定できない事実です」


「でも、それは――」


「自己満足だって言うつもり?」


 リディアが遮る。


「では、わたくしたちの感謝も、自己満足だとおっしゃるのですか?」


 その言葉に、僕は答えられなかった。


「結城さん――」


 アリシアが一歩、また一歩と近づいてくる。ふらつきながら、でも確実に。


「あなたがいなければ――今のわたくしは、いません」


 彼女が言う。


「悪役令嬢として生きることを――わたくしは選んでいました。誰も信じず、誰にも心を開かず」


 アリシアの目から、涙が溢れる。


「でも、あなたは――わたくしを変えてくれました」


「それは――」


 僕は言いかける。でも、アリシアが続ける。


「正しい道を教えてくれました。人を信じることを、教えてくれました」


 彼女の声が震える。


「あなたは――わたくしの光でした」


 その言葉が、胸に刺さる。痛い。苦しい。でも――


「僕は――」


 僕は呟く。


「僕は、そんな立派な人間じゃない」


「立派である必要はありません」


 アリシアが答える。


「ただ――あなたでいてくれればいいんです」


 その言葉に、僕の心が――


「結城蒼――」


 オズワルドの声が響く。学院長が、杖を支えに立ち上がっていた。


「お前は、間違っている」


「学院長――」


「自分を愛せない者は、他人を本当に愛することはできない」


 オズワルドが言う。


「お前は、みんなを救おうとした。でも――それは本当の救済ではなかった」


 その言葉に、僕は息を呑む。


「なぜなら、お前自身が救われていなかったからだ」


 オズワルドが続ける。


「自分を許せない者が、どうして他人を許せるのか」


「それは――」


「お前に必要なのは――」


 オズワルドが杖を突く。


「自分を受け入れることだ。自分の弱さを。自分の孤独を。そして――」


 彼の目が、優しく僕を見る。


「他人からの愛を、受け入れることだ」


 その言葉が、心の奥底に届いた。受け入れる――そんなことが、僕にできるのか?


「結城さん――」


 アリシアが、すぐ目の前まで来ていた。彼女が手を伸ばす。震える手。傷ついた手。それでも――優しく、僕に向けて。


「わたくしの手を――取ってください」


 その手を見て、僕は――迷った。


 取れば――きっと、何かが変わる。受け入れれば――きっと、戻れなくなる。でも――


「取れない――」


 僕は首を横に振った。


「僕には、その資格がない」


「資格なんて――」


 アリシアが涙を流しながら言う。


「資格なんて、必要ありません。わたくしが――あなたを愛しているんです」


 その言葉が、心を揺さぶる。でも――


「愛されるに値しない――」


 僕は呟いた。


「僕は――誰かに愛されるような人間じゃない」


「違います!」


 アリシアが叫んだ。その声は、森中に響いた。


「あなたは――愛されるに値する人です。優しくて、賢くて、誰よりも人を想っている人です」


「それは――幻想だ」


 僕は答える。


「君が勝手に僕を美化しているだけだ」


「では――」


 アリシアが一歩、さらに近づく。


「この気持ちも、幻想だとおっしゃるのですか?」


 彼女が、僕の手を掴んだ。温かい手。震えている手。でも――確かに、そこにある手。


「アリシア――」


「わたくしは――あなたを愛しています」


 アリシアがはっきりと言った。


「この想いは、嘘ではありません。幻想でもありません」


 その目が、まっすぐに僕を見ていた。嘘のない目。純粋な目。そこには――本物の愛があった。


「だから――」


 アリシアが涙を流しながら言う。


「だから、お願いです。生きてください」


 その言葉が――僕の心を、大きく揺さぶった。


 生きる――


 そんな選択肢が、僕にあるのか? 死ぬことしか考えてこなかった僕に。終わることだけを望んできた僕に。


「僕は――」


 僕の声が震える。心が、揺れている。今まで固く閉ざしていた心が――少しずつ、開かれようとしている。


 でも――


「ごめん」


 僕は、アリシアの手を振り払った。


「僕は――それを受け入れられない」


 その瞬間、アリシアの顔が――絶望に染まった。涙が溢れる。止まらない涙。それを見て、僕の心は――


 痛かった。


 こんなに痛いなら――いっそ、感情なんてなければよかった。こんなに苦しいなら――いっそ、心なんて捨ててしまえばよかった。


 でも――僕には、分かっている。


 この痛みも、この苦しみも――僕が生きている証だ。僕に心がある証だ。だから――だからこそ、終わらせなければならない。この痛みから、この苦しみから、解放されなければならない。


「さあ――」


 僕は、黒い魔力を再び膨れ上がらせた。


「僕を倒してくれ」


 その言葉に、みんなが顔を上げる。


「これが――僕の最後の願いだ」


 僕は続ける。


「悪役として、世界を脅かす存在として――誰かに倒されて、死ぬ。それが、僕が望んだ終わり方なんだ」


「結城さん――」


 アリシアが震える声で呼びかける。


「どうして――そこまで、死にたいのですか」


「生きる意味が――ないからだよ」


 僕は答える。


「誰かに必要とされることも、誰かに愛されることも――僕には信じられない。なら、せめて意味のある死を。美しい終わりを」


 その言葉が、静かに森に響く。


「だから――」


 僕は全員を見渡した。


「お願いだ。僕を――倒してくれ」


 みんなが、絶望の表情を浮かべる。でも――僕は、もう止まれなかった。


 死ぬこと。それだけが――僕の唯一の救いだから。


あとがき――――

書いてるときの予想

もし読まれてたら「くどい」って言われそう

僕も言いたい


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