悪循環
こんにちは、目でピーナッツを噛む程度の能力を持った トウド というものです、皆様初めまして。前書きって何を書けばいいのか悩みますよね……ということを前書きに書いてみたり。さて、初投稿で至らないところがあると思いますが(絶対ある)少しでも見て頂けるとありがたいです。
朝起きて、顔を洗って、朝食をとって、学校へ行く。
いつもと変わらない朝。
授業を受けて、給食を食べて、友達と遊んで。
いつもと変わらない昼。
宿題やって、お風呂に入って、ご飯を食べて寝る。
いつもと変わらない夜。
人生はそれの繰り返し。それをつまらないって言う人もいるけど僕にとってそれは楽しく、幸せだった。
でもそれはいつまでも続かない。
これは僕が体験した話だ。
「おいボールそっちにいったぞ! パス、パース!」
「おっと、行くよ~!」
学校が終わった放課後、僕はいつも通り友達、いや親友の美紀ちゃんとサッカーをしていた。本当はもう小学生は家に帰らないといけない時間だけどサッカーをやっていると、どうしても時間を忘れて遊んでしまう。
でも、そろそろ日が暮れる。
「カー、カー」
まるでもう時間ですよと僕たちに告げる様にカラスが鳴いた。
「ラストシュート!」
僕が蹴ったボールはボテボテと転がりながらゴールへと吸い込まれていった。
「ナイスボール」
「今日はこの辺で終わろうか、いやぁ冬になって太陽が沈むの早くなったね……」
「そうだね、まだ遊び足りないや」
そう言って美紀ちゃんは僕が蹴ったボールを拾ってくれた。
「よし、じゃあ帰るか!」
「あ、うん」
「お~い、美紀ちゃ~ん」
遠くで声がしたと思うと隣のクラスの女子が一人、美紀ちゃんを呼んでいた。美紀ちゃんは最近あの子とよく帰っていた……美紀ちゃん、僕が知らないうちに隣のクラスにも友達出来たんだ……凄いなぁ。
「じゃあ木村君、また明日!」
「うん! また明日!」
僕は手を振った。明日はなにをして遊ぼうか、なんて考えながら。
美紀ちゃんの背中がどんどん小さくなっていく、僕も早く帰らないと……
そして僕はいつも通り夜を越えた。それから当分、美紀ちゃんは学校に来なかった。
一週間前の放課後から、僕は美紀ちゃんの姿を見ていない。先生によるとインフルエンザにかかってしまったらしい……インフルってこの時期にもなるんだ。
朝六時三十分、シンプルなデザインのシンプルな音がする目覚まし時計が鳴って目が覚める。部屋を出てみると一階から漂うのはお味噌汁の匂いだ。
「おはよう母さん」
「あら、おはよう。朝ご飯、出来てるわよ」
キッチンには母の姿があり父の姿はない。おそらくまだ寝ているのだろう。ダイニングに並べられていたのは炊き立てのご飯とお味噌汁が三人分。学校までの通学路が長いから早く食べないと……そう思って僕はご飯と味噌汁を無理やり口の中へ押し込む。
制服に着替えたら、
「行ってきまーす」
ランドセルを背負い母さんに向けて手を振る。最近は仕事が忙しくて眠れていないらしく母さんの目元には大きな隈が出来ていた。それでも母は無理やり笑顔を作り
「いってらっしゃい」
弱弱しく言った。そんな母さんを見ていると美紀ちゃんのことが一層不安になった。
学校について、教室の扉を開ける。そしてそこには久しぶりに見る美紀ちゃんの姿があった。
「美紀ちゃんおはよう、インフル大丈夫?」
「……木村君、おはよう。うん、大丈夫」
……?
