始まり(6)
まだ前置きなんです:;ヾ(:3ノ" ヾ)ノ”;:
筋肉質の人を運んだ先は生徒会室だった。
「清夜、回収してきたぞ」
「すまないな」
ドアを開けた先にいたのは、あの生徒会長の名月先輩だった。
「これどうする?」
尋ねられた名月先輩はまだ伸びてる人を一瞥し、軽く溜め息をついて「そこのソファに寝かせておけ」と手を貸しに行く。
「崇夜はもう少し考えてから行動しろと何度言えば……」
「新入生をビックリさせてやるんだーって飛び出して行ったけど……うーん……木の上からとは……」
「確かに怯えてたな。大成功だ」
「あれだけ清夜が注意しても無駄ならもう直らないのかね……」
やや疲れた顔で話し込んでる2人を眺めていると、朔夜が「名月先輩も伊泉先輩もカッコいいと思わない?」とこっそり話し掛けてきた。
「伊泉先輩?」
「今、名月先輩と話している眼鏡の先輩だよ。生徒会副会長、伊泉怜夜先輩。名月先輩に負けず劣らず人気なんだよ」
「そうです。初めまして、伊泉といいます」
「!?」
いつの間にか伊泉先輩が背後に立ってニコニコしている。
「あ、えっと」
「宝立朔夜くん、清水月夜くん。さっきはありがとう。助かったよ。そこの伸びてるのは矢木崇夜。崇夜は生徒会とは無関係だけど、俺たちがいるから時々入り浸っているんだ」
他にも紹介したい人がいるけど今は不在だからそのうちね、と伊泉先輩が言う。
「前置きはここまでにして。君たちに来てもらったのには理由があってね」
お茶を入れるから座ってよ、とテーブル席を勧められる。た、高そうなテーブルと椅子……。
「紅茶でいいかな? この間行きつけの紅茶専門店でいい茶葉を手に入れたんだよ。清夜もこっち来いって」
「ん」
向かいに書類の束を持った名月先輩が席に着く。緊張のあまり、隣の朔夜と目を合わせる。なんでこんなことに……。
「おまたせ。冷めないうちにどうぞ」
伊泉先輩が紅茶を淹れて戻ってきた。あたりにふわりと花のようないい香りが漂う。
「い、いただきます」
息を吹き掛け、少し冷ましてから口に含む。……美味しい。
「美味しいです」
「そうか、よかった」
朔夜も目を輝かせている。
「清夜も一旦書類置いて、休憩休憩」
伊泉先輩が名月先輩の手元から書類を取り上げると、名月先輩の目つきが険しくなる。
「こんなに書類を溜め込んで置いた怜夜が言うか?」
睨まれた伊泉先輩がスっと目を逸らす。
「え、なんのこと? 濡れ衣は止めてくださいよ先輩」
「……」
「君たち、こんな眉間にシワ寄せてる大人になっちゃダメだよ」
「……誰のせいだ」
「……ふふっ」
先輩2人の掛け合いを見ていて、自然に笑みがこぼれる。
温かい紅茶の効用なのか、少しずつ緊張が解けていく。
「さて、本題に入ろうか」
伊泉先輩が真剣な面持ちでこちらに向き合う。僕たちも自然と背筋が伸びる。
「君たちに力を貸してほしいんだ」
前置き終わらない:;ヾ(:3ノ" ヾ)ノ”;:続きます