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psycho12

 テスト終了、結果報告、赤点回避いえーい。


 今日までのまとめ。

 まあ、色々あったといえばあったし、いつもと同じといえばそうだった。


 勉強したり、ゲームやってて怒られたり、煮物系の料理が苦手なのが紗衣子にバレたり、それからはこれ見よがしに紗衣子が煮物系作りはじめたり、その度に謎野菜ぶち込もうとするのを阻止したり料理バトルに発展したりと…色々あった、あったんだよ。


 まあテスト勉強終わってからは紗衣子が我が家に来る理由も無くなったので、司が少し寂しがってたが。

 うん、司がだぞ?



 そんで、『紗衣子水』目当てに毎朝彼女のマンション経由で学校に通う様になったが、テレパシーはあれから出てない。

 あとは、水芸の飛距離が少し伸びたか?

 地道に成長しているのかなー、ハハハ。


 ちなみに、水の日には水筒、風の日にはミニファン、電気の日には静電防止グッズを持ち歩いてる彼女だが、スプーン曲げの日にはスプーンを持ちあるいてる、大体5・6本。

 髪型とかも微妙に変えてるらしいし、ヘアアクセもその日の超能力にちなんだ物になってる、面倒な事をやってるな。

 ぱっと見て今日は何の日か分かるから、こっちはありがたいが。

 俺にしか意味は無いんだがなー。


「でも、別にスプーンは持ち歩く必要ないんじゃね?」

「何でよ、いざという時の為に必要でしょ?」


 そんないざという状況は無い。

 いま登校時だが、一緒に歩いてたりするとカチャカチャ音がして気になる。


「それで、テストの結果はどうだったのよ」

「とりあえず全教科、平均点位だった。

 順位は…真ん中よりちょい下って感じになったなー」

「何よ、やっぱりやれば出来るんじゃないの!」


 うんうん、俺もびっくりだわ。

 さすが紗衣子さん、えっちなカテキョの効果はばつぐんだ。

 いや、四六時中そんな目では見てませんよ? ごくたまにですよ?

 ただ、家庭教師しにくる日は何故だか大体”電気の日”になったがな。

 ゲームやろうとするとパチッってされるから、ゲーム機やPCにさわれん。


「それじゃ、なんで審は職員室に呼び出されたわけ?」

「前回のテストとあまりに点数がかけ離れているから」


 成績、上げ過ぎたなー。


「カンニングでも疑われてるの?

 審はちゃんと勉強してたじゃないの!」

「それもあるが、ぶっちゃけると出来るんなら最初からやれ次回もやれって念押しの意味で呼び出されてる」


 前回はかなり…先生と母さんに怒られたからな。

 だからこそ今回は頑張ったんだが。

 そこで今回の成績を受けて、褒められるどころか「お前今までどれだけサボってた?」と怒られるハメになったわけで。

 これがもう事実だから、ぐうの音も出ない訳だハハハ。

 いや、マジで今まですいませんでした。


「だから本気でカンニング疑われてる訳じゃない」

「日頃の行いとはいえ不憫よね…そういう事ならあたしも一緒にいって説明してあげる!

 あたしが教えました! って言えばいいでしょ?」

「いやスーパーの生産者表示じゃねえんだし」


 まあ、成績上がったのが同級生女子のお陰だと知られるのは、ちと恥ずかしいが…それが一番手っ取り早いか?


「助かるけど…変な噂たっても知ら――」

「あたしと審の関係なら『委員長とのケンカを仲裁してもらってから話すようになった』って周りの女子には言ってあるから気にしなくていいわよ」

「…聞いてないぞ、その話」


 なんだその、あらかじめ考えてあった感じの設定。

 根回しの手際良すぎんだろ、女子こわーい。


「別に後ろめたい事なんて無いじゃない、普通に友達だって言えばいいのよ」

「いや、色々バレちゃいけない事は有るんじゃね?」


 超能力の事とか。


「そう、その為よ。

 いっそ友達って触れ回っておけば、一緒に居ても自然でしょ?」


 たしかに、隠れてコソコソするのも限界があるか。

 あれから友達になりましたー、とか言ってた方が自然ではある。


「テレパシーの一件もあるし、普段からある程度一緒に居ても自然に思われる関係の方が便利だな」

「そう言う事よ」


 一番バラしたくないのは、超能力の事だし。


 とか考えてたら職員室についてしまった、紗衣子はしっかり後ろについて来てるから、本気で一緒に説明してくれる気なのか…まあいいんだが。


 うちのクラス担任は女性教諭の畑中(はたなか)先生。

 なんつーか、姉御肌の先生? まあ良い先生だな、ちょっと問題はあるが。


「――話は分かった、伊東が勉強を教えてたのは意外だったが…それはもういい。

 大体カンニングとか騒いでたのは教頭だ…普段は生徒の可能性を信じましょうとか綺麗事を言う癖に、実に忌々しい偽善者だ」


 おー相変わらず辛辣ゥ。


「それでだ…眞木、この成績維持しろよ?」


 え、ずっと?

 イヤですよ面倒くさい。


「俺の頭じゃ無理です」

「嘘を吐くな、貴様の入試での成績は知っているんだぞ」


 怖っ、生徒に貴様呼ばわりとかホントに教師か?

