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ギャルゲーの主人公に転生したので悪役令嬢の補佐してみた  作者: tanahiro2010


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エリカ編 前編


 学院の授業の、その一つ――剣術訓練。

 その時間を利用し、僕は訓練場でエリカと向かい合っていた。


「じゃあ、お手合わせ、お願いします!」


 エリカが、嬉しそうに剣を構える。

 フォームは――悪くない。

 基礎はしっかりしている。


「いきます!」


 エリカが、剣を振り下ろす。

 速い。そして、力強い。

 でも――


 僕は、軽く剣で受け流した。


「えっ?」


 エリカが、驚いた表情を見せる。

 そのまま体勢を崩して、よろめく。


「フォームは綺麗です。でも、無駄な力が入りすぎています」


 僕は、冷静に指摘した。


「むだな……力?」

「ええ。力任せに振っても、相手に受け流されるだけです」

「もっと、相手の動きを見て。予測して」


 エリカは、真剣な顔で僕の言葉を聞いている。


「もう一度、やってみましょうか」

「はい!」


 エリカが、再び構える。

 今度は――少し力を抜いている。

 言葉を理解したようだ。


 彼女が剣を振る。

 さっきより、流れるような動き。

 でも、まだ――


 僕は、また受け流した。


「くっ……」


 エリカが、悔しそうな顔をする。

 その表情が――純粋で、無垢だった。


「いい動きです。さっきより、ずっと良くなった」

「本当ですか!?」


 エリカの顔が、パッと明るくなった。

 褒められることに、飢えている。

 原作通りだ。


「ええ。才能があります」

「才能……」


 エリカが、小さく呟く。

 その目に、涙が浮かんでいた。


「あたし、才能なんて……」

「ないって、思ってたんです」


 エリカの声が、震えている。


「兄たちは、すごく強くて」

「姉も、魔法の才能があって」

「あたしだけ、何もなくて……」


 涙が、頬を伝う。

 エリカは、慌てて手で拭う。


「ご、ごめんなさい。変なこと言って」

「いえ」


 僕は、優しく微笑んだ。

 計算された笑顔で。


「エリカさんには、確かに才能があります」

「でも、それを信じられないだけです」


 エリカが、僕を見た。

 その目は――何かを求めていた。


「あなたは、自分を過小評価しています」

「兄弟と比べる必要はありません」

「あなたは、あなただけの剣を持っている」


 その言葉に――

 エリカの目から、また涙が溢れた。


「結城さん……」


 彼女は、泣きながら笑った。

 嬉しそうに、安堵したように。


「ありがとうございます」

「あたし、初めて……」

「誰かに、そんな風に言ってもらえました」


 その言葉が――

 胸に、重く突き刺さった。


 僕は、この少女を利用しようとしている。

 計画のために。

 死ぬために。


 でも――

 彼女の涙を見ると、罪悪感が湧いてくる。


「これからも、訓練に付き合いますよ」


 僕は、そう言った。

 計画通り。

 エリカを僕に依存させる。


「本当ですか!?」

「ええ。僕でよければ」

「嬉しい! あたし、結城さんみたいに強くなりたいです!」


 エリカの笑顔が――眩しかった。

 純粋で、無垢で。

 疑うことを知らない笑顔。


 その後、僕たちは毎日訓練場で会うようになった。


 エリカは、素直な生徒だった。

 僕の指導を真剣に聞いて、実践する。

 そして、確実に強くなっていく。


「結城さん、見てください! できました!」


 エリカが、嬉しそうに新しい技を披露する。

 その姿は――輝いていた。


「上達が早いですね」

「それは、結城さんの教え方が上手いからですよ!」


 エリカは、無邪気に笑う。

 その笑顔を見るたびに――

 胸の奥が、痛んだ。


 ある日、訓練が終わった後。

 エリカが、僕に話しかけた。


「結城さん、あの……」


 エリカは、少し恥ずかしそうに視線を逸らす。


「はい」

「あたし、結城さんのこと――」


 そこまで言いかけて、エリカは口を閉じた。

 顔が、真っ赤になっている。


「何でしょうか?」

「い、いえ! 何でもないです!」


 エリカは、慌てて首を振った。

 その仕草が――可愛らしかった。


 計画通りだ。

 エリカは、僕に恋心を抱き始めている。

 原作知識通り。


 でも――

 なぜだろう。

