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ギャルゲーの主人公に転生したので悪役令嬢の補佐してみた  作者: tanahiro2010


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日記の発見


 もう、限界でした。


 わたくしは――

 深夜の寮の廊下を、歩いています。


 足音を立てないように。

 誰にも見つからないように。


 向かう先は――

 結城蒼の部屋。


 心臓が、激しく鳴っています。


 これは――

 とても、とても間違った行為です。


 男性の部屋に、無断で入る。

 公爵令嬢として、あり得ない行動。


 でも――

 わたくしには、もう選択肢がありませんでした。


 結城さんの様子が、おかしすぎるのです。


 あの「もうすぐ、全部終わります」という言葉。

 あの、空っぽな笑顔。

 あの、死んだような目。


 全てが――

 わたくしの心に、不安を植え付けました。


 彼は、何を隠しているのか。

 何を、企んでいるのか。


 いいえ――

 それ以前に。


 彼は――

 生きていたいと、思っているのでしょうか。


 その疑問が――

 わたくしを、ここまで導きました。


「ここ――」


 小さく呟きます。


 結城さんの部屋の、前。


 扉に――

 手をかけます。


 鍵は――

 かかっていませんでした。


 まるで――

 誰かが来ることを、待っているかのように。


 ゆっくりと――

 扉を、開けます。


 きぃ、と小さな音がしました。


 部屋の中は――

 暗くて。


 月明かりだけが、窓から差し込んでいます。


 わたくしは――

 そっと、部屋に入りました。


 整頓された部屋。

 必要最低限のものしかない、殺風景な空間。


 机があって。

 ベッドがあって。

 本棚があって。


 それだけ。


 まるで――

 ここに住んでいる人の、人生を表しているかのような。


 何もない。

 温かみがない。

 生きている痕跡が、ない。


 わたくしは――

 胸が、苦しくなりました。


 彼は――

 こんな部屋で、一人で。


 何を考えて。

 何を想って。

 生きていたのでしょう。


 机に――

 近づきます。


 そこには――

 一冊のノートがありました。


 表紙には、何も書かれていません。


 でも――

 わたくしには、分かりました。


 これは――

 日記。


 手が、震えます。


 見てはいけない。

 これは、彼のプライベート。


 でも――

 見なければいけない。


 彼を救うために。


 わたくしは――

 意を決して、ノートを開きました。


 そこには――

 整った文字で、言葉が綴られていました。


『×月×日


 今日、アリシア・ヴァンクレールと初めて話した。


 彼女は――悪役令嬢。

 原作ゲームでは、ヒロインたちを虐げる存在。

 最後には、断罪される運命。


 完璧だ。


 僕は――彼女を悪役に育てる。

 そして、最後に断罪してもらう。


 それが――

 僕が、この世界で美しく終わる方法。』


 わたくしは――

 息が、止まりました。


 悪役令嬢。

 断罪される運命。

 美しく終わる方法。


 何を――

 言っているのでしょう。


 手が、震えます。


 でも――

 読むのを、止められません。


『×月×日


 アリシアは、予想以上に優秀だ。


 気高く。

 誇り高く。

 完璧な令嬢。


 でも――少し、冷たすぎる。


 もっと――人を踏みにじる、冷酷さが必要だ。


 そうしなければ――

 断罪される悪役には、なれない。』


 冷たい何かが――

 背筋を、伝います。


 わたくしを――

 悪役に、育てる?


 断罪される――

 悪役に?


