表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギャルゲーの主人公に転生したので悪役令嬢の補佐してみた  作者: tanahiro2010


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/33

セレスティア編 前編


 エリカが学院を去ってから、数日が経った。


 僕は――図書館にいた。

 次のターゲット、セレスティア・ノワールを探すために。


 原作ゲームでは、彼女は図書館に籠もる優等生だった。

 人と話すのが苦手で、いつも一人で本を読んでいる。

 母親からのプレッシャーと、過去のトラウマに苦しんでいる。


 主人公が彼女の心を開いて、友達になる。

 それが、彼女のルートだ。


「ならば――」


 小さく呟く。

 僕が、その主人公の役割を演じればいい。

 エリカの時と同じように。


 でも――

 胸の奥に、重いものがある。


 エリカの最後の言葉が、まだ響いている。

『アリシア様は、道具なんかじゃありません』

『傷つけないでください』


 その言葉が――

 僕の心を、縛っている。


「それでも――」


 首を振る。

 諦めるわけにはいかない。

 美しく終わる。それが、僕の唯一の目的だから。


 図書館の奥。

 窓際の席に、彼女はいた。


 セレスティア・ノワール。

 銀色の長い髪。紫色の瞳。

 繊細で、儚げな雰囲気。


 彼女は、本に埋もれていた。

 周りには、積み上げられた本の山。

 まるで、世界から隔絶されたように。


 僕は、そっと近づいた。


「こんにちは」


 声をかけると――

 セレスティアが、ビクッと肩を震わせた。


 顔を上げる。

 その目は――怯えていた。


「あ、の……」


 小さな声。

 か細くて、今にも消えそうな声。


「すみません、驚かせてしまって」


 僕は、優しく微笑んだ。


「たくさん本を読んでいますね」

「……はい」


 セレスティアは、視線を逸らす。

 人と目を合わせるのが、苦手なようだ。


「何を読んでいるんですか?」


 僕が尋ねると、セレスティアは小さく答えた。


「古代魔法の、研究書……です」

「古代魔法? 難しい本ですね」

「……好きなんです」


 セレスティアの声が、少しだけ明るくなった。


「本が、好きなんですか?」

「……はい」


 セレスティアは、本を抱きしめた。

 まるで、それが唯一の友達のように。


「僕も、本は好きです」


 その言葉に――

 セレスティアが、少し驚いた顔をした。


「本当……ですか?」

「ええ。物語の中では、いろんな世界を旅できますから」


 僕は、隣の席に座った。

 セレスティアは、少し緊張している。


「僕は、結城蒼と言います」

「……セレスティア、ノワールです」


 小さく、名乗る。

 その声は――とても繊細だった。


「セレスティアさんは、どんな本が好きなんですか?」


 その質問に――

 セレスティアの目が、少し輝いた。


「冒険物語、とか……」

「あと、魔法の研究書も……」

「ファンタジーが、好きです」


 話す時、彼女の表情が少し和らぐ。

 本のことを話す時だけ、彼女は心を開く。


「僕も、ファンタジーは好きです」

「本当……ですか?」


 セレスティアが、僕を見た。

 その目には――期待が浮かんでいた。


「ええ。特に『竜王の伝説』シリーズが好きです」


 その瞬間――

 セレスティアの顔が、パッと明るくなった。


「私も、それ、大好きです!」


 初めて、彼女が大きな声を出した。

 そして、すぐに恥ずかしそうに口を押さえる。


「ご、ごめんなさい。大きな声で……」

「いえ、構いませんよ」


 僕は、優しく微笑んだ。


「好きなものの話をする時は、つい熱くなりますよね」


 セレスティアが、小さく頷いた。

 その表情は――少し嬉しそうだった。


「あの、結城さんは……」


 セレスティアが、小さく尋ねる。


「『竜王の伝説』の、どこが好きですか?」

「そうですね……」


 僕は、少し考えた。

 原作ゲームでのセレスティアルートを思い出す。

 彼女が好きなのは――


「主人公が、仲間を信じて戦うところです」

「一人じゃ倒せない敵でも、仲間と一緒なら乗り越えられる」

「そういうところが、好きです」


 その言葉に――

 セレスティアの目から、涙が溢れた。


「私も……」


 セレスティアが、震える声で言った。


「私も、そこが好きなんです」

「一人じゃなくて、仲間がいるって……」

「すごく、素敵だって……」


 セレスティアは、本を抱きしめて泣いていた。

 その姿は――とても孤独に見えた。


「セレスティアさん……」

