始まり(4)
拙い文章ですが読んでくださってる方がいて嬉しいです(*´-`*)ありがとうございます
名前の読み仮名の付け方がいまいち分からないので一旦かっこで。
あの人、生徒会長だったんだ。
祝辞が始まると「清夜先輩だ」とあちらこちらからひそひそ声が聞こえてきた。その全てが好意的な内容だった。
名月清夜。男女問わず大人気で、ファンクラブなんてものがあるらしい。成績優秀、スポーツ万能、クールで近寄り難い、だけど困っている人がいたらさり気なく手を差し伸べてくれる紳士、最高。
周囲の、特に女の子たちの話をまとめるとそんな人物像らしい。
挨拶が終わると拍手が起こる。
拍手をしながらぼんやり眺めていると、祝辞用紙を折りたたみ終え顔を上げた彼と視線が合った。
彼はすぐに視線を逸らすと、未だ鳴り止まぬ拍手に送られ降壇し、その先にいた眼鏡をかけた男子学生に何か耳打ちしている。
「何をしても様になるね、清夜先輩」
僕が追視していることに気づいた朔夜と呼ばれた男子がコソッと話し掛けてきた。
「そうだね」
ファンクラブかぁ……。
「てなわけで!!」
入学式後のホームルームも終わり、今から寮の建物を探さないと……とぼんやり考えていると、勢いよく机に手をつかれる。突然バンッって大きい音がして思わず飛び上がってしまった。
「あ、ごめんごめん。驚かすつもりはなくて」
大きい音の主、宝立朔夜くんが苦笑いしている。
「清水くんって月夜って名前なんだね。月夜って呼んでいい?」
清水月夜。それが僕の名前。
「う、うん、いいよ宝立くん」
宝立くん、と呼ぶと「えー」と露骨に不貞腐れてしまった。
「あ、ごめんなさい、馴れ馴れしかったよね」
「そうじゃなくて。俺の事は朔夜って呼んでよ」
ニコニコして「これで友達ね、俺たち」と手を差し出してくる。
「えっと……」
「握手しよ?」
対応に戸惑っていると、若干強引に手を掴まれ、握手を交わした。
「月夜って寮生だよね。俺もなんだ。学校の中案内してあげるから一緒に行かない?」
って言っても高等部は俺も今日初めてなんだけど、と悪戯めいた表情で朔夜が笑う。
学園の敷地内が未知の空間だった僕にとって、ありがたい申し出。即、快諾した。
続きます