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ニューメイボード  作者: Ridge
ホテル占拠

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45/64

45話

「久遠、ちょっと待った。作戦なんだが」

「なに?」

「短時間で解放するのが鍵だ。2手に別れてそれぞれ1,2階と3,4階を担当して解放しよう」

「それもそうね…。この魔術で互いの位置が分かりにくいし、同じ部屋で戦うよりも別れた方がいいかも」

「よし。それじゃ俺が1,2階を担当しよう。久遠は3,4階。それでいいか?」

「私はそれでいいよ。先に終わった方がもう片方へ合流で」

「ああ」

「全部解放できたら1階に行って大河くんは張戸さんに連絡。私は星月の仲間に連絡する」

「了解した」



 道中の覆面を気絶させながら進み、4階で久遠と別れて大河はそのまま下へ降りて2階へ向かった。

 大河が2階に着くと、廊下に銃を持った覆面が2人、レストランの中には4人確認できた。


 人質たちの姿が見えなかったがおそらく奥の部屋だろう。そちらにも敵がいるかもしれないが、まずは目の前から…。


 レストラン内で覆面2人が近づいて話をしていた。


「12階13階の連中と連絡が取れない。泡内(あわない)君、至急確認に向かってくれ」

「万が一もありうる。そんな場所に僕一人で行けと?」

「ちょっと見てくるだけだ。君の力ならすぐだろう。そこで得た情報で人を増やす。何事もなかったとしたら無駄に他を手薄にするわけにもいかない」

「…了解」


 泡内と呼ばれた男は渋々従い、銃を確認した。

 直後、泡内以外の覆面たちは宙に浮いて見えない力を受けて気を失い、地面に倒れた。

 泡内には衝撃は無く、代わりに大河に攻撃が戻って来て魔術の霧が剥がれ、相手に姿が見えるようになった。


 仕留め損ねた…!それに姿も見えるように…。早く倒したいが何らかの能力で身を守っている。焦らず試して見極めなくては…。


「お前、どこから出て来た?見張りはどうした?」

「さあ?玄関から入ったと言ったらどうする?」


 泡内は出入口をちらりと見て、その隙に大河はテレキネシスで机を投げつけた。机は一瞬消え、向きを変えて大河の方向へ戻り、大河に激突する寸前に空中で制止した。


「僕とは違う力か…なら…」


 泡内は下がって近くのテーブルの上のナイフに触れ、大河をじっと見た。大河は周囲のものを浮かせて出方を伺っていると突如ナイフが消え、左腿に突き刺さった。


「な…」


 その後、物陰に隠れ、足に刺さったナイフを見た。


 下手に抜くと出血多量で危険か。痛いがこのままにしてくしかないか。しかしこれでは歩くのもままならない。浮いて移動できるがそれでも制限されていることに変わりない。それに能力による自動防御が出来なかった。これはテレポートか?相手も自動防御が働いていて飛んできたものをテレポートによって反射じみた動きをしているようだ。どうしたものか…。


 ナイフを手にした泡内が斜め前の机横にテレポートし、大河を目で捕らえた。大河は浮いて物陰に逃げ込み、椅子を浮かせて泡内に向けた飛ばした。椅子は一瞬消え、また向きを変えて飛び、壁に当たって足が折れた。


 成程。視界外にはテレポートできなさそうだな。相手に直接突き刺せるということは、視界外では自分が物の中に飛び込むリスクがある。…ああ、なんだ、それなら簡単じゃないか。


 大河は周囲の物を浮かせて部屋中に漂わせた。泡内は近くの浮いている机に触れて消し、離れた場所に飛ばして視界を広げた。その直後、頭上に影が出来たのに気づき、上を見ると広げられたテーブルクロスが降って来ていた。避ける間もなく上から包まれ、足払いでこけて上から降ってきた机に挟まれて身動きが取れなくなった。


「そこから動くなよ。見えないんじゃ浮遊物の中に飛び込むことになるぜ。それから…」

「ぐ…こんなの…」


 泡内は周囲の布をテレポートでどこかへ移動させ、机に触れてテレポートさせた。すると上からソファが落下し、その衝撃で気を失った。


「言おうとしたのに…」


 泡内は気絶し、戦いは大河の勝利で終わった。

 テレポートで内部へ直接打ち込めば大河の防御の要である能力膜に触れることなく攻撃できるが、動いている的に当てるのは容易ではない。それも対象の方向だけでなく奥行まで一致していなければならないのだから難易度は更に高い。投射なら方向さえ合っていればいいが、外部からの攻撃では大河の能力膜に阻まれて弾かれる。あらかじめ大河が来るであろう場所にテレポートする方法があるが、タイミングがずれて内部に撃ち込めなければやはり弾かれる。何より出現場所の予想が困難だ。


