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プロローグ転 仲間を増やそう!

「このままじゃ世界征服どころか村人ABCとの対戦で全滅だぞ~!」


スライム達は魔王城の階段をぴょこぴょこと飛ぶ。

はたしてこれがレベルアップに繋がっているのかは謎だ。


「私はうれしいですぞ、魔王様がこんなにやる気になって」

「いや、あいつらの弱さを見るとな・・・せめて仲間がもうちょっといれば

ここを拠点にもう少し魔王“軍”らしいことができるのになあ・・・」

「ふむ・・・でしたら世界各地に散り散りになった魔王軍や四天王候補を探すのも

手かもしれませんな」

「四天王候補・・・?」

「先の戦いで様々な幹部の方々もやられてしまいました・・・ですがその幹部や

武官を輩出した種族の集落はこの世界のどこかにあるはずなのです」

「そうか、そいつらを集めれば・・・!」

「ええ!魔王軍復活ですぞ!」

「なんだかやる気がわいて来た!ケルト、お前はその情報をまとめておけ!

スラ吉、階段往復あと100セットだ!俺もやる!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


その話から数週間が経過したころ。

タクトは魔王城の近くの牧場で牛の世話をしていた。

情報収集にあたって現地通貨が必要だと判断し始めた事だが思いのほか

性に合っていたらしい。


「おぅい、タクトや」

「はーい」

「今日の分だ、お前が来てから本当たすかっとるよ。跡継ぎもおらんで大変での」

「いえ、俺も働き口が見つかって助かってるのでお互い様ですよ」

「ほほ、毎日毎日山のぼるの大変じゃろ、ほれもってけ」


ドッサリ、と手作りパンを貰う。

食欲をそそる匂いが腹を鳴らす。


「どれどれ、さっそく」


パンと一日分の給金。現代とは程遠く硬いパンを齧りながらポケットを漁る。


「銀貨3枚と銅貨5枚、うぅむ。価値がわからん」

「タクトさん」

「ん、あれ?なんで?」


牧場の入り口にライトが立っていた。


「牛乳を買いに来たんです。やっぱりここで働いていたんですね」

「ああ」

「ちょっとお話しませんか?」


ライトは牧場の策に腰掛ける。


「タクトさんは夢とか、あります?」

「ん?夢。夢か・・・」


ぼうっと空を眺める。


「世界征服」

「え?」

「ハハハ、冗談だよ。今のところはここで働いて。この牧場のジイさんに気に入ってもらって

もし万が一にでも継がせてもらえたらなって思うよ」

「そう、ですか。びっくりしましたよ」

「お前はどうなんだ」


ライトが視線を落とす。


「私は、わからなくなってしまいました。やり遂げるべきことをやり遂げて

何をすべきなのか」

「ふぅん。なんか大変そうだな。だけどそんなの、簡単だろ」


タクトは寝転がる。


「何にもしない!ゴロゴロしまくるんだ。そしたら」

「そしたら――?」

「もっとやる気がなくなる!」

「ぷっ、ふふ。なんですかそれ」


ライトがおかしそうに笑う。


「そしてゴロゴロし続けたらこんな俺でも変われる機会が回ってきたんだ。

だから好きなようにやるだけさ。まあアレだよ。果報は寝て待てってやつだな」

「カホウ?」

「ことわざは流石に通じないか・・・」

「魔王様、お疲れ様!」


寝転ぶタクトの胸にスライムが飛び乗る。


「お前は・・・スラ男!」

「スラ吉だよ!」

「・・・スマン」

「本当に懐いてるのですね」


ライトは立ち上がる。


「では、私はこれで。やるべきことも・・・」

「何か言ったか?」

「いえ、何も」


ライトは牧場を後にし、スラ吉と立ち上がり岐路につく。

スラ吉は足元をぴょこぴょこ跳ねながら器用にタクトに歩幅を合わせる。


「バイトなんてしてる前代未聞の魔王様にお知らせだよ!」

「バカにしてる?」

「ケルト様が魔王四天王について情報を得たって!」

「本当か!すぐ戻ろう!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「おお、魔王様。よく戻られました・・・ちょっと臭いますな」

「牛の臭いだ、気にするな」


タクトは服の匂いをかぐと確かに独特のにおいが残っている。

まて、ケルトって嗅覚があるのか?


