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鑑定少女ジュジュの恋愛~イケメン鑑定士たちに言い寄られてるけど、とりあえず今は待って!~  作者: さとう


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事件

 パーティーの翌日。

 ジュジュは、ライメイレイン家にある鑑定の依頼品を物色していた。

 傍らにはアーヴァインがいる。


「では、これは?」

「えっと……」


 アーヴァインは、ジュジュに付きっ切りで指導をしてくれた。

 鑑定のレベルを上げるには、知識と経験が必要だ。

 経験は今こうして積み、知識はアーヴァインが与えてくれる。ジュジュは、銅製のモノクルを片目に当て、アーヴァインが差しだす小さな筒を見た。


「これは……万華鏡?」

「正解だ。中身を鑑定できるか?」

「えっと……宝石、だよね」

「正解。万華鏡の材料は細かな宝石。それぞれが高級な宝石のおかげで、鑑定の等級が高くなっている。宝石の種類は、ルビー、サファイア、エメラルド、トパーズ……どうだ?」

「あ……鑑定できた」


 宝石を使った万華鏡を鑑定できた。

 鑑定に必要な知識を得たからである。


「わぁ、鑑定できた!」

「おめでとう。宝石類の鑑定は、中級鑑定士では必須。まずは、原石を含めた全ての宝石の知識を頭に入れろ。それから、宝石を使ったアクセサリーの知識と、幅を広げていくんだ」

「うん! ありがとう、公爵様!」

「……それと、その公爵様っていうの、やめろ」

「え?」


 アーヴァインは、こほんと咳払い。

 少し言いにくそうに、ジュジュを見た。


「アーヴァインでいい」

「え、でも……」

「もちろん、今だけだ。人前では呼ぶな」

「え、でも……」

「おまえだって、二人切りの時は敬語を使わないだろう。それの延長だと思え」

「……わかった。じゃあ、アーヴァイン」


 ジュジュは、にっこり笑ってアーヴァインの名を呼んだ。

 ジュジュの笑顔を真正面から受け止めたアーヴァインは、そっぽ向いて顔を押さえた。


「どうしたの?」

「……別に」


 胸が熱くなった。

 鼓動が跳ねあがった。

 意味が分からない。アーヴァインは、ジュジュに悟られないように必死だった。


「アーヴァイン?」

「……さ、次の鑑定だ」

「う、うん」


 アーヴァインは、ジュジュを見ないようにしながら指導しなければならなくなった。


 ◇◇◇◇◇◇


 それから数日。

 ジュジュは、久しぶりに実家の鑑定屋に戻ってきた。

 外から店の外観を眺めると、すっかりペンキは落ちている。

 店内へ入ると、砕けたカウンターや割れた花瓶などもすっかり元通りだ。

 カウンターには、新聞を広げる祖父ボレロと、アーヴァインの部下で鑑定士のダニエルがいた。ここにはいないが、アーヴァインの命令で鑑定屋の周りを警護する変装兵士が十人以上いる。

 ジュジュは、ボレロの座るカウンターへ向かった。


「ただいま、おじいちゃん!」

「おお、おかえり。なんだ、元気そうじゃな」

「えへへ。あ、ダニエルさんもこんにちは! お手伝い、ありがとうございます!」

「いえ、こちらこそ、ボレロさんに勉強させていただいています」


 ダニエルは、アーヴァインの部下で最も優秀な鑑定士だ。

 おかげで、ボレロも随分と楽をさせてもらっているらしい。


「さーて。久しぶりにあたしもカウンターに立とうかな。ダニエルさん、交代しよっ」

「ですが、ジュジュ様はたった今戻ったばかり。お休みになられては……」

「大丈夫! いやー、堅苦しい高級品ばかり鑑定してたからさ、たまにはここに持ち込まれるボロきれとか、臭いツボとか鑑定したいのよ」

「ジュジュ、お前……言うようになったのぉ」

「えへへ。ダニエルさん、お願い」

「……わかりました」

「ん!」


 ジュジュは着替え、カウンターへ。

 ちなみにボレロは、ダニエルから『チェス』を習い勝負している。いつもやっている『碁』と違った面白さがあると言って、何時間もやっているらしい。

 ジュジュは、いつものエプロンを着てカウンターに座った。


「ん~……やっぱりここ、あたしの家だなぁ」


 お茶でも淹れよう。

 そう思い、席を立とうとした瞬間だった。

 カランカラン───と、安っぽいベルが鳴り、ドアが開いた。


「いらっしゃいませー……ん?」

「もう、汚いところね」


 数人の騎士を連れ、一人の令嬢が入ってきた。

 真紅のドレスを身に纏い、口元を扇で隠している。金色の髪は見事なロールを巻き、どう見ても場違いな貴族令嬢だった。

 ポカンとしていると、貴族令嬢……バネッサが言う。


「ごきげんよう。ローレンス男爵令嬢……いえ、偽物の令嬢。まさか、ただの平民がアーヴァイン様の部下になるなんてねぇ」

「…………あ、あの時の!」

「別に、名を覚えてもらう必要はないわ。貴族令嬢だったら対等な存在だけど……ただの平民なら問題ない。いくらアーヴァイン様が爵位をお与えになってもねぇ」

「えっと……鑑定のご依頼、ですか?」

「はっ、そんなわけないじゃない。あなたに伝えたいことがあって来ただけよ」


 バネッサは、ドレスの裾を持ち上げた。


「このたび。わたくしバネッサは、アーヴァイン様の婚約者となりました」

「え……」

「ふふ、残念だったわね。玉の輿狙いだったみたいですけど……ああ、ボナパルト公爵様やゼロワン第一王子がいたわね。そっちにしたらどう?」

「えっと……」

「では、ごきげんよう。ふふふ、おーっほっほっほっほ!!」


 高笑いをしながら、バネッサは出て行った。

 ジュジュは、ポカンとしながら呟く。


「…………え、婚約者?」


 わけもわからず、ジュジュは唖然としていた。

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