「本当の手助け」
キョロキョロと辺りを見回す男は道に迷っていた。
初めて来た町で、宿屋までの行き方すら分からないようだ。
傍からみても迷っているのが明らかなその男に、たまたま通りががった女性が声をかけた。
「何かをお探しでしょうか?」
すると男はカッと目を見開き、
「うるさいっ!余計なお世話だ!」
と女性に激しくあたりました。
女性は一瞬驚きつつも、
「あっ、ついついお節介をやいてしまい申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げました。
「いいからどっかへ消えてくれ!」
さらに男は激しく吠えます。
察した女性が立ち去ろうとすると、男は我に返ったように女性を呼び止めました。
「いや、待ってくれ、今のはさすがに僕が悪かった。虫の居所が悪かっただけなんだ、どうか許して欲しい」
「そうですか」と立ち去ろうとした女性を男が呼び止める。
「このままでは僕の気が済まない、どうか僕の頬をはたいてくれ!」
男がそう言った途端、なんの躊躇もなく女性は男の頬を思い切りはたきました。
激しい痛みと共に男の心は感謝の気持ちで一杯になった。
「見ず知らずの人間にここまで親切にしてくれるなんて、あなたは素晴らしい女性だ」
不思議顔の女性は「別に普通の事じゃないですか」と立ち去ろうとするが、男はまだ続ける。
「僕をはたいた手が痛かったでしょう。そんなにまで僕の為にしてくれるなんて・・・どうかお礼をさせて下さい」
そう言って手を握る男の手を女性は振り払った。
「私はあなたを手助けしたかっただけです、目的はそれだけで、あなたに礼を言われる覚えはありません!」
そう言って女性はその場を去った。
一瞬、呆気に取られた男だったが、女性の後ろ姿に深々と頭を下げた。
おしまい。




