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ニューメイボード  作者: Ridge
遠足
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8話

 警察による関係者への聞き込みが終わり、パトカーは合宿所からいなくなっていた。合宿は続行し、夕食と風呂の後の自由時間を生徒たちは好き好きに過ごしていた。なお、ゲーム機の持ち込みは禁止で、トランプなどアナログゲームは持ち込み可能のルールだった。音楽や動画視聴は禁止ではないが、一人で過ごさず交流を推奨していた。

 夜の自由時間に大河は館内の簡素な遊技場でクラスメイトと麻雀を打ちながら話していた。棚にはアナログなボードゲームがいくつか置いてあり、十数名がそれぞれテーブルでゲームしていた。

「高見と打てるのはいいが、こっち来ていいのか?」

「恋バナばかりで飽きて来た。あんたらと遊ぶ方が楽しいよ」

 高見たかみ弦歌げんか。大河のクラスメイト。部活はしておらず、喫茶店でバイトしている。少年漫画好き。特にバトルものと頭脳戦ものが好きらしい。母親と二人暮らしをしている。

「女子はほんと恋バナ好きだよな」

「あたしは別に好きじゃない」

「全体的な傾向さ。男子はエロい話が好き、苦手な奴もいるけどな」

「別に恋愛抜きでも結婚できる人はできるし」

「まあそうだな」

「俺の母なんて、旦那が家にいないことが多い船乗りだから結婚したんだ。趣味の邪魔されないからってさ。父も毎日構わないと駄目って人は嫌で、好きな海で自由にさせてくれる人がいいってことで母と結婚したわけだし、恋愛抜きで何とかなるよ」

「程々に離れてた方が長続きするのかもね」

「なあ、親のそれ、照れ隠しでそう言ってんじゃないのか?」

「そうかなあ?まあ愛情はあるんだろうけど恋愛ではないと思うな」

 大河は満貫手で聴牌した。高見が立直中だが、親番のため強気に出ることにした。そっちに注意が向いて大河の当たり牌が出るかもしれないのもあった。

「それロン、裏も乗って12000」

「大当たり…たっか…」

「おいおい、危険牌だろ?」

「いいんだよ。今回は駄目だったけど、押すときは押さないと」

「そうそう。基本4回に1回くらいしか和了できないんだから。チャンスは大事にしないと」

 大河は牌を伏せて混ぜた。

「4回に1回って防御の心得じゃないのか?」

「そうだっけ?攻撃の心得でもあるんじゃない?」

「何でもいいから次行こう次」

 親番を隣に回して次の局を始めた。


 久遠たちは部屋に集まってお茶を飲んで女子会をしていた。

「…という訳で私のは恋に恋するというやつだと思う。ロマンチックなことへの憧れから、特別な出来事があった仲だから、好きな人だといいなと思っているだけな気がする。そんなのでいいのかな」