 大河は能力を解除して周囲の浮いたものを下ろした。


「大河くん、無事?」


 久遠が部屋に入って来て魔術を解いて姿を見せて駆け寄った。


「怪我をしたが後少しくらいはいける。手こずって1階がまだだ。そっちは?」

「こっちは特に問題なく解放したよ。それより怪我が…」

「応急処置だけして早く1階に行かないと。多分、この騒ぎで気づかれている。それとこいつは能力者だ。先に霊力分散の印を頼めるか?」

「…分かった。無理はしないでね」


 久遠は杖を泡内の首後ろに霊力分散の印を付けた。その後、大河の足のナイフを抜いて魔術で傷口に蓋をして布で上から巻いた。


「時間があれば回復魔法が使えるけど…」

「すまん、また後で世話になる」


 痛覚が麻痺しているうちにケリをつけなければ。痛みで動けなくなる前に…。



 2人は再び魔術で姿を隠し、1階へと降りて行った。途中、窓からを外を見ると、周囲は警察によって近づけないように囲まれていて、その奥でマスコミやカメラマンと思われる人々やスマホで撮影する人々が群がっていた。


 確かにこれなら宣伝効果が望めそうだ。


「俺は玄関を開けてくる、玄関以外の奴らは任せた」


 人質のうち2人が玄関の外から見える場所に椅子に座らされ、銃を持った覆面2人が近くに立っていた。壁際には血を流して倒れた警備員の死体があり、カーペットにはそこまで引きずった血痕が残っていた。覆面が4人見回っているが他の人質は周囲には見られず、どこかに閉じ込められているようだった。


「分かった。気を付けて」


 再び二手に別れ、それぞれ奇襲を開始した。覆面たちは久遠の電撃で次々気絶していった。

 大河は玄関にいる人質を椅子ごと浮かべ、手前に引き寄せた。覆面たちは人質を掴もうとしたが見えない力で阻まれて触れられず、片方の人質に銃を撃ったが銃弾も阻まれて届かず地面に落ちた。

 覆面2人の後ろで玄関のガラス戸が外れて外に転がり、覆面たちは吹き飛ばされて盾を持った警察たちの前に放り出されて気を失った。そして大河は人質2人を離して着地させた。


 人質が2人いて覆面2人とも片方を狙った。偶然かもしれないが、人質の演技をしていた彼らの仲間である万が一に備えておこう。


「久遠、いるか?」

「こっちは終わったよ。その2人が人質だね」

「念のためあっちは気絶させといてくれ。敵の仲間かもしれない」

「そういうことなら…」


 久遠の電撃で1人は気絶し、壁にもたれ込んだ。その後、魔術を解いて姿を現してもう片方の人質の前に来た。


「ご無事ですか?」

「一体何が…?あなたたちは…?」

「それよりも他の人たちがどこにいるのか教えてください」

「は、はい…!」


 大河と久遠は案内された倉庫の扉を開け、人質たちを見つけた。そして大河は張戸に、久遠は星月の事務所に電話した。


「張戸さん、無事ですか?客室はまだですが4階から下は解放して玄関を開けました」

「ご苦労様。こっちは無事だよ。じゃあ外にそう伝えておこう」


 張戸は13階のバーラウンジから電話に出た。その周囲には覆面たちが倒れていた。


「超能力者はいたかい?」

「2階に1人いました。テレポート系です」

「成程。私もそっちに向かうから2階で合流しよう」

「大河くん、警察が突入するみたい」

「ん。張戸さん、警察が突入するみたいです」

「そうか、なら後は彼らに任せた方がいいだろう。それはそれとして超能力者は私たちが確保しよう。星野君にそう伝えてくれ。超能力犯罪対策室に引き渡す」

「了解」

「ではまた後で」


 電話を切り、インカムと無線機も外した。


「久遠、張戸さんが2階の超能力者を確保するから2階で合流だってさ」

「了解。隠しておかないとね」

「この無線機壊れてたのかな」

「ちゃんと設定できてなかったのかも。敵は周波数を切り替える打ち合わせをしていて、私たちはそれを知らなかったから何も聞こえなかったとか」

「そういうことか…痛…」


 気が抜けたら足の痛みが湧いてきた。


「大丈夫?少し我慢できる?先に警察来る前にあの超能力者を隠したいけど、それどころじゃないなら…」

「まだ大丈夫…だと思う。歩けないが浮けるから簡単な移動ならできる。2階でそれが済んだあとに回復魔法を頼む」

「うん、後少しだから頑張って」


 2人は階段を上って2階に行き、泡内を連れて無人のキッチンに入った。

 久遠は札をキッチンの出入口に貼り、張戸を待ちながら回復魔法で大河の足の傷の治癒を始めた。


「イテテ…」

「ごめんね。痛むけどちゃんと治るから…」

「久遠が謝ることじゃない。ありがとう」


 少しすると張戸がやって来て周囲を見渡した。


「怪我をしたのか?大丈夫か?」

「はい、久遠のおかげで」

「そうか…で、こっちがその能力者か」

「はい、霊力分散の印を付けておきました」

「そのようだな…」


 張戸は座り込んで泡内の顔を叩きながら起こした。


「ほら起きるんだ。早く」


 泡内はうめき声を上げて目を覚ました。


「おはよう。早速で悪いが君が何者で目的は何か話してもらおうか」


 泡内は横を見てテレポートしようとしたが何も起きず困惑した。


「やはり霊力由来か。残念ながら君の力は使えなくさせてもらったよ」

「クソ…お前ら魔術師か…」


 厳密には俺と張戸さんは違うけど、話進めたいしそういうことでいいか。


「で、君たちは何者で何が目的だったんだ?正直に答えて心証を良くすることを勧めるよ」

「…僕たちの目的は世界征服」

「…は?」


 そんな子供のような理由でこんな騒ぎを…?本当の目的は何だ?

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