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夜咄(仮)  作者: もそ7
2/6

始まり(2)

続き

……ここはどこだろう。


門をくぐってからかなりの時間が経っている気がする。まさか迷った?

入学式までに一度寮の場所を確認しておきたかったのに。書類を見返すけれど、ここがどこなのか皆目つかない。そもそも学園の敷地が広すぎる。初等部、中等部、高等部、大学でキャンパスが分かれているけれど、ひとつひとつが広すぎる。高等部の建物と寮は近くにあるらしいけど、ここから見えるのは見通しの良い桜並木と樹木だけ。建物なんて全く見当たらない。誰かに道を尋ねたくても人の気配もない。

「うーん……」

どうしよう……。とりあえず桜並木沿いに歩けばなんとかなるかな……。


「ん、どうした?」

「!?」

突然背後から声がして思わず飛び上がってしまった。

「迷子?」

桜の木の陰から姿を表したのは、僕と同じ制服を着た男子学生だった。

「迷った?」

「は、はい」

太陽光を反射して少しだけキラキラ光る黒髪。微かに入った光が煌めく黒い瞳はまるで星空のようだと思った。僕を見ても表情ひとつ変えない、冷静で物静かな雰囲気。背も高くすらりとした佇まい。

「こっち」

ぼんやり眺めている僕に男子学生は背を向けて、着いてくるよう声を掛けた。

少しして男子学生が振り返り、必死に着いていくが遅れ気味になっていた僕に気づくと歩みを揃えてくれた。

「ありがとうございます」

「いや」

並んで歩いてると「新入生?」と声を掛けられる。

「はい。……えっと」

「俺は2年生」

なんとなく会話が続かない。どうしよう……と悩んでいると、パンフレットに載っていた赤レンガ造りの建物が見えてきた。

「入学式の会場はそこの建物。廊下を右に曲がったら先生がいるから」

「あ、ありがとうございました」

慌てて頭を下げてお礼を言う。顔を上げると男子学生の目元が微かに優しい眼差しをしていた。

「それじゃ」

別れを告げ、背を向けて去っていった。

続きます

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