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虚言男子は女神を求む  作者: 氷雨 ユータ
ハバカリさん
8/13

血の灯 女子の部

 ごたついた影響で短めにせざるを得ない。

『こちらは異常なし。引き続き探索中』


 体育館のトイレからは収穫無し。シュウキというのは何処に居るのだろうか。

「由利! そっちはどうだった!」

「何も。そっちは」

「ああ。男子トイレは全く掃除がされていなかった。個室トイレの臭い事と言ったら無いぜ!」

 こんな時間帯に人が居る訳ないから別に二人で入っても良かったけど、我妻が勝手に『そういう事をするならもっと関係が進展してから!」と照れだしたので、こうして性別通りのトイレを調べている。関係が進展するも何も、私は彼とは知人以上友人未満の関係としか思っていない訳だが、何を想像しているのだろうか。

 

 ……今更、恋が出来るなんて思ってない。


 所謂青春と呼ばれる類にある思い出や行為に憧れが無い訳ではないが、オカルト部は青春とは全く無関係だ。この部活に入った時点で、そういう楽しそうな行いは捨て去っている。普通の幸せを捨てるとまで行ってしまうと、少々大袈裟か。しかしこの部活に入ったからには変人認定必至。希う事自体間違っている。まさかこんな女性を好きになってくれる人が……居るとも思わないし。

 それはネガティブ感情から来る自虐ではなく、自分自身に正当な評価を下した結果だ。決して不細工とは言わないけれど、女性は愛嬌の良さが物を言う。無愛想ではたとえ美人でも男性受けは悪い。もし無愛想でもそのパターンに嵌まらない女性が居るとすれば……残念ながら同級生に一人心当たりがあるけれど、それは彼女の美しさが現実離れしているからだ。 

 私よりずっと美人で、身体も……男受けする。だから彼女は例外としても、私にまで同じ道理が通用するとは思わない。単純に無愛想、そして変人。これだけでも誰かが好きになってくれる可能性は一パーセントを切っている。

 自分でも直さなくては、と思うけれど、こればかりは性分と言うか、時間によって積み重ねられてきたものだから直しようがないし、別にいいかと思う自分が居るのも、また真実だ。クオン部長は信用出来ないけど、この活動そのものは私の性に合っている。

「次はどうするかーだよな。どうするッ? 部長の指示でも仰ぐか?」

「……二階に行く」

 萌が三階、陽太君と新入り君が何処かの教室、部長達が一階なら、消去法的にそちらへ行くしかない。少し学生視点からの話になるが、自らの教室と同じ階のトイレが混んでしまった時、二階は激戦区となりやすい。一階からも三階からも同程度の距離でアクセスできるからだ。

 遥か昔、怪異は信仰や呪いから生まれる事が多かったが、現代の怪異の多くは噂や恐れを原因として発生している。シュウキと呼ばれる怪異がマイナー処か九蘭高校内でしか広まっていない以上、間違っても前者を原因としてはいない。部長曰く、『前者の怪異は強すぎてまともに手を出せばこっちが破滅するだけ』らしい。

 ならばシュウキは噂や恐れから生まれた可能性が高い。そして決まって被害がトイレで起きている事から、導き出される結論は只一つ。一番アクセスの多いであろう、二階で遭遇する可能性が高いという事だ。

 遭遇したら無論襲撃はされるだろうけれど、オカルト部は襲撃されてこそだ。私達は直にそれを見て、触れて、調べる事で見識を深める事を目的とする。死ぬかもしれない、動けなくなるかもしれないという危険に躊躇していたら、この部活動は務まらない。

「我妻は、どうする」

「んん? 勿論お前に同行するぞ! ナイトだからな!」

「……そう。期待はしてないけど」

「期待なんてしなくていいぞ、俺が勝手に守るだけだ! ハッハッハッハ!」

 こういうのに構うと碌な事が無いので、私はスルーを決め込み、足早に校舎まで移動。廊下の先を歩く人影は部長だろう。私は視線を外し、階段を上った。












 

   


「シュウキは何処に居るのかな…………」

 シャッターチャンスは逃さない。私は携帯のカメラを構えながら、いつ怪異が出現しても良いように備えていた。いつもはちゃんとしたカメラを使うんだけど、クオン部長がご飯に連れて行ってくれるって言うから、ついつい忘れちゃった!

 だから携帯のカメラで代用しているんだけど、実はあまり気が進まない手段だったりする。うっかり携帯の電池でも切れてしまえば、いざ発見したとき、私はそれを誰にも教えられないからだ。


 …………ううん。違う。


 もう教えられないか。携帯を見遣ると、電波強度を示している部分が圏外になっている。まだ姿を現していない、見つけられていないだけで、もう『シュウキ』は出現している。胸の奥が引き締まる様な感覚を覚えて、私は服越しに胸を抑えた。こうして手を当てていると、心拍がドンドン早まっている事が分かる。


 それは興奮かもしれないし、恐怖かもしれないし、只の緊張かもしれない。


 でもこの感覚が好きだから、どんな目に遭っても私はオカルト探求をやめたりしない。ゆうくんが残してくれた、趣味だから……ゆうくんを忘れない為にも。

「…………あれ?」

 気のせいだろうか。今、廊下の先の方に……藤浪君と陽太君が居た様な。でも二人は何処かの教室に居る筈じゃ……でも私の携帯は圏外だから、何処かに移動しているとしてもチャットは更新されないか。

 しかしどうして、こんな所に。シュウキを探している様には見えないんだけど…………?

 主人公視点が歓迎されないって何気にレアでは?

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