「ゲホン、四天王の情報を集めていたのですが、朗報ですぞ。全滅していたと

思っていた四天王のうち一人は封印されています」

「おお!」

「場所はこの山の裏手にある洞穴から入るダンジョン、“アビス”」

「・・・名前からして超危険なダンジョンなんじゃないか?」

「危険でしたとも!あの勇者が現れるまでは」


ケルトが拳を地に叩きつける。


「勇者一行に全ての魔物は駆逐され・・・四天王“リリス”様も敗れ封印されました」

「何故こいつだけ封印なんだ?」

「さぁ・・・そればかりは、わかりませんな」

「ふむ・・・ともかく行ってみる。スラ吉ー!」


扉からパタパタとスライムが入ってくる。


「はいさ!」

「残り三人は留守番だ。特に何も無いとは思うが城を守るルーチンも作っておきたい」

「はっ、お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「うむ」


スラ吉を方に乗せる。


「本当にお前スラ吉だよな?」

「へっ!?」

「スラ美ではなさそうだ・・・」

「魔王様?」

「最近気づいたのだが、俺は脚が早い」

「ぴえっ!」


埃を撒き散らしタクトは魔王城を後にした。

谷を飛び、川の水面を走る。


「ままままま王さま、アビびびビス通り過ぎてる」

「む」


走り始めて約三分、洞穴らしき岩場を見つけた。


「おお、ここがアビスか」


おどろおどろしい妖気が・・・溢れてはおらず、ただただ岩が作る洞穴。

タクトは足を踏み入れると、周りには乱雑に転がる武器や道具。


「冒険者と魔族の戦った跡か」

「悲しいね、皆死んじゃったのかな」


面識が無いとはいえあたりに散らばる痛々しい傷跡に心は痛んだ。


「どれ程の戦闘を繰り広げればこんな・・・」


暗い洞穴を抜けるとどこにそんな空間が隠れていたのかと言うほどの

大空洞。

その中に作られた迷宮とも呼ぶべき入り組んだ足場と数々の冒険者を

屠ってきたであろう罠の数々。


「スラ吉、押すなよ」

「え?」

「絶対押すなよ!!」


タクトが楽しげな表情でスラ吉を見つめる。

真っ赤な「いかにも」なボタンに指を触れ。


「魔王様!絶対それ、アカンや・・・」

「ぽち」


ベタに落下してくる巨大な球場の岩石。


「なんで押しちゃうんですかー!」

「退屈な散策にちょっとした刺激をだな・・・」

「いらないです!」

「お、何か踏んだぞ」

「ぎゃー!床がー!うおー!アチィー!」


床が崩れ、毒煙が放たれ、火球が散り、ありとあらゆる罠を息絶え絶えで

掻い潜りようやく最奥の間にたどり着く。


「どうして・・・あんなに罠が・・・」

「どれか発動したら魔物が現れる、なんて罠があるかもしれないだろ」

「わざとだったんですね・・・最初に言ってくれれば・・・」


目の前に見える棺桶のような金属製の箱に、何重にもまかれた鎖。

そして幾重にも施された結界。


「・・・結界ってどうやって解くんだ?」

「スライムがそんなことわかるわけないよ・・・これは勇者一行が最大の

魔術をもって施した封印と聞いてるけど。よほどの事が無い限り・・・」


バキイ!と雷電を散らしながら崩壊してゆく結界。


「案外力づくでなんとかなるな」


目を点にしたスラ吉を他所にタクトは結界をお菓子の包装紙を破るかのように破壊。


「むん!」


鎖を引き千切り、棺桶の蓋を開ける。

中から銀色の髪をした女が現れる。


「お前がリリスか?」

「・・・」


意識がはっきりしないのだろうか。

タクトをぼうっと眺めると再び眠りに落ちてしまった。


「案外簡単に終わったな」

「え、ええ。そうだね」


タクトはリリスを背負い、アビスを後にした。

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