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陰陽師姫の宮中事件譚  作者: ふう
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閑話ニ ある守護者のため息

次はお猫様の独白です。

俺様、ツンデレをお楽しみ下さい。



 我はある女官をしている陰陽師の小娘の守護者である。

 (よわい)は、さあ?

前の都ができた時にこの国に渡ってきたからよくわからぬ。

 

 我は元々はこの小娘の祖父がまだわらわの頃、奴のたっての願いで主従の契約を結んでやった。

言っておくが、我が(あるじ)で奴が(しもべ)だ。


 この小娘の祖父は大変な術者であった。

我を膝に乗せ、あろう事か盛大に背を、腹を、耳の後ろを絶妙な手つきで撫で回す。

こうされると、我は抗う事が出来なくなる。


(くっ!我は誇り高き神獣ぞ!耐えろ…。)


いつしか我は自我を失い、つい喉をゴロゴロ鳴らして意識を失ってしまった。


 しかも、次の僕になったこの小娘は、更に手だれの術者であった…。


こやつはいつも、


「ただいまー。あー疲れた。」


と、言いながら帰って来て、我の身体をモフモフと撫でまわし、腹に顔を埋めてスリスリとする。

 そして抱き上げ喉の下を絶妙な手つきで撫で上げる。

こうされると我はつい小娘の懐あたりを前足で交互にチタチタと動かしてしまい、恍惚として時を忘れてしまう。

 何とも恐ろしい奴である。


 この小娘が最近恋をした。

相手はこの後宮に住んでいる小僧だ。


 この小僧、二人共に気がついてはいないが、魂がよく似た匂い、輝きを持っている。

それはとても清麗なもので、側に居て心地よい。

きっと二人とも血が近いのであろう。

神獣である我には分かるが。

それに、強い先祖神の加護の力を纏っている。


 そしてこの小僧の側には、我に対して不穏な行動をする、怪しげな男がついている。

 我を見かけると、ねっとりとした目つきで見つめ、気付くとすぐ近くまで来ている。

 時には庭の雑草の猫じゃらしや、束ねた紐を横目でチラチラと見ながら小刻みに動かしたりしている。

思わず反応しそうになった我は己れを戒める。


(いかん。我は神獣ぞ。決して猫では…。) 


 それが先日、我の自我を失わせ、誇りを粉々に砕く事件があった!


 あの侍従とかいう男め、我の目の前にそっと椀に入った何か液体のようなトロッとした薄茶色いものを置いた。


(な、何だ…この香しい匂いは…!

この深い味わい…。滑らかな舌触り…。)


我の理性を狂わせる。


(止まらない…! 止まらない!)


我は思わず叫んでいた。


「もう一杯!」


 男の満足そうな笑顔に、我の理性が屈した瞬間であった…。


 我は大きなため息をついた。


よかろう。

人間(ヒト)の生は短く儚い。

皆まとめて我の下僕としてやろう。

存分に我で癒されるがよい!!

 

 次の日、ポカポカと暖かい陽気の下、淑景舎の(きざはし)の所で、黒い腹を上に向け、頭を抱えてスヤスヤ眠る白い猫の姿があった。



 

 侍従は、この神獣をも狂わせる液体を「忠瑠」と名付けた。


侍従は隠れ猫好き。

でもちょっと残念かも。


しばらくお時間をいただいて、次回からいよいよ

第二章をスタートいたします。


少しシリアスな展開になる予定ですが、すれ違う二人の恋心と、試練を応援して頂ければ幸いです。


不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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