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影12
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「あの部屋には、何があるの?」
「開けたら絶交だよ」
「鍵はかかってないの?」
「かけなくてもいいんだよ。どんなに力を入れても開かないんだ」
幻一郎は、玄関にすら鍵をかけない。スライド式の玄関が、いつも10センチほど開いていて、野良猫がしょっちゅう出入りする位だ。だが、言葉には威力があった。律子はその部屋を、結局見ることができなかった。
「じっちゃん。トランプで遊ぼうよ」
片付けが一段落した頃、律子が自宅から色々なものを持って来るようになった。
「いいよ」
「なにして遊ぶ?」
「なんでもいいよ」
「それじゃあ、ババ抜きでどう?」
律子が、懸命にカードを切った。
「ババ抜きは得意なんだよね」
幻一郎が、そう言って小鼻を膨らませた。
「負けないよ」
律子が、伏せたカードを均等に配った。
すべて配り終わった後、各自同位の札を2枚ずつペアにして捨てた。早く手持ちの札が無くなった方が勝ちである。
律子の手にも、幻一郎の手にも、数枚のカードだけが残った。どちらかの手に、ジョーカーがある。