「ごめんなさい、変なこと言って」


 セレスティアは、慌てて涙を拭う。


「いえ、変じゃありませんよ」


 僕は、優しく言った。


「誰かと、好きな本の話ができるって嬉しいですよね」


 その言葉に――

 セレスティアが、また泣いた。


「初めて、なんです」

「誰かと、本の話ができたの……」

「クラスメイトは、みんな私を変だって言って……」

「誰も、話を聞いてくれなくて……」


 セレスティアの声が、震えている。


「でも、結城さんは――」

「聞いてくれて……」

「同じものを好きって言ってくれて……」


 セレスティアが、僕を見た。

 その目は――純粋で、無垢だった。


「嬉しい、です」


 その言葉が――

 胸に、重く突き刺さった。


 僕は、この少女を利用しようとしている。

 計画のために。

 死ぬために。


 でも――

 彼女の涙を見ると、罪悪感が湧いてくる。


 その日から、僕は毎日図書館に通った。


 セレスティアと一緒に、本を読む。

 物語について、語り合う。

 彼女は――少しずつ、心を開いていった。


「結城さん、この本、読みましたか?」


 セレスティアが、本を差し出す。

 以前より、声が明るい。


「まだです。面白いですか?」

「はい! すごく感動しました」


 セレスティアの目が、輝いている。

 本の話をする時の彼女は――生き生きとしていた。


「じゃあ、読んでみます」

「感想、聞かせてくださいね」


 セレスティアが、嬉しそうに微笑んだ。

 その笑顔は――とても綺麗だった。


 でも――

 僕の心は、重かった。


 計画は、順調に進んでいる。

 セレスティアは、僕に依存し始めている。

 原作通り。


 でも――

 これでいいのか?


 ある日、セレスティアが言った。


「結城さん、あの……」


 セレスティアは、恥ずかしそうに視線を逸らす。


「はい」

「私、初めて――」


 セレスティアの声が、震える。


「友達が、できました」


 その言葉に――

 僕の心臓が、大きく跳ねた。


「結城さんが、初めての友達です」


 セレスティアの目から、涙が溢れた。

 でも、それは嬉し涙だった。


「ありがとうございます」

「私、ずっと一人で……」

「誰とも話せなくて……」

「でも、結城さんは――」


 セレスティアが、僕を見た。


「優しくしてくれて」

「話を聞いてくれて」

「一緒にいてくれて……」


 その言葉が――

 胸に、深く突き刺さった。


「友達」


 小さく呟く。

 僕は、セレスティアの友達じゃない。

 彼女を利用している、最低の人間だ。


 でも――

 彼女は、そんなことを知らない。

 純粋に、僕を信じている。


「結城さん?」


 セレスティアが、心配そうに覗き込む。


「いえ、何でも」


 僕は、微笑んだ。

 空っぽな笑顔で。


「僕も、セレスティアさんと友達になれて嬉しいです」


 嘘をついた。

 また、嘘をついた。


 セレスティアは、嬉しそうに微笑んだ。

 その笑顔が――眩しすぎた。


 数日後。

 セレスティアが、母親からの手紙を受け取った。


 僕たちは、いつものように図書館にいた。

 セレスティアが手紙を読んで――

 顔が、真っ青になった。


「セレスティアさん?」


 僕が声をかけると――

 セレスティアの手が、震えていた。


「母、が……」

「来るって……」


 セレスティアの声が、震える。


「学院に、来るって……」

「私の様子を、見に来るって……」


 セレスティアの目から、涙が溢れた。


「怖い……」

「母に会いたく、ない……」


 その姿は――

 追い詰められた小動物のようだった。


「セレスティアさん」


 僕は、そっと彼女の肩に手を置いた。


「大丈夫です。僕が、一緒にいます」


 その言葉に――

 セレスティアが、僕を見た。


「本当……ですか?」

「ええ。約束します」


 セレスティアは、小さく頷いた。

 そして――僕の手を、ギュッと握った。


「ありがとう、ございます」

「結城さんが、いてくれれば……」

「私、頑張れます」


 その言葉が――

 重かった。


 僕は、また嘘をついている。

 彼女を利用している。

 でも――


 彼女の繊細さが、僕の心を揺さぶる。

 彼女の涙が、僕を苦しめる。


「これでいいのか?」


 心の中で、自問する。

 でも、もう遅い。

 計画は、始まってしまった。


あとがき――――

とにかく死にたい主人公、周りの被害なんて知りません()


悩みというかなんというか

ヒロインたちをこのまま二話で終わらせていいのか迷ってます()


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