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第3話【お使い】


 ガタゴト・・・ブルヒヒン


「ありがとうございましたー!」


「はいよ、毎度あり」―



 馬車から降りると、大きく身体を伸ばした。


「やーっと着いたー!」


 ここは、ウルク王国の城下町、ニブル。

東西南北の門から壁を(へだ)てており、その中心に城を構えている。

そして私は、南の門に降り立っていた。


 流石は城下町。

たくさんの人々で溢れかえっていて、

人混みの隙間から、色んな露店が目に映った。


「あぁ・・・ここはやっぱり、いつ来ても楽しい所だなぁ・・・。」



 私が辺りを見回していると、色んな香りが私の鼻を刺激してきた。


「ん・・?スンスン・・・あっ、焼き立てのパンの香り・・・。ん・・・

こっちは甘い匂い・・・、あぁ~クレープだ~・・・」


私はジュルリと生唾(なまつば)を飲むと、ほおけた顔で歩き出した。



 「は〜・・・まだお昼前だけど・・・あぁこんな誘惑・・・」


すっかり目的を忘れフラフラ歩いていると、


「おい、そこのお前!止まりなさい!」


と、突然呼び止められた。



 「へっ!?わ、わわわ私ですか??ご、ごめんなさい!

でも私!今きたばっかりで何も!何もしてないんですけど〜・・・」


言いながらゆっくりと振り返ると、相手の足元には鉄製のブーツに槍の長い柄が見え、

徐々にその姿が視界に入ってくる。


 腕に着けたガントレット、たずさえた槍、肩の国章、厚い鉄の胸当て・・・、

目に映るそれらが、兵士である事を物語っていた。

その姿に顔を蒼くしながら、最後に相手の顔へと目をやると、



 「った、タルトルさん・・・?」


 見知った顔だった。

 タルトルさんとは、ちょうど私が一人でお使いに来るようになった頃に出会い、

2年くらい前からの付き合いだった。

と言っても、たまに街で見かけて話す程度だけど・・・、たびたび彼は私をからかうのだ。



「・・・んあぁーーーーーー!びっくりしたぁ~~~~~・・・。

・・・って、またですか!?どうしていつもびっくりさせるんですかー!

本当に捕まっちゃうかと思ったじゃないですか!タルトルさんのバカー!」


私が怒ると、


「ハッハッハ、悪い悪い。今日は仕事でな。

駐屯所から姿が見えたもんだからついな。へへへへ。」



 (笑ってごまかしやがった・・・。っていうか絶対悪いと思ってないでしょ!)

私がタルトルさんの信頼度をガクンと下げつつ、


「も~!タルトルさんは本当にイタズラ好きで困りますよぉ・・・。

心臓止まっちゃうかと思いましたよ・・・」


と言うと、


「ハハハハ、・・・おっ、その籠を背負ってるってことは、今日もお使・・・いっ?!」


タルトルさんは突然、私の顔を見て急に驚いた。


 そして、


「めちゃくちゃヨダレ垂れてるよ、ライラちゃん・・・」


と言って私の顔を指さした。



 「え?・・・あっ、あ!ひゃっ!ほんとだ!ジュル。うわわわ、は、あ、アハハハハ」


私の口からは、でろーっとヨダレが垂れていた。

(恥ずかしすぎるぅぅぅ!!!)


 そして思い出した。


「ハッ!そうだった!あまりの誘惑に危うく目的を忘れる所でした・・・。

ニブルは恐ろしい所です・・・。

しかしタルトルさん!ふふふ・・・。よくぞ聞いてくれました!

実は・・・今日はいつもとは違うんですよ♪」



 そう言って私は腰に手を当てると、


「なんと今日はですね、マシュ山の頂上の星空石を採って来いと言われまして・・・。

それで、その石を使って、私の作りたいものを上手に作れたら、

親方が推薦状を書いてくれるって・・・、ついに!ついにです!クゥゥゥっ」


と言って、ぴょんぴょん跳ねた。

(はやくっ採りにっ行きたいっ!)


 そんな私を見てタルトルさんは


「へー、そりゃ良かったな!

にしても、マシュ山の頂上かぁ・・・。大丈夫なのか?

俺も一度訓練で行った事あるけど、頂上までは行かなかったな。

あの山かなり高いし・・・、しかもめちゃくちゃ険しかったな・・・。

出来れば俺はもう行きたくねえな・・・」


心配したかと思うと、勝手に思い出して、肩を落としながら言った。

(私の心配は・・・?)


 そんなタルトルさんをよそに、


「だいじょうぶですよぉ!

いつもやってるお使いに、ちょーっと毛が生えた程度ですよ?楽勝です!

それにだいたい、()()()()()()()()()()()()()!ふふん!」


と、私は指を二本付き出して言った。

 

 ちなみにこの国では、職人や商売を営んでいる一般人はギルドに加入出来ないらしく、

代わりにギルドの冒険者さんが受ける依頼に付いて行くことができるのだ。

そして、そこで自分たちの仕事に必要なものを調達したりしている。

ちなみに見習いの私がどういう扱いになるのかは、知らない!(ドヤ)


 私がピースしながら答えると、


「アッハハハ・・・、

まあ、君がそんじょそこらの女の子じゃないって事は分かってるけど・・・」


と言いかけて突然、


「あああああ!そうだった!つい昨日、ギルドが規制されたんだよ!」


と、慌てだした。


 急な言葉に面食らって


「エッ?き、規制!?な、なんですか・・・?何が規制されたんですか・・・?」


と、私が恐る恐る聞くと、


「それが・・・ギルド協定法?だかなんだかってアレで・・・、

悪い、俺もよくわかんねえんだけど、急に決まったらしくて・・・。

とにかく、国の認定証を貰ってる人・・・つまり君の親方のロハイさんとか、

そういう人じゃないと、今ギルドは使えないらしいんだ」


と言うと、


「ライラちゃんもそうだけど、困る人がたくさん居ると思うんだけどなぁ・・・」


そう言ってタルトルさんは軽く頭をかきながら、うーんと唸った。



 「ええええええええええええええ!?

っていうか親方そんな事なんにも・・・、

って、じゃあ私、一人で行くことになるんですか?!

ぼ、冒険者さんに付いて行けないんですか!?!?!?」

果たして、ライラは無事マシュ山へ行けるのだろうか。


読んでいただきありがとうございます。

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