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影11
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次の日、襖一枚隔てた幻一郎の隣の部屋のドアの取っ手には、『りっちゃんの休憩部屋』と、油性ペンで書かれた札がぶら下げてあった。
幻一郎が、「片付けてくれたお礼に、自由に使っていいよ」と言って、O・ヘンリーの短編集を律子に手渡した。
「良かったら、読んでみて。」
部屋の中には、座卓とラジカセとノートパソコンが用意されてあった。
襖一枚隔てた隣に、あの『あかずの間』がある。渡された本はそのままに、律子はそっと、片目で襖の隙間を覗いて見た。
「ひょっとしたら死体が…」、「もしかしたら財宝が…」、「あるいは、座敷わらしでも隠れているんじゃないか」と思ったからだ。しかし、この範囲では、畳以外は何も見えない。耳を当ててみたが、何の音もしない。鼻を近づけてみたが、少しカビ臭い他は、特に匂いはしなかった。




