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ギャルゲーの主人公に転生したので悪役令嬢の補佐してみた  作者: tanahiro2010


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18/33

リディア編 後編


 翌日の夕方。

 約束通り、僕は中庭に向かった。


 リディアは――

 昨日と同じベンチに座っていた。


 金色の髪が、夕日に照らされて輝いている。

 完璧な姿勢で、遠くを見つめている。


 その姿は――

 美しいが、どこか寂しげだった。


「リディア様」


 声をかけると――

 リディアが、ゆっくりと振り返った。


「来てくださったのね」


 微笑む。

 でも、昨日とは少し違う笑顔だった。

 少しだけ――本物の笑顔。


「お話があると、おっしゃっていましたので」


 僕は、隣に座った。


 リディアは、しばらく黙っていた。

 そして――小さく口を開いた。


「結城さん、あなたに提案がありますの」


 その声は――真剣だった。


「提案、ですか?」

「ええ」


 リディアが、僕を見た。


「私の国に、来ませんか?」


 その言葉に――

 僕は、驚いた。


「あなたの才能を、私は見抜きました」


 リディアの目が、鋭くなる。


「生徒会でアリシア様を支えている様子」

「周りからの評判」

「そして――昨日の会話」


 リディアが、微笑んだ。


「あなたは、優秀すぎますわ」

「そして――危険すぎますわ」


 その言葉に――

 僕は、何も言えなかった。


「だからこそ、私の国で働いてほしいんです」


 リディアが、続ける。


「フェルディア王国は、優秀な人材を求めています」

「あなたなら、きっと素晴らしい働きをしてくださるはず」


 その提案は――

 原作にはなかった。


 原作では、リディアは主人公に好意を抱く。

 でも、今――

 彼女は、僕を国に招こうとしている。


「お断りします」


 僕は、はっきりと言った。


「あら、即答ですのね」


 リディアは、驚いた様子もなく微笑んだ。


「やはり、そうですわね」

「あなたには、別の目的がありますもの」


 リディアが、空を見上げる。


「でも、知っていますか?」

「自分を大切にしない人は――」

「いずれ、周りの人も傷つけますわ」


 その言葉が、前にも聞いたことのある、その言葉が――

 胸に、重く響いた。


「私も、同じでしたから」


 リディアが、小さく呟いた。


「王女という役割を演じて」

「本当の自分を押し殺して」

「ずっと、仮面をかぶって生きてきましたわ」


 リディアの声が――

 少し震えていた。


「でも、ある日気づいたんです」


 リディアが、僕を見た。


「私が苦しんでいると――」

「周りの人も、苦しむんだって」


 リディアの目に――

 涙が浮かんでいた。


「侍女が、私のことを心配して泣いていましたの」

「家庭教師が、私の笑顔が嘘だと気づいて悲しんでいましたの」

「そして――姉が」


 リディアの声が、詰まる。


「姉が、私に言ったんです」

「『リディア、無理しないで』って」


 涙が、一筋流れた。


「私、気づいたんです」

「自分を大切にしないことは――」

「周りの人を、裏切ることだって」


 リディアが、涙を拭う。


「だから、結城さん」


 リディアが、僕の手を取った。


「あなたも、気づいてください」

「あなたが苦しんでいると――」

「周りの人も、苦しんでいますわ」


 その言葉が――

 心に、深く突き刺さった。


「アリシア様も、エリカさんも、セレスティアさんも」


 リディアが、優しく言った。


「みんな、あなたのことを心配していますわ」

「あなたの笑顔が、嘘だと気づいていますわ」


 その言葉に――

 僕は、何も言えなかった。


「リディア様は――」


 僕が、小さく尋ねる。


「どうやって、変われたんですか?」


 その問いに――

 リディアは、微笑んだ。


「アリシア様に、会ったんです」


 その名前に――

 僕は、驚いた。


「アリシア様?」

「ええ」


 リディアが、嬉しそうに微笑んだ。


「実は、昨日あなたと会った後」

「アリシア様に、お会いしたんです」


 リディアが、続ける。


「彼女は、私の仮面を見抜きましたわ」

「そして――優しく言ってくださったんです」


 リディアの目が、輝く。


「『あなたは、あなたのままでいいのですよ』って」


 その言葉に――

 僕の心臓が、大きく跳ねた。


「アリシア様は、言いました」

