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89話 それぞれの事情②

「そうなんですの。エメラルド様もたいへんですわよね…」


 ミネルバとの雑談中、エメラルドのことが話題になった。

 二人は以前からの知り合い、そして貴族同士ともあって家の事情はすでに知っていたらしい。


 そしてその上で


「うちもそういった話があるので困りものですわ」


 そう、ミネルバは口にした。


「ミネルバも爵位を継げるはずなのに…とかそういう話、あるの?」


 まさか俺の周りにそんな人が二人もいるなんて、と衝撃を受けていた。

 だがミネルバは首を振る。


「違いますわ。全くの逆です。お父様が何が何でも私に、しかも今すぐにでも爵位を譲ろうとしているのですの」

「へ?なんで?」


 ミネルバは学生だ。

 学生で爵位を持つものは別に珍しくはない。

 ノヴァなんて大公だ。


 だが普通は卒業後だろう。

 なにせ爵位を継いでも学生生活があって執務にも支障が出てしまう。

 何が何でもいますぐに、というのは明らかにおかしい。


 俺の疑問にミネルバは困った声で答えてくれた。

 こころなしか金髪ロールも元気がない。


「ソラが一番の原因ですのよ?」

「お、俺?」

「そうですわ。あとはカレンに、ノヴァ大公。お父様ったら私のこの交友関係に大喜びなさってますの」


 ミネルバの父親、バレス侯爵はこう言っているらしい。

「でかしたぞミネルバ!陛下の兄君に、大公家どころか大公ご本人お二人と友誼を交わすなど!これでお前がバレス家を継げば、我が家が侯爵から公爵に返り咲くのも夢ではない!いや、むしろ必然となる!今すぐにでも家を継ぐのだ!そして皆様のお力をお借しいただくのだ!!」


 父親の言うことは間違いではない。

 ノヴァとカレン、二人の大公が共同で働きかければ公爵の一人や二人生み出すことができるだろう。

 現にアルヴィスはダインと一緒にそういうことをやっていた。

 貴族の位を上げたり下げたり。

 自分たちの好きなように。


 そして俺が力を貸せば間違いない。

 俺がサラに「ミネルバを公爵にしてあげて」と言ってみたところを想像してみよう。


「もちろんです!」


 そう言いながら笑顔で力強く頷くサラが容易に想像できてしまう。

 ミネルバの父親の念願は一瞬でかなうだろう。


 だが、ミネルバはそれを良しとしない。


「もちろん公爵家に返り咲くことは我が家の悲願ですわ。でもそれは実力が伴い、皆様に認めていただいてのこと。決してソラやカレン、ノヴァ大公のお力を利用してではありません」


 力強く語る。

 ちょっと元気が出てきたようだ。

 金髪ロールが光り輝いている。


「カレンと私はお友達。お友達は助け合いますが、利用し合うものではありませんもの。ね?」


 そう言いながらカレンの手を取り、ニコリと笑った。

 それにカレンはいつもの表情で即答する。


「ミネルバ先輩が公爵になりたいのでしたら、全力でサポートいたしますが?」


 あ、ミネルバが固まってる。


 でもすぐにもとに戻り、「お友達はそういうものではありませんの!」とカレンに説教をし始めた。

 カレンは素直に「そうなんですね」を繰り返している。


 同じ言葉を繰り返すのって興味がないからかと思ってたが

 カレンにとっては精一杯の返事なのかもしれない。


 興味なかったらガン無視するしね。



ミネルバパパは自分の代で公爵から侯爵に落ちたのでめちゃくちゃ気にしています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 正しき義と志を持ってるな、ミネルバは。 こういう心を持つ人が沢山いてほしい。
[一言] 相変わらずミネルバさん誇り高くてすこですわ~
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