『×月×日


 エリカ・フォン・シュタインが入学してきた。


 原作のヒロインの一人。

 明るく、正義感の強い少女。


 アリシアと――対立させなければ。


 そうすれば――

 アリシアは、悪役としての道を歩む。


 そして、僕は――

 美しく、終われる。』


 ページを――

 めくります。


 震える手で。


『×月×日


 計画が、うまくいかない。


 アリシアが――優しすぎる。


 エリカに、手を差し伸べた。

 友達になろうとしている。


 違う。

 これは、違う。


 アリシアは――悪役にならなければいけないのに。』


 涙が――

 出てきました。


 わたくしは――

 何を、読んでいるのでしょう。


『×月×日


 セレスティアも、リディアも。


 全員――アリシアに救われた。


 僕の計画は、全て失敗した。


 アリシアは――悪役にならなかった。


 それどころか――

 聖女のような存在になっている。


 でも――

 僕は、どうすればいいんだ。


 僕には――

 生きる意味がない。


 死にたい。

 でも、死ねない。


 転生者だから。

 創造神の加護があるから。


 だから――

 アリシアに断罪してもらうしかなかった。


 それが――

 唯一の、終わり方だった。』


 ノートが――

 床に、落ちました。


 わたくしの手から――

 力が、抜けてしまったから。


「なん――」


 声が、震えます。


「なんですの――これ」


 涙が――止まりません。


 結城さんは――

 わたくしを。


 悪役に、育てようとしていた?


 そして――

 自分を、殺させるために?


「死にたい?」


 小さく呟きます。


「生きる意味がない?」


 胸が――

 激しく、痛みました。


 彼は――

 ずっと、そう思っていたのですか。


 あの笑顔の裏で。

 あの優しい言葉の裏で。


 ずっと――

 死にたいと、思っていたのですか。


「どうして――」


 わたくしは――

 その場に、崩れ落ちました。


 膝が、力を失って。


「どうして、そんなこと――」


 ノートを――

 拾い上げます。


 まだ――

 続きがありました。


『×月×日


 もう、限界だ。


 アリシアは、悪役にならない。


 ならば――

 僕が、悪役になればいい。


 創造神の力を解放する。

 世界に、災厄をもたらす。


 そうすれば――

 アリシアは、僕を止めるために動くだろう。


 ヒロインたちも、集まってくるだろう。


 そして――

 僕を、殺してくれるだろう。


 完璧だ。


 やっと――

 見つけた。


 僕の、居場所を。


 悪役。災厄。世界の敵。


 それが――僕だ。


 もうすぐ、全部終わる。


 アリシア。

 君は、何も気にする必要はない。


 君は――ただ、僕を止めればいい。


 君は――ただ、僕を殺せばいい。


 それが――

 君の役割だ。


 ありがとう。

 今まで、支えてくれて。


 さようなら。

 アリシア・ヴァンクレール。


 君のことは――

 忘れない。』


 最後のページ。


 そこで――

 日記は、終わっていました。


 わたくしは――

 ただ、泣くことしかできませんでした。


「結城さん――」


 小さく、名前を呼びます。


「どうして――」


 涙が、ノートに落ちます。


「どうして、わたくしに相談してくれなかったのですか」


 彼は――

 ずっと、一人で苦しんでいた。


 死にたいと、思いながら。

 生きる意味を、見出せないまま。


 そして――

 最後には、自分が悪役になることを選んだ。


「創造神の力を、解放する?」


 その言葉が――

 恐怖を、呼び起こします。


 それは――

 どういう意味なのでしょう。


 彼は――

 一体、何をしようとしているのでしょう。


 わたくしは――

 立ち上がります。


 震える足で。


 日記を――

 持って。


「止めなければ――」


 小さく呟きます。


「彼を、止めなければ」


 でも――

 どうやって。


 彼は、死にたがっている。

 わたくしに、殺されたがっている。


 そんな彼を――

 どうやって、救えばいいのでしょう。


「分かりません――」


 涙が、止まりません。


「でも――」


 わたくしは、決意します。


「わたくしは、諦めません」


 結城さんを――

 絶対に、救ってみせます。


 たとえ――

 彼が死を望んでいても。


 たとえ――

 彼がわたくしに殺されることを望んでいても。


 わたくしは――

 彼を、殺しません。


 わたくしは――

 彼を、断罪しません。


「だから――」


 小さく誓います。


「生きてください」


 結城蒼。


 あなたは――

 生きる価値がある人です。


 わたくしが――

 それを、証明してみせます。


 月明かりの中――

 わたくしは、静かに部屋を出ました。


 日記を、胸に抱きしめて。


 涙を、流しながら。


 でも――

 心には、決意がありました。


 彼を――

 必ず、救う。


 それが――

 わたくしの、使命だから。


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