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影3
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同じ道を、何度もぐるぐる回った。
カーブミラーやガードレール、犬の鳴き声や標語の書かれた看板、林檎畑のある急勾配の坂や、同じ形をした屋根。やっとその家を見つけた時には、もうすでに日は沈みかけていた。
「間違いない」
蜘蛛の網がかかった門灯。崩れかけたその網にかかる、ヤニで汚れた茶色の綿ぼこり。千切れた段ボール。壊れた家電製品や、割れたステンドグラス。腐ったみかん箱や、錆びれた消火器。玄関入り口に重なる、ガラクタの品々。いたる箇所にガムテープの貼られたスライド式のドアには鍵がかかっていなく、ほとんど力を入れずに横に押すと、カラカラと音をたてて開いた。
そっと顔を覗かせると、真夏であるのにもかかわらず、玄関の入り口に置かれた灯油が入ったままの赤いポリタンクと、苔が張り付いた、濃い緑色の水槽が見て取れる。すぐ横の階段には、長い年月を感じさせられる程の、おびただしい数のチラシの山々が、所狭しと重ねられていた。
「ごめんください」