「『王女である前に、一人の人間です』」

「『役割も大切ですが、自分自身も大切にしてください』って」


 リディアが、涙を流した。


「初めて、でしたわ」

「誰かに、そう言ってもらえたのは」


 リディアは、微笑んだ。

 本物の、温かい笑顔で。


「だから、私も変わろうと思ったんです」

「仮面を外して、本当の自分で生きようって」


 その言葉が――

 胸に、重く響いた。


 また――

 アリシアだった。


 エリカも。

 セレスティアも。

 そして、リディアも。


 みんな――

 アリシアに救われた。


「アリシア様は、すごい方ですわ」


 リディアが、優しく言った。


「政治的には、私たちの国は対立関係にあります」

「でも――個人としては、私はアリシア様を尊敬していますわ」


 リディアが、立ち上がる。


「結城さん、あなたも気づくべきですわ」


 リディアが、僕を見下ろした。


「アリシア様は、悪役なんかじゃありません」

「あなたが何を企んでいるか、私には分かりませんけれど――」


 リディアの目が、鋭くなる。


「アリシア様を、利用しないでください」

「彼女は――あなたが思っているような人じゃありませんわ」


 その言葉に――

 僕は、何も言えなかった。


 リディアは――

 すべて見抜いていた。

 僕の計画を。

 僕の目的を。


「失礼なことを言いましたわね」


 リディアが、小さく微笑んだ。


「でも、これだけは言わせてください」


 リディアが、真剣な目で僕を見た。


「結城さん、あなたは特別な人です」

「だからこそ――」


 リディアの声が、優しくなる。


「自分を、粗末にしないでください」


 その言葉を残して――

 リディアは、歩き出そうとした。


「待ってください」


 僕が、呼び止める。


「リディア様は――」

「これから、どうするんですか?」


 その問いに――

 リディアは、振り返った。


「帰国しますわ」


 リディアが、微笑んだ。


「アリシア様に教えていただきました」

「私には、私の道があるって」


 リディアの目が、輝いている。


「私は、王女として国のために働きます」

「でも、同時に――」

「一人の人間として、自分の幸せも探します」


 リディアは――

 もう迷っていなかった。

 自分の道を、見つけていた。


「結城さん、最後に一つだけ」


 リディアが、優しく微笑んだ。


「あなたも、自分の道を見つけてください」

「死ぬことじゃなく――」

「生きることを」


 その言葉を残して――

 リディアは、去っていった。


 金色の髪が、夕日に揺れる。

 その背中は――もう、迷っていなかった。


 僕は――

 ベンチに座ったまま、動けなかった。


 また――失敗した。


 リディアも、悪役にならなかった。

 アリシアと対立することもなかった。

 むしろ――アリシアを尊敬していた。


「全員――」


 小さく呟く。


 エリカも。

 セレスティアも。

 リディアも。


 みんな――

 アリシアに救われた。

 そして、みんな――

 僕を否定した。


「死ぬことじゃなく、生きることを」


 リディアの最後の言葉が、響く。


 でも――

 僕には、分からない。


 どうやって生きればいいのか。

 何のために生きればいいのか。


「計画は――完全に失敗した」


 小さく呟く。


 ヒロインたちを使って、悪役を作る。

 その計画は、すべて崩壊した。


 エリカは、家族と和解して去った。

 セレスティアは、学者の道を見つけて去った。

 リディアは、自分の役割を受け入れて帰国する。


 誰一人として――

 僕を断罪しなかった。

 誰一人として――

 悪役にならなかった。


 そして――

 みんな、アリシアに救われた。


「アリシア――」


 彼女の名前を、呟く。


 彼女は、悪役にならなかった。

 それどころか――

 誰もが認める、聖女になった。


 エリカも。

 セレスティアも。

 リディアも。


 みんな――

 アリシアを尊敬している。

 アリシアに感謝している。


「なぜだ」


 小さく呟く。


 なぜ、君は――

 こんなにも優しいんだ。


 なぜ、君は――

 誰も見捨てないんだ。


 なぜ、君は――

 悪役になってくれないんだ。


 空を見上げる。

 夕日が、沈んでいく。

 赤く染まった空が――

 まるで、終わりを告げているようだった。


「もう――」


 小さく呟く。


「ヒロインたちは、いない」


 計画は、完全に崩壊した。

 もう、誰も悪役にはならない。


 ならば――

 僕は、どうすればいい?


