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陰陽師姫の宮中事件譚  作者: ふう
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閑話三 ある小舎人童のため息

新メンバー登場




 よお。初めてだな。

(オレ)は淑景舎で「ミコサマ」の小舎人をしている。

 名は「玄丸(くろまる)」だ。

ミコサマがつけてくれた。

 歳は「ジジュウ」よりもだいぶ上だけど、「カルラ」の姉ちゃんより少し下か。


 少し前、ミコサマが大内裏の宴の松原という所を通りかかった時、お腹が空いて動けなかった我を拾って帰った。


「今、帰った。途中で子猫を拾ったんだが。」


「え!猫でごさいますか。」


ジジュウは両手をワキワキさせて嬉しそうに近づいてきた。

 ちょうど淑景舎に来ていた「ヒメサマ」と、「マシロ」の兄キとカルラの姉ちゃんも近づいてきた。


 ミコサマが、


「ほら、中々いい面構えしているだろう。」


と、懐から我を取り出した。


 その三人は我をじーっと何だかビミョーな顔つきで我を見ている。


(うっ。めっちゃ見られてる。もしかして疑われている…?)


黒と焦茶色のシマシマ、尖った耳、黒い肉球のある足、長いしっぽ。

 完璧なその辺にいる猫のはずだったんだが。

あ、汗かいてきた…。


「ア、アオーン?」


猫っぽく鳴いてみた。


 いきなりマシロの兄キが我の頭をペチンと猫パンチした。


「いてっ!」


あ、思わず言葉を喋ってしまった。

 ヒメサマがくすくす笑いながら言う。


「この方は確かに猫ではありませんね。

神獣様ですよね。」


「はっ、バレてたんなら仕方がないな。」


 我は人の姿になってやった。

人間でいうと十歳ぐらいか。

 ミコサマとジジュウがポカンとした顔をしている。


「あんた何者よ。まだ新米よね。」


カルラの姉ちゃんが頭を押さえつけながら言う。


「我は神獣の妖狐だ。まだ尾は二本しかないけど…。」


「二本って。猫又じゃないの⁈」


「違う!九尾の荼枳尼天(だきにてん)様の神苑の桃をこっそり食べたのを見つかっちまって下界で修行してこいって落とされた。」


「はあっ⁈何それ。」


「うっ…。」 



 ヒメサマが言った。


「では、しばらくの間人間界(ここ)で修行するのね。

どうする? 三条邸(ウチ)に来てもいいわよ。」


「いや、淑景舎(ここ)でいいかな。

ミコサマとても良い匂いがするし。」


「じゃ、ここに居ていいぞ。

小舎人童にでもなるか?」


「うん!」


「では私は新作の()()()()を持って来ます!」


と、ジジュウがウキウキ去って行った。

 この迦利迦利は、小麦粉や大豆の粉に鰹節や小魚を粉末にして練り込み焼いた橘侍従渾身の新作で、その味は真白のお墨付きである。


「まぁ、猫(?)としては我が先輩だな。しっかり見習え。」


と、マシロの兄キが言った。


「ふふっ。また賑やかになりますね。皇子様。」


「ああ。それもいいだろう。」


と言ってミコサマは我の頭をくしゃっと撫でた。



(ふうっ…。)


 我は小さくため息をつく。


 何だかいろいろ面倒くさいし、ヘンな奴らばかりだが、その時、ちょっとだけ、ちょっとだけ、楽しみだな、と思ってしまった我がいた。



侍従の為にもう1匹猫投入しました。(笑)


次回より、「第三章 陰陽師姫の失恋と最後の事件の話」の連載を始めます。

 後宮を去った伽羅と東宮となった翡翠。

東宮妃を狙う女達に虐められる?伽羅には新しいパートナー登場?

ますますすれ違っていく二人が選んだ結末とは。

宮中を震撼させる事件も起きて、伽羅と翡翠の最後の戦いにご期待下さい。


評価やブックマーク等いただけますと嬉しいです。

よろしくお願いいたします。


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