いつもと変わらない、普通のあいさつ。それなのに、どこか違和感を感じる。今日は美紀ちゃん、僕と目を合わせてくれない。
「あ、そうだ今日の放課後の遊びの話だけどさ……」
いつも通り放課後の話をしようとする。
「待って木村君、今日……一人で学校の裏山に来てくれない?」
学校の裏山、それは学校の裏にある大きな山のことで、樹が密集して生えていて危険なことから先生には近づかないように言われていた。
「どうして? あそこは危険って先生が……」
「いいからっ、大事な、話があるの」
今日美紀ちゃんが初めて見せた眼差しは真剣で、僕はYESと答える以外選択肢がなかった。
草木が生い茂り、まるでここは別世界。周囲からはこちらの様子は全く見えないだろう。
「それで、話ってなんだい?」
内心、早く話してもらってサッカーの続きがしたかった。今日はもっとかっこいいシュート決めたいな、なんて考えながら。
「木村君、少し後ろ向いて目をつむってて」
「……へ?」
意味が分からなかった。かくれんぼをするわけでもないのにどうしてそんなことしなきゃいけないんだ。
「……もしかしてかくれんぼ?」
「違う!いいから早く!」
「は、はい!」
きょうの美紀ちゃんはやっぱり少しおかしい。いつもは急に大声出したりしないのに……
ガサガサと後ろの方で音がしてから少したって、
「いいよ、こっち向いて……目はつむったままで」
いつも聴いている声がする方へ振り向くと……
『ギュッ』
軽い衝撃と共に正面から何かが僕を締め付けてくる。ゆっくり目を開けて広がる光景に僕は目を疑った。美紀ちゃんが、僕に抱き着いてる。
「っちょっと、美紀ちゃん!?」
恥ずかしくなった僕は美紀ちゃんを目をつむって力強く、無理やり引きはがした。
「も、もう! なにするんだよ!」
よろけながらもゆっくり目を開けて美紀ちゃんの方を見る。
「ヒッ!!」
そこには上半身裸の美紀ちゃんがいた。
「木村君、お願いがあるの」
女子の裸を見た、そんなことで驚いたわけではない
「木村君にしか頼めないこと……」
少女の色白い肌を染めるのは
「お願い、私を……助けて」
数えきれないほどの痛々しい、噛み傷だった。
「うわぁぁぁぁああああ!!」
「待って木村君!」
恐怖が全身を支配し気付けば僕は走っていた。涙を流し、鼻水をたらし周囲の目なんて気にせず全力で走った。
「……待って、お願い。私を、助けてよぉ……」
次の日、
「出席とるぞ、安部 一郎」
「はい!」
「石川 しおり」
「は~い」
「山本 美紀」
『……』
「なんだ、また山本は休みか」
あれから僕は美紀ちゃんと会っていない。会う、勇気がない。彼女の体にあった一面の噛み傷が一体何によるものなのか想像したくもなかった。
一週間後、
「……山本のことか。親にも連絡取ったんだが何も答えてくれなかったよ」
心配になって先生に訊いてみたがいい返答は得られなかった。教室の美紀ちゃんの机の中に貯まっていく大量のプリントを眺めていると急に会いたくなった。
なにが、親友。こんなときに駆けつけなくてどうする? 勇気を出せ、美紀ちゃんと、ちゃんと話をするんだ。
次の日の放課後、僕は美紀ちゃんの家を訪ねた。外に置かれた美紀ちゃんの自転車には蜘蛛が巣をつくりポストには大量の新聞と手紙。とても人が住んでいるとは思えない状況だった。
『ピンポーン』
インターホンを鳴らすと出てきたのは美紀ちゃんの母親だった。顔はやつれ目は焦点が合っていなかった。
「あのっ、美紀ちゃんは……」
「もしかして、木村君!?」
その母親らしき人物は驚いたように僕に尋ねた。
「はい、僕は木村と言います……美紀ちゃんが最近学校に来ないから心配になって……」
すると女性は膝から崩れ落ち泣きはじめた。
「ああ、あなたが木村君なのね……娘が会いたがってたわ」
そういうと女性は立ち上がり覚束ない足取りで美紀ちゃんの部屋に案内してくれた。
「飲み物、持ってくるわ。美紀ならこの部屋にいるから入っててちょうだい。」
この先に美紀ちゃんがいる。僕はどんな顔をして美紀ちゃんを見ればいいんだ。いつもならこんなことを悩むことなんてないのに……