 美しく終わる。

 それが、僕の唯一の目的だった。


 でも――

 その道は、閉ざされてしまった。


「それでも――」


 拳を、握りしめる。


「諦めない」


 まだ、方法はあるはずだ。

 美しく終わる方法が。


 たとえ、誰に否定されても。

 たとえ、すべての計画が失敗しても。


 僕は――

 死ぬまで、諦めない。


 それが――

 僕の、存在意義だから。


 立ち上がる。

 夕日を背に、歩き出す。


 次の一手を――

 考えなければならない。


 アリシアが悪役にならないなら――

 ヒロインたちが悪役にならないなら――


 ならば――


「僕が――」


 小さく呟く。


 まだ、答えは出ない。

 でも――

 何かが、変わり始めている。


 心の奥で――

 小さな絶望が、芽生え始めていた。


   ◇


 ――遥か遠く。

 世界の外側。

 神の領域。


 銀髪紫眼の存在が――

 すべてを見ていた。


「……やはり、か」


 創造神が、小さく呟いた。


 蒼の姿を、映し出す水鏡を見つめながら。

 その表情には――珍しく、感情が浮かんでいた。


 悲しみ。

 そして――後悔。


「私が与えた力が、お前を縛っているのか」


 創造神は、静かに言った。


「美しく終わりたい――」

「その願いを、私は肯定した」

「お前の選択を、尊重すると約束した」


 水鏡の中で、蒼が歩いている。

 夕日を背に、一人で。


「だが――」


 創造神の目に、初めて迷いが浮かぶ。


「お前は、本当に死にたいのか?」


 その問いは――

 何度も、蒼に投げかけた問いだった。


 でも、蒼の答えは変わらなかった。

 いつも、同じ答えだった。


「私は、お前を見守ると約束した」


 創造神が、水鏡に手を伸ばす。

 でも――触れることはできない。


「干渉しないと、誓った」

「お前の選択を、尊重すると」


 創造神は――

 何もできない。


 ただ、見ているしかない。


「だが――」


 創造神の声が、震える。


「お前が、あの少女に出会った時」

「初めて、笑ったではないか」


 水鏡に、アリシアの姿が映る。

 優しく微笑む、彼女の姿が。


「お前が救った少女たちが、お前を心配している」

「お前が助けた人々が、お前のために泣いている」


 創造神の拳が、握りしめられる。


「なぜ、気づかない」

「お前は――」


 その言葉が、宙に消える。


「……いや」


 創造神は、小さく首を振った。


「気づいているのだな」

「でも、認められないのだな」


 水鏡の中で、蒼の背中が遠ざかっていく。


「お前は――」

「もう、引き返せないと思っているのか」


 創造神は、静かに目を閉じた。


「蒼よ」


 その名を、呼ぶ。


「私は、お前の選択を尊重する」

「それが、お前との約束だから」


 でも――


「だが、もし――」


 創造神の声が、微かに震える。


「もし、お前が別の道を選ぶのなら」

「それもまた――私は受け入れよう」


 水鏡が、ゆっくりと消えていく。


「生きることも、死ぬことも」

「等しく、尊い」


 創造神が、最後に呟いた。


「だが――お前に生きてほしいと願うのは」

「私のエゴなのだろうか」


 その問いに――

 答える者は、誰もいない。


 神の領域は――

 いつものように、静かだった。


 永遠の、孤独の中で。

 創造神は――

 ただ、見守り続ける。


 友と呼んだ、少年の行く末を。


あとがき――――

なんとなく神様視点いれてみた

今のとこ契約要素皆無なんだよね()

次次章にはでるけど...それで完結なんで()

もしかしたらプロット組むときに選択を間違ったかもしれない...


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