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ギャルゲーの主人公に転生したので悪役令嬢の補佐してみた  作者: tanahiro2010


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必死の救済

これからは毎日2話投稿で行きます……忘れない限り


 朝日が部屋に差し込んでいた。わたくしは机に向かったまま、一睡もしていなかった。目の前には何枚もの便箋が広がっている。インクで汚れた手。震える指先。でも、書き続けなければならなかった。結城さんを救うために。


 昨夜の出来事が脳裏に焼き付いていた。彼の空虚な目。彼の諦めた声。「生きる理由がありません」と言った時の、あの表情。わたくしは拳を握りしめた。絶対に諦めない。わたくしは彼にそう宣言した。だから、今すぐにでも行動しなければならない。


 一枚目の手紙は、ダミアンへ。わたくしは慎重に言葉を選びながら書いた。結城さんの状況を説明する。彼が転生者であること。断罪を望んでいたこと。そして今、死を願っていること。ダミアンなら理解してくれるはずだった。彼は結城さんの親友だ。わたくしの味方になってくれる。


 二枚目は、シルヴィアへ。彼女は生徒会の副会長として、いつもわたくしを支えてくれていた。冷静で聡明な彼女なら、何か良い案を出してくれるかもしれない。わたくしは彼女に助けを求めた。結城さんを救う方法を、一緒に考えてほしいと。


 そして――三枚目からが、最も重要な手紙だった。わたくしはペンを握る手に力を込める。エリカ・ローゼンベルク様へ。彼女は結城さんと最も長い時間を過ごした人だ。彼に救われた人だ。きっと彼女なら、結城さんの価値を知っている。


「エリカ様」


 わたくしは書き始めた。手紙の中で、わたくしは彼女に懇願した。結城さんが死を望んでいること。彼が自分の命に価値を見出せずにいること。どうか、彼に会いに来てほしい。彼に伝えてほしい。彼がどれだけ大切な存在だったかを。彼がどれだけ人を救ってきたかを。


 四枚目は、セレスティア・フォン・エスターライヒ様へ。王女である彼女は、結城さんによって心を取り戻した。彼女の笑顔を取り戻したのは、結城さんだった。わたくしは同じように手紙を書いた。結城さんの現状を説明し、助けを求める言葉を綴った。


 五枚目は、リディア・ヴァルトハイム様へ。彼女もまた、結城さんに救われた一人だ。彼が彼女の孤独を理解し、彼女に居場所を与えた。わたくしは震える手で書き続けた。どうか力を貸してください。結城さんを、救ってください。


 すべての手紙を書き終えた時、窓の外は完全に明るくなっていた。わたくしは疲労で目がかすんでいたが、それでも手を止めることはできなかった。次にやるべきことがあった。これらの手紙を、確実に届けなければならない。


 わたくしは立ち上がり、部屋を出た。まだ早朝で、廊下には誰もいない。急いで使用人の部屋に向かう。信頼できる使用人を見つけて、手紙を託した。急ぎで届けてほしいと頼む。使用人は驚いた顔をしていたが、わたくしの表情を見て何も聞かずに頷いてくれた。


 手紙を送り出した後、わたくしは生徒会室に向かった。ダミアンならもう来ているかもしれない。彼は早起きだから。案の定、生徒会室の扉を開けると、ダミアンが書類を整理していた。


「アリシア様」


 彼が振り返る。そして、わたくしの顔を見て表情を変えた。


「何があったんですか? 顔色が悪いですよ」


「ダミアン」


 わたくしは彼に近づいた。


「お話があります。結城さんのことです」


 ダミアンの表情が引き締まる。彼もまた、結城さんの変化に気づいていたのだろう。わたくしは昨夜の出来事を説明した。日記を見つけたこと。結城さんが転生者だったこと。断罪を望んでいたこと。そして今、生きることを拒んでいること。


 話し終えた時、ダミアンは深刻な顔をしていた。


「そんな――」


 彼が小さく呟く。


「蒼が、そこまで――」


「わたくしは、彼を救いたいんです」


 わたくしは真っ直ぐにダミアンを見た。


「ダミアン、力を貸してください」


 彼は少し考えてから、強く頷いた。


「当然です」


 ダミアンが言う。


「蒼は友人だ。俺も全力で協力します」


 その言葉にわたくしは安堵した。ダミアンがいてくれる。それだけで心強かった。


 その後、シルヴィアも生徒会室に来た。わたくしは彼女にも同じように説明した。シルヴィアは冷静に話を聞いていたが、その目には強い決意が宿っていた。


「分かりました」


 シルヴィアが静かに言う。


「結城さんを救うために、わたしも協力させてください」


「ありがとうございます」


 わたくしは深く頭を下げた。仲間がいる。一緒に戦ってくれる人たちがいる。それが何よりも心強かった。


「でも、アリシア様」


 シルヴィアが言う。


「結城さんは、今どうしていらっしゃるんですか?」


 その質問にわたくしは言葉に詰まった。結城さん。昨夜、部屋を出て行った彼は、今どこにいるのだろう。


「分かりません」


 わたくしは小さく答えた。


「でも――探さなければなりません」


 ダミアンが立ち上がった。


「俺が探してきます」


「わたくしも行きます」


 わたくしも立ち上がる。でもダミアンが首を振った。


「アリシア様は休んでください。一睡もしていないでしょう?」


 その言葉に、わたくしは何も言えなかった。確かに体は疲れていた。でも、結城さんを探さなければ。


「大丈夫です」


 ダミアンが優しく笑う。


「蒼を見つけたら、すぐに知らせます」


「お願いします」


 わたくしは頷いた。ダミアンが部屋を出て行く。シルヴィアがわたくしの隣に来た。


「アリシア様」


 彼女が静かに言う。


「少し休んでください。このままでは、あなたが倒れてしまいます」


「でも――」

「結城さんを救うためには、あなたが元気でいなければなりません」


 シルヴィアの言葉が正論だった。わたくしは小さく頷いた。


「分かりました」


 でも、休めるだろうか。結城さんのことを考えると、胸が苦しくて仕方がなかった。彼は今、どこで何を考えているのだろう。また一人で、死を考えているのだろうか。


 わたくしは窓の外を見た。青い空が広がっている。綺麗な空だった。でも、結城さんにはこの空がどう見えているのだろう。彼の世界は、どれだけ暗いのだろう。


「必ず救ってみせます」


 わたくしは小さく呟いた。シルヴィアがわたくしの肩に手を置く。


「一緒に、頑張りましょう」


 彼女の言葉に、わたくしは強く頷いた。そうだ。一人じゃない。ダミアンも、シルヴィアも、そしてこれから返事をくれるであろうエリカ様たちも。みんなで力を合わせれば、きっと結城さんを救える。わたくしはそう信じたかった。信じなければならなかった。なぜなら、それ以外に希望がなかったから。


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