『コンコンッ』
(……)
部屋の中からは何の反応もない。
「美紀ちゃん、僕だよ。木村だよ」
(……)
「部屋、入るよ」
『ギィ……』
そこにいたのはベッドで寝ている痩せた美紀ちゃんの姿だった。
「……木村君?」
僕に気付いた美紀ちゃんはゆっくりと起き上がるような動作をしたが起き上がれていない。「ごめん、もう体動かないんだ」
来ていたパジャマの下からのぞく白い肌にはやはりあの時見た噛み跡、
「……あの時は、急にごめんね。びっくりしたでしょ」
「……」
ああ、どうして。なんで喋らない僕! 声が、出ない。怖い。
「私ね、病気にかかっちゃって。お医者さんのお話だともう治らないみたい。だから……」
僕に向けていた視線を机の上にある手紙に替える。
「私が、いなくなったらこの手紙を読んで欲しいんだ……」
「……」
言葉が出てこない、治らないとはどういうことだ? 後遺症が残るということだろうか。だとしたら美紀ちゃんは一生動けない……もう、一緒にサッカーはできない。
「木村君、今日はもう帰って。病気移しちゃうかもしれないから……」
……勇気を出せ、
「美紀ちゃん、あの時は逃げてごめん……」
すると美紀ちゃんは優しく穏やかに笑った。
ドアノブに手をかけ部屋から出る直前美紀ちゃんは僕にこう言った。
「大好き」
「突然だが美紀が病気で亡くなった、狂犬病という病気だ」
(……)
クラス全体が静まり返り教卓に立っていた先生がこちらを心配そうな顔でみている。僕は今どんな顔をしているんだろう。分かることがあるとするなら『美紀ちゃんが死んだ』なのに僕の目からは涙一つ出ないことだ。
学校が終わって、僕は美紀ちゃんの家に寄った。自転車は錆びつきポストの新聞はカビていた。
「おじゃまします」
インターホンも鳴らさず、まるで自分の家のようにドアをあけ、家の中に上がる。両親はいないのに家には鍵がかかっていなかった。埃を被った階段をゆっくりと登り美紀ゃんの部屋にはいるとそこには前行った時と変わらぬ風景があった。
机の上の封筒をとる。
「……」
中に入っていたのは手紙、日記の一ページ、僕と美紀ちゃんが一緒に遊んでいる写真。
写真を見つめると久しく出ていなかった涙が出てくる。もう美紀ちゃんと遊べないな、なんて呟きながら。
次に手紙を見る。
木村君へ
この手紙を君が見る頃には私はこの世にはいないと思います。だから手紙で伝えたいことを書きました。この際だから言っちゃうけど、私は木村君のことが好き。木村君と遊ぶ時が人生で一番楽しかったかも……
だから私は君に親友と言われた時は嬉しかった。これからゆっくり、私が君のことが好きだってことを気付いてもらいたかった。でももう遅いみたい。お医者さんの話だと私はもう三日しか体を動かせないみたい。だから森に呼んであんなことをしてしまった。驚いたでしょ? こわかったでしょ? ごめんね、でも私には時間がなかったの。
最後にもう一度だけ、
「大好き」
木村君が大好きな美紀より
追伸 日記は木村君だけで見て、誰にも見せないで
読んでいる途中、何度も視界が曇り美紀ちゃんからの大切な手紙の文字がにじんでしまう。日記、あれには何が書いてあるんだろうか……
恐る恐る不細工に切り取られた日記の一ページを見た
十二月二日
今日は雪が降ったから木村君と雪合戦をした。木村君力強いから雪玉が硬くてちょっと痛かった。
十二月三日
最近筆箱の鉛筆がよく無くなる。お気に入りの鉛筆が無くなってちょっと残念……今日の放課後は木村君とお絵かきをした。外が雨だとつまらないなぁ……
十二月四日
隣のクラスの知らない女子に話しかけられて明日土曜日だし一緒に遊ばないかと言われた。ちょっと迷ったけどまあいいやって思ったから明日は遊ぶぞ~
十二月五日
十二月六日
十二月七日……
十二月十日
今日は久しぶりに日記を書く、実は少し前隣のクラスの女子に誘われて山で遊んだ時、五匹くらいの犬が山小屋の柵の中に放し飼いされているのを見つけた。怖いねってその子と話してたら急にその子がすごい力で私を地面に押し倒し目隠しをして、手足を縛った。何が起きたのか、最初は全く分からなくて声が出なかった。そしてその子は私をひこずって犬がいる柵の中へ入った。それからしばらくして足音が遠ざかる音がして……その女子は逃げてしまった。
