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陰陽師姫の宮中事件譚  作者: ふう
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第一章 陰陽師姫神隠しの怪に遭う話 十一

決戦前夜。


なかなか甘い話までたどり着かないのですが、もうしばらくお付き合い下さいませ。



 護国寺から帰った伽羅は、かるらと真白に今日のそこで見たものについて話をした。


「姫様、それって…。」


「ええ、間違い無いわ。

その琵琶がこれまでの事件の元凶だと思う。

明後日の十六夜の月の夜、必ず何か動きがあるはずよ。

その時に調伏する。」




 次の日、勤めをつつがなく終えた伽羅は急いで曹司に帰る。


「おかえりなさいませ、姫様。

お早いお帰りですね。」


 いつものごとくかるらがいそいそと重くて嵩張る上着や()を外してくれ、身軽になった伽羅は音もなく入って来た真白をひょいと抱き上げ


「ただいま。」


と、声を掛けた。

 真白はちょっと金色の目を細め、そのまま伽羅の膝の上で丸くなった。

伽羅はしばらくその背を撫でながら、知らず知らずのうちにまたため息をついていた。


「明日の事が心配ですか?」


「そうね。心配じゃ無いと言えば嘘になるけど…。」


 琵琶に憑く怪異と対峙すると覚悟も決めたのに、何度も父や兄に頼まれ仕事をしてきた伽羅であったが、ここまで強いモノの祓いは初めてであり、今までの陰陽師としての経験と自信よりも不安の方が正直大きかった。


 この世には人間(ヒト)人間(ヒト)ならざる者達が確かに存在する。

 伽羅は物心ついた頃より、他の人が見えないものを見、聞こえないものを聞くことが出来た。

 それらを怖いと思ったことは無かったが、自分の住んでいる世界のものとは違うものではあると感じていた。

 それらが何なのかは小さい頃はよく分からなかったが、祖父がその能力に気づき、自身の持てる知識の全てを伽羅に託すように導いてくれた。


「伽羅姫様、私達も共に参ります。」


かるらがそっと微笑んだ。


「ありがとう。

二人が一緒に来てくれたら心強いわ。」


と、伽羅もやっと微笑んだ。


 かるらと真白は縁あって伽羅を幼い頃から側で守ってきた。

実は、二人とも人間ヒトとは違う特別な強い力を持つ者達である。


 今は色々考えず、自分に出来るだけの事をしよう。

と、伽羅は気持ちを切り替えることにした。


 明日の祓いのために白く清浄な衣を着て禊を行い、精進潔斎しょうじんけっさいし気力を高める。

 強い法力で魔を退け長寿をもたらすという尊勝陀羅尼(そんしょうだらに)の呪符を四枚書き、自分の肌着の襟の部分に縫い付け、そのうちの二枚は翡翠と橘侍従の為に肌守りを作った。


 かなり夜も更けてきたが、明日と明後日は一の皇子様の計らいで、女官のお勤めは休みとなっている。


 褥に横になり、伽羅は眼を閉じる。

 

 なかなか目が冴えて眠れそうにないが、明日に備えて少しでも体力を付けておかねば…。


「お祖父さま、どうぞ私に力をお貸し下さいませ…。」


祈るように呟いた。

お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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