 この状況が、辛い。


 数日後、エリカが訓練に来なかった。


 珍しいことだった。

 彼女は、毎日欠かさず訓練場に来ていた。


「どうしたんだろう」


 小さく呟く。

 少し、心配になった。


 翌日も、エリカは来なかった。

 三日目も、来ない。


 僕は、エリカの寮を訪ねた。


 ドアをノックすると――

 泣きはらした顔のエリカが、出てきた。


「結城、さん……」


 エリカの声が、震えている。

 目は赤く腫れていた。


「何があったんですか?」


 僕が尋ねると、エリカは小さく答えた。


「家から、手紙が……」


 エリカは、震える手で手紙を差し出した。

 僕は、それを受け取って読む。


『エリカへ。

長兄が騎士団で昇進した。

次兄も警備隊で功績を上げた。

お前も頑張れ。

フォルテシア家の名に恥じないように。

父より』


 短い、事務的な手紙。

 でも――その言葉の重さは、十分に伝わってきた。


「あたし、また……」


 エリカが、泣き出した。


「また、比べられるんです」

「兄たちと、比べられる」

「あたしは、あたしなのに……」


 その言葉が――

 胸に、突き刺さった。


 原作では、ここで主人公が家族と仲介する。

 そして、エリカは家族の本当の気持ちを知る。


 ならば――

 僕が、その役割を演じればいい。


「エリカさん」


 僕は、彼女の名前を呼んだ。


「一緒に、あなたの家に行きましょう」

「え……?」

「家族と、話し合いましょう」

「あなたの本当の気持ちを、伝えましょう」


 エリカが、驚いた顔で僕を見た。


「で、でも……」

「大丈夫です。僕も一緒に行きます」


 僕は、優しく微笑んだ。

 計算された笑顔で。


 でも――

 心のどこかでは、本気だった。

 エリカを、助けたいと。


「結城さん……」


 エリカの目から、また涙が溢れた。

 でも今度は――嬉し涙だった。


「ありがとうございます」

「あたし、結城さんが一緒なら――」

「頑張れます」


 その言葉が、温かかった。

 でも同時に、重かった。


 数日後、僕たちはエリカの実家を訪ねた。


 フォルテシア男爵家は、こじんまりとした屋敷だった。

 でも、手入れが行き届いていて、温かみがある。


「エリカ、帰ったのか」


 父親が、玄関に出てきた。

 厳格そうな顔立ちだが、目は優しい。


「父さん……」

「それと、そちらの方は?」

「あ、あたしの友達です。結城蒼さん」


 僕は、礼儀正しく一礼した。


「はじめまして。エリカさんには、いつもお世話になっております」


 父親は、少し驚いた顔をした。

 そして――優しく微笑んだ。


「そうか。エリカに友達ができたのか」

「良かった。いつも一人で訓練ばかりしていたから、心配していたんだ」


 その言葉に――

 エリカが、驚いた顔をした。


「父さん……」

「入りなさい。話をしよう」


 僕たちは、屋敷の中に招き入れられた。


 リビングで、エリカの家族が集まった。

 父、母、そして兄が二人。


「エリカ、久しぶりだな」


 長兄が、優しく微笑んだ。


「兄さん……」

「相変わらず、真面目に訓練してるか?」

「う、うん……」


 エリカは、少し緊張している。

 僕は、そっと彼女の手を握った。


「大丈夫」


 小さく呟くと、エリカが少し落ち着いた。


「あの、父さん、母さん」


 エリカが、意を決したように話し始めた。


「あたし、ずっと言いたかったことがあるんです」


 家族が、真剣な顔でエリカを見る。


「あたし――」


 エリカの声が、震える。

 でも、彼女は続けた。


「あたし、兄さんたちと比べられるのが、辛いんです」


 その言葉に――

 父親が、驚いた顔をした。


「比べられる?」

「手紙に、いつも兄さんたちの功績が書いてあって」

「『お前も頑張れ』って言われるたびに――」

「あたしは、足りないんだって思うんです」


 エリカの目から、涙が溢れた。


「あたしは、あたしなのに」

「兄さんたちになれないのに」

「でも、期待に応えなきゃいけなくて――」


 その時――

 父親が、立ち上がった。


 そして――

 エリカを、強く抱きしめた。


「父さん……?」

「すまなかった、エリカ」


 父親の声が、震えていた。


「俺たちは、お前を比べていたわけじゃないんだ」

「ただ――応援していたんだ」


あとがき――――

良いおとう様だね()


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