「分かるよ久遠ちゃん。私も憧れるシチュエーションがあって、それを相手に演じて欲しいだけで、相手のことを本当に好きなのかな?と思うことがあるもん」

「思い込みじゃ虚しいものね」

「何か2人が難しいこと言っている」

「特別な出来事って何?命を助けられたり?」

「そんなの滅多にないでしょ?落とし物拾ったとか同じ本取ろうとして手が当たったとかじゃないの?」

「えー、そんなの全然特別じゃないよ」

「あんたにとってはそうね」

「答え合わせは?」

「そこはご想像にお任せしますってことで」

「えー、じゃあ憧れるシチュについて教えてよ」

「それはね…」

 久遠たちは話を続けて時間が経ち、就寝時間になってそれぞれの部屋に戻っていって眠りに就いた。


 翌日の午前、生徒たちは班に分かれていくつかの散策ルートで島の中を巡った。その際、帰った後に書くレポートのために色々と調べたり記録を取ったりしていた。

 そして午前の活動を終えてキャンプ場に集まって、昼食を作っていた。

「こういう時って、どうしてカレーなんだろうな」

 大河は野菜を刻みながら周囲の班員に話を振った。

「カレー嫌いなの?」

 大河の横で皮むきをしていた雨夜は気になって質問をした。

「好きな方だけど不思議に思って」

「そういやそうだな」

「楽なんじゃないの?」

「そうなのか?」

「他の料理じゃ駄目なのか考えてみるか」

「じゃあまずラーメンは?」

「伸びるから駄目だろ。食べ始めを全員揃えようとすると、班によってできる早さが異なる場合伸びてしまう」

「ああ、ということは麺類は駄目か」

「麺類でも焼きそばやスパゲティならいいんじゃないか?」

「大人数の炒め物って上手く作るの難しいんじゃないか?」

「あー、なるほど。じゃあ煮たり茹でたりがいいのか」

「焼き物でも焼き魚やステーキなんかは体積取れないし、メインは鍋使った料理だな」

「パンは…作るのに時間かかりすぎるか。それ込みの調理時間ならいいけどね」

「揚げ物は面倒だから置いといて、蒸し料理もスペース食うからメインにはできないか」

「そう考えるとカレーやシチュー、煮物や鍋が正解に思えるな」

「なんとなくカレーな理由が分かってきた」

 その後、料理を完成させ、机を囲んで昼食を取った。屋外の広々とした場所での食事は新鮮な空気と開放感で、いつもとは違う趣があった。

「瀬戸内海は晴れが多くていいな。小さい頃住んでいたところは雨が多くて、こうやって外で食べるのは珍しかったから」

 小林こばやし閑吟かんぎん。大河と同じクラスの男子生徒。機械好きで電子機器全般に強い。コンピュータを自分で組んでいるという。大河同様に中一で入冥島に引っ越して来ている。

「雲井さん、入冥島生まれなんだよね。よくこんな風に外で食べるの?」

「えっと…私はインドア派で滅多になくて…」

「そんな勿体ない」

「あ、でも秋の夜に庭に長椅子出して、お爺ちゃん、お婆ちゃんとお月見みたいなことは昔あったかな」

「風流だなあ。でも出ないのは勿体なく思うな」

「野球場の近くに住んでいてもしょっちゅう野球見に行くとは限らないし、イチゴ農場とその販売所の近くに住んでいてもしょっちゅうイチゴ食べに行くとも限らないだろ?」

「あー、確かにそうか」

「大船君はイチゴ好き?」

「え?俺?いや、好きじゃないけど」

「そういや好きな食べ物知らないな」

「別に知らなくていいよ」

「ふーん、聞いたところであげないけどね」

「大船君は好きな物を言いたがらないよ。昔からそうだもの」

 雨夜は話を終わらせるべく援護した。

「どうして?」

「自由が好きだからだと思う」

「どういうこと?」

「行動を決められたり、予想されたりするのが好きじゃない。コーヒー好きだったよね、この店寄ってく?みたいなのは嫌いでしょ?」

「ああ、そうだけど…」

 なんか、俺より俺のことに詳しくないか?

「私なら嬉しいけどな。覚えてて見つけてくれたんだって」

「俺は嫌だ」

「面倒くせーやつ」

「ああそうだよ。でも悪いことはしてないからいいだろ」

「俺も、いつものセットねと店員さんに覚えられると嫌だな。それに近いか」

「それは嫌かも。でもそれは匿名性がいいというのだからちょっと違くないか?」

「そう言われるとそんな気がする」

 それにしても雲井は鋭い。もしかして俺の力もバレているんじゃ?その割には恐れられていないから、やっぱりバレていないのか?それとも同じく超能力者で俺の力は恐れるに値しないということか?テレパスは確認されていないらしいから、心の内が直接読まれることはないが、洞察力でバレているのかもしれない。

「昼食の後は片付けして、合宿も終わりか」

「忘れないうちにレポート書かないとな」

「期限は来週月曜だろ?疲れたから今日は寝て終末にやる」

「忘れないように箇条書きだけはしておいた方がいいよ」

「それいいな。そうしよう」

 昼食後、片付けをして合宿所に戻り、荷物を纏めた。合宿所広場の集会で点呼を取り先生たちの話を終えた後、船着き場に行って船に乗り込んだ。

 船内についていたテレビでは、入冥島の弾薬工場からサンプル用の銃器が盗み出されるという事件のニュースが流れていた。

 そして15時頃に船が入冥島に着き、大河は再び能力が使用可能になった。

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