影18
幻一郎の祖父虎吉は、博徒と山師で、財を成した豪族であったという。
虎吉は、その才覚で下級武士に成り上がった。ところが、屋敷の蔵に蓄財していたお宝や金銀財宝が、火事に遭うという災難に見舞われる。
火の粉から難を逃れるため、虎吉は急いで使用人たちに、財宝のすべてを川に投げ入れるよう指示した。財宝は、水に濡れてしまったが、火事からは難を逃れた。
翌朝、その財宝を見に行った虎吉は、腰を抜かした。川の底をどんなに隈なく探しても、財宝が見当たらない。この時、虎吉は気が付いた。
『火事場泥棒に遭ったのだ』
と。
その財宝は、すでに誰かによって、朝までの内に持ち出されていた後だったのである。
「博徒って?」
「当時のばくち打ちは、半丁や花札のことだよ。だって、見えてるんだから、相当強いよね。本当はね、こういう霊感を、賭け事みたいなのに使っちゃいけないんだよ」
「だから、きっと罰が当たったんだよ」
「だろうね」
虎吉が手にした山は、労働と富が集中し、平泉文化を支えた金山であった。
「今で言うサギ師だよ。頭を使って人を騙すんだ」
律子の曾祖父の竜太は、逆に騙された側であった。竜太が買った山は、金山ではなく、二束三文の他人の山であったのだ。
「…せっかく苦労して貯めたお金で買った山だったのに、曾じいちゃんは逆に、騙されたんだよ…。」