犬たちの足音が不気味な鳴き声と一緒に近づいてきて、私は噛まれた。
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い……
そんなことを思いながら叫ぶ暇もなく私の意識は無くなったの。目が覚めれば病院で、体にはいっぱい噛まれた跡があった。お医者さんの話によると狂犬病っていう病気にかかったらしい。もう、助からないんだって、徐々に体も動かなくなるんだって……もう、木村君と遊べない……
十二月十一日
十二月十二日
今日は久しぶりに学校に行く。もしかしたら明日が木村君に会う最後かもしれない。だから今日は思い切って告白する、自分の気持ちを伝えるんだ……
一二月一三日
私のバカ。なんで、普通に告白するつもりだったのに、どうして助けを求めたの? どうして、どうして……助からないって、分かっているのに。
一二月一四日
もう、鉛筆を持つのもしんどくなってきた。二年間続けた日記も今日が最後だね……最後にま 木村君に会 たい、でも病気移し ゃう も……そ は嫌だ。
日記はこれで最後だった。涙が滲む日記を見て僕は泣いた。声を上げて、顔面をぐちゃぐちゃにしながら。
……あの女は誰だ。
美紀ちゃんが死んだのもアイツのせいだ、美紀ちゃんを放課後迎えに来た……
気付けば僕は血が出るほど唇を噛んでいた。それほどまでの悔しさと怒りを感じていた。拳を爪がめり込むほど強く握って自然と口から言葉が出た。
「次は、お前の番だ」
次の日、いつも通りの朝を過ごし、いつも通りの昼を過ごし放課後……僕は隣のクラスの女子の元を訪ねた。勿論美紀ちゃんを殺した女を。
「やぁ、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
その女は僕が話しかけると顔を赤らめて付いてきた。
誰もいない裏山で彼女に率直に問う。
「どうして、美紀ちゃんにあんなことをした」
悔しくて、悲しくて涙が出そうなのを必死にこらえる。目の前の女は少し考え口を開いた。
「私ね、木村君のことが好きなの。そんな時美紀ゃんが木村君のことが好きっていう情報が入ってきて……だから消したの。お父様に頼めば凶暴な野犬なんて簡単に揃えられたわ~」
ブチッ
僕の中で何かが切れる音がした。もしかしたら、女は泣いて謝って許しを請うのかもしれない。そうなったら僕はどうするのが正解なのだろうか、なんて考えていた僕がばからしい。
「悪魔め、あの世で美紀ちゃんに謝ってこい」
「!?」
逃げようとする女、だが遅い。
「許さない! お前だけは!!」
女を押し倒し馬乗りになる。そして拳に力を込めて、
殴った。殴って、殴って、殴って殴って殴って……次第に女は泣きはじめる、が手を止めるはずがない。
「あはははは!」
笑い声がする。僕だ、僕が笑っている。ああ、なんて愉快なんだ。
「う、うぅ……お父様が黙ってないんだから」
「おっとそれは無理だな、なにせこれからお前は死ぬんだから」
「ひぃ!」
ああ、この女はなんいていい顔をするんだ。なんて思いながら手足を縛り、目隠しをさせてあの場所へいく。
「よし、目隠しを取ってやろう……覚えているか?この場所を」
「!」
目の前に広がるのは無人の古びた山小屋と柵の中にいる複数の野良犬。女も何かを察したのだろう。お願い、助けて。などと許しを求めてくる。とはいえ僕が考えを曲げることはない。
「じゃあね、名前も知らない誰かさん。あの世で美紀ちゃんに謝っておいで」
「いやぁぁぁぁあ!」
柵の中に放り込むとすぐさま犬どもはそれに反応しゆっくりと女の方へ歩いて行った。徐々に死神が女に近づいていく。
「あ、そうだ」
ここで僕はあることを思い出した。
「今日はねぇ、大きなわんちゃんも遊びに来てるよ」
『グルルル……』
この犬は周りの犬の母親で美紀ちゃんがいた時には柵を飛び越え脱走していたらしい。
「お願い助けて!これじゃ死んじゃう!」
女は泣きながら犬たちにどんどん距離を詰められていく。
