新たな命
どれほどの時間、魔法を撃ち上げ続けていただろうか……腕が少し痺れてきた。
すると玄関の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ユウ!」
玄関に向かうとそこには、アインが立っていた。
俺はその姿を見て駆け出して抱きついた。
「パパ!……ママが!」と言うと、優しく頭を撫でてくれた。
少し遅れてから、雨に濡れたびしょびしょなローザが入ってきた。
「大丈夫なの?」
「ママ!」と言いながら俺は駆け寄った。
「大丈夫よ、ユウがちょっと心配しすぎただけだから」と言いながらアリアが近寄ってきた。
「でも、ママとても苦しそうだったから……」と言うと三人は俺を優しく包んでくれた。
ローザは、冷えた体を温める為お風呂に、アインは念の為アリアをベッドに寝かした後、産婆のアン小母さんを呼びに行った。
アン小母さんが家についてからしばらくしたらアリアの陣痛が始まった、まだ間隔が長い為大丈夫だろうとの事だが、アン小母さんも念の為に家に泊まる事となった。
その念が功を奏した。
事態が動いたのは夜明け前の事だ、アリアが破水したのだ。
ローザとアン小母さんはすぐに出産の準備に取り掛かった、アインはアリアの手を握って励ましている。
俺は邪魔にならないようにじっとして部屋の隅に立っていた。
前世での“テレビでの知識”はあっても経験をしていないのだから、これといって役にたてる事がないのである。
すると、アリアが手を招いて呼んだ。
「こっちの手を握ってくれる?」と言ってアインが握っている逆の手を差し出したので、俺は、両手で力強く握った。
何時間たったのだろうか……アリアが痛みでうめき声を何回もあげ、そのつど皆ではげましていた。
そして、昨日から続いていた雨もあがって外が明るくなったときに大きな産声があがった。
アン小母さんは手馴れた手付きで赤ちゃんを取り上げ。
ぼーっとしていたアインに
「はい!旦那さん奥さんにヒールを掛けて」と言われたアインがヒールをアリアに掛け、俺も無意識に掛けていた。
「可愛らしい、女の子ですよ」と言いながら布に包まれた赤子をアン小母さんはアリアの胸元に渡した。
それを見た俺は、緊張の糸が切れたのか意識を失い倒れたと同時に、ローザの悲鳴が響いたのだ。
窓の向こうには、雲の合間から虹がかかっているのが見えた。