 何というか、教師というよりも鬼教官って感じ。

 ビビってちびりそうなんだけど。

 俺の事は結構なんで、姉御は帰って焼酎でも飲んでて下さいよ。


「大体な、眞木は成績の浮き沈みが激しすぎだ、少し平らにならせ(・・・)

「低い方に?」

「高い方にだ馬鹿者め」


 ですよね、分かってました。


「貴様の場合はやる気にムラが有りすぎる、まず最低でも毎回赤点は回避しろ、私は本気で留年させるからな?」

「わ、わっかりました!」


 留年は流石にマズい、母さんにも迷惑かかるし。

 ただまあ、この人はガラ悪いけど良い先生ではある。

 さりげなく赤点回避まで最低ライン下げてくれるし。


「次のテストもあたしが見るので、大丈夫ですよ先生」

「そうか…確か伊東はこのバカ者の面倒を見ながらにもかかわらず、今回11位だったな、おめでとう。

 まあ、私も眞木の面倒をお前が見てくれるのは頼もしいが、少しでも手に余るなら見放すように。

 自分の成績を第一に考えてくれ」

「それは心得てます、畑中先生」


 おれも、紗衣子ウオーター貰えなくなるのでがんばりますよ?

 うん、さぼってゲームしないし。

 だから紗衣子さんも先生も、その冷めきった目はやめてね?

 ん、今ゾクッと来た。

 四つの冷めた視線を向けられると、こう…変な性癖目覚めそう。


「それでは私からは以上だ、二人ともご苦労だったな。

 ああ、いや待て…悪いが頼みがあるのだが、帰りにこれを教室に運んでおいてくれ」


 はいはい、その位ならお安い御用で…なんだこれ?


「遠足のしおり?」

「眞木、お前は…HRの話聞いてなかったな?」

「審は、よくぼーっとしてるものね……」


 あれー、話しあったか?

 そういや、なんかそんな事言ってたかもな。

 HR長引くと眠くなるんだよな。


「では改めて今回の遠征の内容を説明してやる、よく聞け。

 お前ら浮ついた半人前以下のガキどもを、我々賢い大人が引率しながら大自然だけが取り柄のキャンプ場に向かう。

 普段はBBQ(バーベキュー)ジャンキーが歓喜しながら肉の塊に噛り付いてる場所だが、そこで何故か強制的に豚汁を作らせる、クソみたいな旧時代的学校行事だ。

 こいつを職員会議に持ち込んだクソ教頭は、1学年生徒間の交流と調理実習を同時に行う画期的なイベントとかのたまい、クソ暑い会議室の体感気温を真冬並みに調整してくださった。

 あのクソ教頭は薄い頭の内部にあるフラワーガーデンで、ハッピーハーブをキメてるとしか思えんな。

 試験問題作成や採点で精根尽きかけた直後の我々教員に対する嫌がらせであればぶん殴ってやるのだが、本人は善意でやってる所がまた始末に負えない。

 パワーハラスメントで訴えてやろうかと思った程だ、正直面倒事でしかない。

 大体、何か問題が起きれば我々下っ端教員の所為にされる。

 靴底にへばりついたガムを床に擦り付けるかの如く責任を擦り付けるだけな上に、言うだけで何の役にも立たないクソ教頭の自尊心が満たされるだけのクソイベントに――」

「あの、畑中先生、概要はもう分かりましたんで、そのくらいでホントに…」


 ほら、数学の先生とか顔真っ青にしながらコッチみてますから。

 あの人って学年主任でしょ? あまり胃を傷めつけないであげて。

 畑中先生って教員じゃなくて軍曹って感じじゃね?


「先生、つまりこれ明日のHRで配る『遠足のしおり』ですね?」

「そう言う事だ伊東、班分けは『普段疎遠な生徒同士で組ませて、仲良くなる切欠を』とかクソ教頭が言ってたが、どうせそんなの分からんし私も知らん、好きに決めさせろ。

 大体私から言わせれば、普段から仲悪い連中同士で寄せ集めの仲良しごっこさせても上手く組織が回る訳ないだろうが、頭髪だけでなく中身までスカスカの――」

「先生その辺で」


 ほら、また数学の先生が…あ、胃薬常備してるんですね。

 お大事に。


「んじゃ俺たち、しおり置いたら帰りますんでー、失礼しましたー」

「悪いが頼んだぞ」


 よし、さっさと脱出しよう。

 学年主任が病気療養のために交代にならなければいいが。

 まあ、生徒である俺たちが心配する事ではないな。


「しかし、班分けとか面倒だなー」

「面倒だなーじゃないわよ、審はあたしと組むの」

「え、あれ? それはいつ決まったの?」

「あたしが今決めたのよ」


 いやいやいや、まてまてまて。

 紗衣子さん、相談とかそういうのは無いの?


「…当日、また変な能力でちゃったら大変でしょ? お願い、ね?」

「ああー…そ、それもそうだなー、仕方ねえなーハハハ。

 いや…でも他のメンツはどうすんだ?」

「一人は委員長とあたしの友達で…あとは審の男友達でいいわ。

 一応、男女各三人で六人にしないといけないから、男子は適当に二人入れていいわよ、あたしばっかり希望いうのも悪いし。

 あっ…ごめん友達いなかった?」

「いいいいるわい友達くらいっ!」


 察すな。

 いや教室じゃ他の男子とは結構話すぞ?

 班に誘える位に仲いいヤツがいないだけで。

 二人…ギリギリ大丈夫かな。


「明日、班別け決めるまでに委員長には根回ししておくから宜しくね」

「お、おう…」


 根回しって…こういう時にクラスの行事を仕切れるヤツが身内にいると便利だな。

 …そうか、リア充達は普段こうやって都合よく班別けしてるから余らないのな。

 おのれリア充め。


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