「確かに……このままじゃだめだね……」
「分かったら早く! ここから出して!」
「……何を勘違いしているの?いや、このままじゃ美紀ちゃんみたいに苦しんで死ねないなぁって」
「!」
青ざめる女、だが詰め寄った死神に慈悲はない。
『ギギギギ……ベキッ』
母犬はまず女の首を噛み折り息の根を止めた。そのあとは柔らかい部分からまるで貴族が食事をするように丁寧に食べた。
「美紀ちゃん、終わったよ」
雪が降り始め、辺り一面真っ白な世界で僕はポケットから涙で濡れしわくちゃになった美紀ちゃんと一緒に取った写真を眺めながら大粒の涙を流した。
あれから少しして警察の調べで女を殺したのは僕だということがすぐに特定された。僕の両親はそれを知ると僕を恐れ部屋から一歩も出られないよう、ドアに鍵をかけた。でも時々僕は外のことが気になって両親のいないうちに窓から脱走して遊びに行く。
そんなある日、今日もまた家を脱走し遊びに行こうとして外に出た時だった。
「君が木村君かい?」
ふと、後ろから何者かに声をかけられた。その声の主は同い年ぐらいの男の子だった。
「一緒に遊ばない? 俺授業サボってふらついてたら木村君を見つけてさ。分かんないと思うけど俺は隣のクラスの上田、よろしくな」
そういって上田君は無邪気に笑い握手をしようとしてくる。でもどうしてこの子は僕が人を殺した木村君だと分かってて近づいたんだろう……
そんなことを思いながら、でもここ数か月友達と全く遊んでいなかったので正直嬉しかった。
「上田君……よろしく! で、どこで遊ぶ?」
「裏山にいってみたい! 学校の!あそこ俺いったことなくてさぁ~」
……上田君は本当に何がしたいんだ、裏山で人を殺したのは僕、それを知ってて僕を裏山にさそっているのか……益々訳が分からない。でも、まあいいや。
「じゃあ裏山までどっちが速く着くか勝負だ!」
「負けないぜ!」
「はぁ、はぁ、中々、上田君走るの速いね……」
「ぜぇ、ぜぇ、ゲホッ、木村君だって、結局負けちまった……」
二人とも息を切らせほぼ同着で裏山へとたどり着いた。
そういえば裏山で遊ぶとは聞いたが何をして遊ぶのかは聞いていない。
「で、なにして遊ぶの?」
すると上田君は一呼吸おいて僕に付いてくるよう指示した。それからしばらく歩いて見えてきたのは……
「!」
あの時の、山小屋だった。美紀ちゃんが死に、あの女を殺した場所……
「……上田君、これは……どういうこと?」
「分かんないの? じゃあ教えてあげる……
次は、お前の番だ」
(柚木さんかわいそう……木村君のことが好きだったらしいよ)
教室に入るとみんなは昨日の事件について話をしていた。
私は木村君のことが好きだった。人見知りで友達を私と作れなかった私と唯一友達になってくれたのが木村君だ。
そんな木村君が、昨日突然死んだ。上田という隣のクラスの子が木村君を殺したことが警察の調べで分かっている。
「……」
それから、私の記憶は少し飛んでいる。
気が付いた時には血で濡れたナイフを片手に持っていた。
目の前には血だらけで倒れている男の子の姿があった。
「ふふ、あはは……」
人を殺したというのに口からは笑みがこぼれる。
「木村君、今上田君が君に会いに行ったよ」
数年後
いつも通りの朝、いつも通りの学校、ガラガラと音を立て担任の教師が教室へ入ってくる。
教室に飾られた枯れた花が目に入って
「こら水やりの係、毎日欠かさず水をやってくれって先生前、みんなと約束したよな?」
「……」
「次から枯らさないようにちゃんと世話しろよ、じゃぁ、出席を取るぞ。安部 一郎」
「……」
「石川 しおり」
「……」
……
そして担任はゆっくりと日誌を閉じ、笑顔でこう言った。
「今日も、全員出席。えらいぞ~」
誰もいない教室で、いないはずの生徒にその教師は語りかける。
「さて、1時間目はじめるぞ」
……どうでしたでしょうか?僕はリアルではハッピーエンド、ハッピーが大好きですが小説の中だとどうしてもバットエンドを求めてしまいます。まあハッピーエンドの作品はほかの方が出していると思いますので僕が出す必要はないですね。